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空色の瞳にキスを。  作者: 酒井架奈
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13.風車の花束

 朝の眩しさに眠気がすっと消えていく。ナナセは大きな伸びをしてベッドから這い出した。

 スズランが選んだ白地に紺色の水兵服に腕を通した。彼女曰く、街ではそれなりに流行っているらしい。どこでそんなに集めてくるのか、そういうお洒落の類いにスズランはうるさかった。

 ナナセ自身はブラウスとスカートで過ごしても構わないのだが、スズランが許してくれない。とはいえ、確かに白銀に紺はよく映えるのが分かる。

 鏡に向かって少しだけ笑う。よし、と朝の気合いをいれるのが、彼女の日課になりつつある。待ちわびた扉のノック音がした。

 振り返り返事をすると、扉の向こうから声がした。

「私とルグィンよ。」

 裸足のまま扉へ向かう。見えた二人の姿に、ナナセは我知らず笑った。

「おはよう。待ってたよ。」

「おは……、」

 ルグィンがそれきり言葉を止めた。不思議に思って見上げると、いつもより丸く見開かれた目があった。

「あら!可愛いじゃない。選んで正解だったわね。」

 優しく髪を撫でて、スズランが喜んでくれる。なんだかそれが照れくさくて、ナナセは知らずに笑っていた。

「そうかなあ?」

「ほんとよ?ね、ルグィン?」

「え、いや……、ああ、そうだな。」

 隣でくすくす笑っているスズランを一睨みしたルグィンは、部屋へと入っていく。スズランがそれを追いかける。そんなふたりの背中を眺めつつ、ナナセは静かに扉を閉めた。

 ──いいな。

 旧知の二人の間に突然に飛び込んできた自分は、付き合いの深さが違う。心は持ちたくないとずっと願ってきたのに、彼らと触れあえる心が欲しいと思ってしまう。

 『その時』辛いのは全部あたしだと、経験が警鐘を鳴らそうとも、孤独な心は嘘をつかない。経験が押しとどめてきた本心は、アズキと出会い顔を出し始めていた。友達と言われることの嬉しさが、裏切られる傷を隠そうとしていた。

 扉のそばで立ち竦むナナセの揺れる瞳に、スズランは気付いたようだ。閉めた扉のドアノブに片手を添えたまま、歩み寄った獅子を銀の少女は見上げる。その瞳の前に、スズランが手のひらを差し出す。

「ナナセ?おいで。」

 その声と左手に、ナナセは息を止めた。見上げたスズランは優しく微笑んでいる。こちらにおいでと誘われるそれだけが、彼女にとって限りなく嬉しくて。喉から声が、出なかった。

「……うん。」

 掠れた声しか絞り出せないまま、ドアノブにかけたままだった右手を伸ばした。一歩、スズランへと近付く。怖々とした遅いナナセの歩みに、待ってくれているようだった。ルグィンと恐る恐る目を合わせれば、無愛想なその顔はいつもと変わらないけれど、どこか瞳が優しい。ふたりの優しさが、ふたりがいること自体が嬉しくて、たまらなくて、ナナセは笑った。


   ***



 ルグィンは水兵服の背中をぼんやりと眺めながら、廊下を歩くふたりの後を追う。

 前を歩く女子はふたりで楽しそうだ。スズランが姉のようにナナセを可愛がる。肩を揺らして笑うナナセの背中が、ルグィンから見えた。

 角を曲がった辺りで、人のいなかった廊下に人影が見えた。

「あ、姐さん!ユリナちゃん!」

 顔を上げて見えたのは、サシガネとトキワだ。廊下の先で手を振ったサシガネは、足音静かに駆け寄って来る。その後ろをトキワがのんびりと歩いてくる。

「サシガネさん、トキワさん!おはようございます。」

「おはよう。朝早いねー。三人揃ってどこかへ行くの?」

 サシガネが尋ねれば、彼女は嬉しげに笑う。

「はいっ。外へ出られるんです。」

「へぇ。良かったじゃないか。」

 サシガネがユリナの頭をくるくると撫でると、ユリナははいと頷いて笑みを見せる。

「ユリナ、もう行くわよ。」

「あ、うん。」

 スズランが歩き出すと、置いていかれまいとユリナがふたりの後を追う。

「気を付けて行ってこいよー。狙われないようにな!」

「はい、行ってきます。」

 にこにこと手を振るサシガネに嬉しそうに手を振り返しスズランと並んで歩き出す。いつもの通りのふたりに、ルグィンは足を止めて振り返った。

 手を振る彼らの瞳は、冷ややかだった。



   ***



 冬の高く青い空は、澄んで晴れていた。人から見えないように造られたという裏庭から見る空は、静かで邪魔がなくて格別だった。スズランのことだから、ここにも魔術がかけられているのだろう。

「ねぇ、ナナセどこに行きたい?」

 決めていないの、と笑ったスズランを、ナナセは振り返る。

「どこでも……いいの?」

「いいわよ。」

「あたし、ルグィンと出会ったあの草原に行きたいな。あの場所の花がもう一度見たいな。」

 ナナセは暗がりで立ったあの世界が忘れられなかった。行きたい場所と問われ思い付いたのは、あの場所だった。記憶に新しい鮮やかな世界を思い出すナナセの瞳は、優しい空色をしていた。

「いいわよ。でもそこの花が咲いているかは、分からないわよ。」

「あそこは冬でも花は咲いてる。」

 スズランの言葉が終わるや否や、ルグィンが言葉を被せた。ルグィンがはっとして視線を落とした。

「……多分他と違うんだろ。」

「ふうん。ルグィンはいつも早朝からいないと思ったら、見に行ってたのね。私、知らなかったわ。」

 スズランが笑いをこらえている。ルグィンはじとりと睨み返したが、弟分のような彼をからかうのが好きらしいスズランはへこたれる様子がない。困ったようにルグィンはため息を吐いて、くるりと背を向ける。

「……悪いかよ。行くなら早く行こうぜ。」

 自分が化け物だと告げながら、草木を愛でるのが好きなひと。先を歩く背中に、ナナセはなんだか親しみを覚えてしまう。

「……なんだよ。」

 知らぬ間に微かに笑っていたらしい。ルグィンがナナセを振り返る。

「ううん、ルグィンは優しいな、って。」

 獅子の背丈に隠れる小さな彼女が笑って落としたその言葉に、ルグィンはなにも返さなかった。さぁ、と冬の風が吹く。足元で枯れ葉が踊る。ナナセは返答を求めてはいなくて、冬の風に笑っている。

「さぁ、行くわよ。」

 スズランが空を見上げた。

「ねぇスズラン、まさか……。」

「えぇ、空を行くわよ。」

 だってそうでしょう、とスズランは心地よいくらい笑っていた。確かに未だ姿を変えられない自分は陸路を行けない。変化の魔術は、内側を幻の膜で覆うようなもの。ナナセは包むべき身体の魔力が高すぎて破けてしまう。こんな辺鄙なところであれば、空を行く方が断然楽だ。

「そっか……。」

 スズランには分からないようにナナセは顔を伏せ、唇を小さく引き結んだ。ナナセにとってはまだ長距離を飛ぶことは苦しいものだ。

「ああ、ナナセは魔術を使わないでね。」

 どういうこと、と顔をあげたナナセにスズランはくすりと笑う。不思議に思って首をかしげるナナセの肩を持つと、ルグィンに向かわせた。

「え?スズラン?」

「ルグィンに運んで貰うから。」

「「え?」」

 ナナセもルグィンも固まった。ナナセがちらとルグィンを見ると、彼も彼で困ったように目が揺らいでいる。ナナセがスズランを振り返ると、スズランはなぜだかとても楽しげだった。

「そんな、あたし、」

「大丈夫よ、ルグィンは落としたりしないわ。」

「そうじゃなくて……!」

 なぜだかスズランはいつもよりも強引だ。とん、と背中を押されてナナセはルグィンの目の前に立たされた。

「はいルグィン、ナナセをよろしくね。」

 スズランがルグィンの肩を叩いた。スズランと睨み合っていたルグィンが結局根負けしたようで、最後にルグィンはため息をついた。

「ここから飛ぶわよ。」

「……おう。」

「うん。」

 軽く地面の煉瓦を蹴って、スズランが飛び上がる。彼女の薄桃色のワンピースが風に揺れた。空中から地上の彼らを振り返った彼女は楽しげに笑った。

「お先に。」

 前へと向き直るとスズランは木の先でとん、ともう一度跳ねるとはるか先へと飛んで行く。その動きが獣のそれによく似ていた。

 暫くふたりはスズランが消えた方角をぼんやりと眺めていた。静かになった裏庭に、ルグィンが呟いた。

「俺たちも行くか。」

「うん。ごめんなさい、よろしくね。」

 どうすれば良いか分からなくて、ナナセは緩く笑った。見上げた先のルグィンは、ナナセから逃げるように視線を逸らした。

「……悪い。」

 ルグィンの声に首をかしげる間もなく、ナナセは少し強引に抱き寄せられた。ナナセがあっと思った瞬間にはふわりと体が宙に浮いていた。目をあければ、すぐそこに金色の瞳。聞こえる息遣いに、戸惑う。ナナセの動揺をルグィンは違う風に解釈したようで、優しく抱き直された。

「大丈夫か?怖い?」

「ううん、平気だよ。」

 答えるときに目を開ければ、自然と目が合う。ナナセがなんだか心がざわついて視線を逃がした。

「……近いな。」

「うん、思ったより。」

 ルグィンが静けさを破ってくれたから、なんだか不思議な感覚はすこし紛れた。困ったように笑うと、彼もひとつ息をついた。

「行くか。」

「うん。お願いします。」

 ルグィンが地面を蹴り出した。とーん、と跳ねれば、風を切るような速さで体が浮き上がる。このまま飛べば、晴れた高く青い空に吸い込まれるようだ。

 何も出来ないナナセは遠ざかる地面を見下ろす。銀色の髪が、空中に舞う。彼女が漏らした感嘆の声は、空気においてけぼりになる。

「あいつ……。」

「……うん?」

「いやなにも。」

「そう?」

 答えてくれる気はなさそうなので、これ以上は聞かなかった。お互いが黙ると、ルグィンが膝を曲げた。

「よっ、と。」

 軽く跳ねてから、両足を揃えて屋根を大きく一蹴りした。ただそれだけで、ルグィンは遠くまで跳ねる。あっという間に遠ざかる屋敷に、彼が微かに笑った。

 移り行く景色と、吸い込まれそうな青い空。ナナセも思わず笑った。

「お前、空が好きだな。」

「うん、好き。なんだか青が好きみたい。」

 ふたりの声まで洗われたようにどこか爽やかに空気に解けた。ルグィンがナナセにつられるように空を見上げた。

「いいよな、空も、青も。」

 ふたりの瞳には、同じ空が映っている。

 ──同じものを同じように見て、同じように笑えるのなら。

 ルグィンが屋根や背の高い木を足場に、また空中へ蹴り上がる。その度、柔らかく香る空気に、胸が落ち着く。今の気持ちを逃さないようにと、ナナセはそっと息を止める。

 ──もう少しだけ、二人を頼ってみたい。

 ──ルグィンなら、頼りたい。

 ──スズランなら、頼りたい。

 ──心をもっと、信じてみよう。

「うん、そうだね。」

 ──あたしは同じ目線で、同じ空が見たい。

 綺麗だね、と笑った声は、自分が思うよりも涙を含んでいた。



   ***



 絵の具を落としたような綺麗な赤と黄色の木々のなかに、その場所はあった。その場所だけが切り取られたみたいに明るく華やかだ。山の中腹であるこの草原は、何故か花が咲いているそこだけぽっかりと穴が空いているように森がない。その草原だけが特別な場所のようだ。

 スズランが空を見上げると、ちょうど二人が下りてくるところだった。

「この間の花と違う!」

「もうちょっと待ってくれって。」

「……あ、ごめんね。」

 ナナセがいつになくはしゃいでいて、スズランは思わず笑ってしまう。抱えられていることを忘れて身を乗り出すナナセを、ルグィンが抱え直した。それでも彼女の瞳は近付く色とりどりの花を映したままで、まるで子供のようだった。

 ルグィンがスズランの隣に下ろしてやれば、礼と同時にナナセは足元の草花に興味を示す。

「うわ……。」

 手を伸ばしたその先には、青い風車に似た花が咲いていた。

「オドリグサがあるってことはここは魔力のある場所みたいね。」

「あ、それは聞いたことある。魔力を栄養にする花だったっけ。初めて見る!」

 無邪気に喜んで花を撫でるナナセの瞳は、いつになく輝いていた。ルグィンはナナセがはしゃぐ様子を見ている。その表情が優しげで、スズランは隣で声なく笑った。

 撫でた花が伸びて、ナナセが手を引っ込めた。

「その花は魔力を感じて成長するの。ナナセの魔力が花に吸われることはないけれど、貴女がいたらここの草木はどんどん伸びるわよ!」

 声が風に流されないように、ナナセへ向けて半ば叫ぶ。驚いたようなナナセが、足元を見渡す。実際、魔術師であるスズランの足元でも蕾が花を開いたところだ。その姿を見ていた金色の猫の目がスズランを見る。

「ナナセには『そっち』で接するんだな。」

「……え?」

 スズランは上がった口元にそろりと触れる。自分が思ったよりも、彼女は笑っていた。固まる彼女に、ルグィンがふうとため息をついた。

「スズランは繕うのが上手いのか下手なのか分からない。」

「……うるさい。」

 獅子の彼女は耳を曲げて、ナナセに視線を逃がした。

 銀の王女は、まだオドリグサに手を伸ばしている。一気に伸びた茎に、それを見上げたナナセが笑った。

「わぁ……!」

 ただの少女の感嘆の声。けれどあんまりにも無邪気で、十六の少女の割には幼かった。彼女の稚拙な反応は、きっと人との関わりを一度やめたからであろう。ゆるやかに感情を取り戻す彼女が持つ根の明るさにスズランは一緒になって笑った。

 足元の小さな芽を見て、ナナセが空の瞳を輝かせてスズランを見上げる。

「あたしが歩き回ればたくさん生えるかな?」

 スズランが笑って頷くと、広い草原を弾けるような笑みと共にナナセが歩みだした。彼女の足元では草木がふわふわと育つ。風とともに青と白の彼女の水平服が揺れる。無邪気な彼女の明るさに笑うスズランの隣で、ルグィンは静かに彼女を見つめていた。彼の金色に輝くその瞳が、誰を見るときよりもぐんと優しい。誰の目から見ても明らかな差に、含み笑って彼女に聞こえないようにスズランは呟いた。

「あの子、ナナセは、可愛いでしょう。」

 急に振られた話にルグィンは目を丸くしたが、すぅ、と目を細めて頷いた。

「ああ、そう、だな。」

 ルグィンが嘘はつけないと知っていて尋ねた。獅子は優しく笑みを深めた。

「あの子は、綺麗ね。」

 さっきまでの茶化すみたいな笑い声は消えて、染み渡るようなどこか寂しげな声音だった。

「私とは、逆ね。あの時、逃げなかったのね。」

「スズ……、」

「綺麗な心ね。あ、僻んでいないわよ。ただ違うな、って。」

「そうだな。あいつは、真っ直ぐだな。」

「そうね。」

 そう言ったのち、ひと呼吸。

「貴方、あの子に惹かれてるでしょ。」

 言い当てられたからか、ルグィンはくるりとスズランを振り返った。ルグィンの瞳は、嘘が下手だ。

 軍にいた頃いつも一緒だった少年は、スズランにとって戦友以上の仲間だ。弟を持ったような心地がして、スズランは笑った。

「ああ、そうだな。惹かれてる。出会って間もないのにな。……可笑しいな。」

 どこか痛々しい硝子のような声に、スズランは思わずルグィンを振り向いた。

「案外簡単に認めるのね。」

「スズランだから言うんだろ。……それに認めない方が楽だとしても、俺は逃げたくはない。」

 突然ごう、と強い風が吹く。その中で、ぽつりとルグィンは呟いた。

「……俺が、守りたい。」

 彼の声には風に消えないような芯があった。巻き上がった風の行方を探すように、二人は空を見上げた。風に巻き上げられて青や赤、黄や桃の色とりどりの花が空に舞う。彼らの視線の先の彼女も、空を仰いだ。スズランは金色の髪を片手で押さえて、また言葉を紡ぐ。

「あの子を守るのは並大抵のことではないわ。綺麗でまっしろだけど、あの子も確かに闇を持っている。

 それに身分が違うわ。……貴方は実験で使われたモルモット、あの子はどこまでいっても高貴な王女様よ。」

 ふたりが見ているとも知らず、銀色の彼女が空に手を伸ばす。その手に触れた、赤い花びら。指先に触れてまた風に舞い上がり空に消えていく。

「──それでも。」

 わかってる、と彼は呟いた。

 強い風がまた巻き上がる。強風に飛ばされて花が宙を舞う。ナナセが簡単な魔術で両腕へと集める。スズランは花を抱える少女を目で追いながら、呆れたように笑った。少年の心意気にため息が出た。彼女に出会いたった半月ほどの少年の深くに彼女はいるらしい。

「貴方も凄いわね。」

「……知ってる。」

 ちらりと流し目で微笑んだ彼は、すぐにスズランから視線を外した。切なげに揺れた金の瞳がすぅ、と優しく細まった。視線の先では、両手に色とりどりの花を抱えた銀の少女が振り向いて向いて柔らかく笑っていた。

「ナナセ。」

 スズランがそう名を呼べば、空より淡いその瞳がこちらをじっと見た。両手で大事そうに色とりどりの花を抱えながら、彼女が二人のもとへと駆けてくる。

「スズラン、ルグィン。」

 三人の中で一番小さいナナセは、ふたりをきらきらとした瞳で見上げる。笑うナナセの銀色を揺らす冬の風が、また吹き上げた。

「随分集まったのね。」

「綺麗でしょう?」

 暗い笑顔ばかりのナナセが、人前で純粋な笑顔を見せるのは彼女にとっても大きな変化であるだろう。それをまだ知らないで、空色の瞳にふたりを映して、彼女が口を開く。

「スズラン、ルグィン。連れて来てくれてありがとう。とっても嬉しい……。」

 最後は語尾が消えかけて、ナナセは俯いた。またスズランの隣で金の瞳が優しい光を帯びる。スズランは最近の彼に驚きを抱えていた。

 彼女との出会い以降の黒猫の変わりようを、一番知っているのはスズランだ。あれほど冷めた心の持ち主だった彼を、こんな目ができるまでに変えていく。彼女ひとりの存在が、彼の世界を大きく廻す。

 ──この想いが叶うなら、それはまさに運命だろう。

 そう思いつつ、ぎこちなく笑い合うふたりにスズランは目を細めた。

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