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帰宅後

帰路では盗賊に襲われたり、王様達が差し向けた追手と交戦したり、モンスターとエンカウントしたりなんてトラブルは起こらず無事慣れ親しんだ魔王城に帰って来れました。

とはいえキツいのはこれから、何故か途中からノリノリで王様達に啖呵を切って近日中にここに来るとわかっているためそれ相応の準備が必要となり真下。

具体的には郷土料理で、と言うか和食を振舞うという事に……。

こっちに来てからちょいちょい毒を盛られることもあったし、何よりこの世界の料理は基本的に惜しい味付けだったりする。

私個人としては問題なく食べられるレベルだがこちらの料理には香草をよく使う。

塩はこの辺りではそれほど貴重とは言えない代物だがもっと離れたところ、大陸の中心地ともなると金と同等とまではいかなくともそれなりの値段で取引されるらしい。

そのため香草で味をごまかしたりということが多いようだ。

それが一般的に普及してしまった結果がハーブを使いすぎた匂いのキツイ食事というわけだ。


話を戻して私は毒をもられるのも香草にも早々に飽きたのもあって自分で和食を再現しようと試みた。

まず生簀を使って海荷あらここまで運んだ新鮮な魚、鰹によく似た魚を使って鰹節もどきの再現を試みた。

まず頭を落として三枚におろした。

それを蒸して煮て骨を取り、すり身にしたものを表面に塗りたくった。

一番苦労して失敗もしたのがここだったが手を変え物を変えいろいろなもので燻製してようやくそれに近しいものを作ることができた。

正直ここに来てから訓練とかより料理の再現に頑張ってましたはい。


それから味噌を作ろうと奮闘中、麹自体は簡単で二,三日あれば出来てしまうが味噌はつくるとなると一年近くかかる。

そのため城の一角は味噌樽でいっぱいになっている。

何しろできるまで時間がかかるので鰹節の時のようにダメだったら改善というわけにも行かない。

なので今のうちに仕込めるだけ仕込んだ。

醤油は麹菌が手に入らないので断念、代わりに魚醤とかナンプラーと言われるものを製作中。

こちらも味噌と同じく……というか味噌より時間がかかるのでいっぱい作っている。

昆布とかに関しては魚醤と鰹節を作るときに仕入れたお店の人に特徴を伝えてそれらしいものを探してもらったところ、海ではよく網に引っかかったり足に絡みついたりと厄介な植物と思われているらしいそれを格安で手に入れてもらった。

それを天日干しにしたりといろいろやってます。


味噌、鰹節、醤油、麹自体は偶然作り方を知っていたけど昆布とかの方は知らないから文字通り手探りでやっている。

その結果お城の一角がちょっと磯臭くなったけど美味しいご飯のために我慢してもらおう。

お米に関しては、日本で食べていたような品種か一料が施されたものではないがちゃんと存在した。

もっとも扱いはサラダに近かったけど。


そんなこんなで今は鰹節しか使えないがほかより美味しい料理を私は作れる。

そのため今は朝から晩まで訓練そっちのけで厨房にこもって料理人の方々と議論を交わしつつ料理に勤しんでいる。

またいくつかわかったのが和食を作るということの大変さだった。

和食といっても鰹節と塩、その他やサイト肉で造ったスープは味気ないと言った人と素朴ながら深みのある味わいといった人に分かれた。

その言葉に対抗心が芽生え、絶対うまいと言わせてやると意気込んで徹夜で豚骨スープを作ってみた。

こちらは大半の人から好評だった。

ただ鰹出汁スープを味わいあるといった人からはちょっと恋し匂いがきついとも言われた。

魔王様はどちらもものすごい勢いで飲み干しておかわりしていた。

そして、今はこの鰹出汁を使った料理のレパートリー増加のため日夜勉強中というわけだ。

もっとも、魔王様は何を出してもうまいと喜んでくれるのでこういう時は役に立たない、あの人雑食すぎる。


今現在は鰹出汁で造ったお粥、鰹出汁スープと豚骨スープ、それに合わせて麺を製作中。

あとはドレッシングやマヨネーズ、ふりかけなんかを作っている。

自パンに関してはトマトのような野菜とチーズと肉を使って薄くのばしたパン生地と一緒に焼いてピザにしてみたりと色々やってみた。

そして、今現在なぜか私が料理長となった。

別に料理長の座が欲しかったわけでもないのにこうなってしまった。

前料理長はというと、副料理長となり既存の料理を作ってもらっている。

そして前副料理長は副料理長補佐となっているのだ一番上に私が来て、こちらの世界では奇妙奇天烈な料理を考案し続けている意外は厨房に変わりはない。

ついでに行ってしまうと料理人たちは私の料理を食べて日夜研究に活かそうと頑張っている。

副料理長となった元料理長から聞いた話では私の料理はほかの魔族にも概ね好評で、料理人にもいい刺激となっていると言われたのでひとまず安心した。


余談だが毒をもられることはなくなったので犯人は厨房にはいないだろうと確信した。

試しに一時間ほど鍋を置いといて魔王さまとお話に行った時も何もなかった。

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