09 赤城山インター――車窓から覗く者達
田舎は群馬県の沼田である。
そこに行くには車か電車かそれとも徒歩か?
その日は無難に車であった。
父の運転する車で、ちょびっとリッチに高速道路。
関越自動車道を北へ、北へ。
連休の昼間を車は走ります。
トイレ休憩に赤城インターチェンジに入りました。
車内には母が残り、他の家族はトイレへ、買い物へ。
そこで母が体験したお話です。
車内で一人になった母は、助手席の背を倒し、横になりました。
正面の窓には赤城山などの山々。
左の窓の車の窓からは青い空が見えたそうです。
おもいきり背伸びをした、その時でした。
「コンコン」
車の窓を叩く音がしました。
子供が帰ってきたのかと思い、窓の外を見てみると...
誰もいません。
変には思いましたが、また横になったそうです。
目をつぶり、仮眠したそうです。
しばらくして...
「コンコン」
また、車の窓をたたく音です。
めんどくさくなり、目を開けて、車のドア窓を見ました。
そこには若い男女が二人立ち、車の窓の外から、母を見下ろしていました。
母は金縛りにあったように身動きできなくなったそうです。
いつのまにか、男女はいなくなったそうですが、車内に異変が。
助手席の収納BOXあたりから、なぜか水が垂れてきたのです。
ポタ ポタ ポタ ポタ ポタ
水が入っている物など、近くにありません。
収納BOX内にも水など入れていませんでした。
そして--なんと、ポタ ポタ と落ちるしずくは、車内の床に垂れた
瞬間、消えているように見えたそうです。
足元の車内の床には水の跡が残っていないのです。
やがて、僕達家族が車に戻った時、母が神妙な顔をして、言いました。
今、若い男女が車に入ってきた。こんなところから水が垂れだした。
見ると、たしかに水が垂れています。
ポタポタポタポタポタ
たしかに床は濡れていないように見えます。
しかし、車を先に進めないわけにもいかないのです。
とりあえず、父は目的地である、水上方面へ関越自動車に車を走らせました。
いまだ、ポタポタポタと水は垂れています。
少し、車が走った後、高速道路の左の路肩に花が置いてある所を通過しました。
事故でもあったのでしょうか?
母が言いました。
「水が止まった」
なぜか--ポタポタと垂れていた水が嘘のように止まっていたのです。
もちろん、床は濡れていません。
結局のところ、真相はわかりません。
ただ、その後の帰省旅行には特に問題は発生しませんでした。
若い男女...もしかしたら、先ほどの花が置いてあった場所に関係があったのかも
しれません。花の場所に戻る為に、車に乗りたかったのかも...。