表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

06 荒川上流――川の流れのままに

それは子供の頃の話です。

渓流釣りが好きな父に連れられ、荒川の上流に連れて行ってもらいました。

岩場をサラサラと清い水が流れる、典型的な渓流です。

川淵の岩場はバーベキューやらを楽しむ家族連れがたくさんいます。

夏--。

渓流の水は心地よい冷たさで、たくさんの子供が泳いでいました。

魚を求める釣人たちは、川が深い場所に集まって浮きを流していました。


そんな日です。そんな光景です。

僕も、川に入って水遊びをしました。


僕は、大きな岩の脇を流れ落ちる、急な水の流れを発見しました。

ちょっとした滝でした。

水の流れは急ですが、水深は子供の膝までくらいです。

好奇心のまま、僕はそのミニサイズの滝へザブザブ水をかきわけ、

近づきました。適度に藻や水草が生えた岩は、つるつると滑りました。

こ、これは----っ!!

急流に腰を落とすと、へそぐらいまで水に浸かりました。

岩に尻をのせ…えいやっと水の流れにまかせると…

やはり!


こいつは極上な滑り台だぜえええええええええええええっ!!


藻でつるるるるんと滑る岩は、なんの抵抗もなく、僕の体を流してくれます。

けっこうなスピード感でした。

水流がおちついたあたりで止まると、もう笑顔です!


お、おもしれええええええ!!


僕は今一度、天然すべり台、いや、ちょっとしたジェットコースター感覚を

楽しむため、さきほどのミニサイズの滝がある上流にザブザブ歩き出しました。


さあ、もう一度、楽しませてくれよ!

僕はミニサイズの滝の近くまで歩いてきました。


その時です!!

突然、足をなにかにひっぱられたかのように、尻餅をつきました。

尻を水底の岩に打ち付け、いってええ! なんて言えませんでした。


次の瞬間、僕は水の中にいたのです。


そんなに深くない川のはずでしたが、尻をうった瞬間、藻でつるりとすべり、

ちょうど、仰向けになって寝た状態のまま水に浸かっていたのです!


さらに、急な水の流れは、僕の体を下流に引きずり込んでいくのです。

得体の知れない圧倒的な力が、僕の足をひっぱるような感覚でした。


つるつる滑って岩もつかめません。


水の流れに逆らえず、大き目の岩に体のあちこちをぶつけ痛みを感じつつ、

ただ、流されるのみ、でした。


僕は、思いました。

こんな浅い川で溺れ死ぬなんて--!!


僕は幸運でした。

その水の流れは浅瀬へと流れ、僕は小石の川岸に流れ着いたのです。

流されていた時間は、そんなに立ってはいなかったのでしょう。

しかし、僕には異様に長く感じられたのです。

さらに、流されてきた上流を見ると…遠くに小さくミニサイズの滝が見えました。

数百メートルくらい流されていました。


もし、水流が浅瀬ではなく、深みに流れ込んでいたら?

子供心にゾッとしたのを覚えてます。


帰りの車で父に言われました。

「どうした、その足?」

「え?」

足首の少し上あたりに…手でつかまれたような跡が残っていました。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ