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未知への遭遇

 廊下に響き渡る笑い声に足音、昼休みの学校に静けさを求めるのは政治家の汚職をやめさせるのと同じくらい困難だろうに。

 

昼休みのランチタイムは多くの学生にとって楽しみの一つなんだろうが、僕には最も淋しく惨めな時間に過ぎない。

昼食はいつも一人。

でも、友達ができてない訳じゃない、それどころか入学式翌日に三人もできたのだから、むしろ上出来な方だ。・・・多分。

けど、その友達たちは昼休みになると皆それぞれの部活の部室で先輩や仲間たちと一緒にランチタイムを過ごしている。

 

中学の時の友達はこの学校に通ってる人数自体が少なく、その数少ない中学の友達も他の新しい友達とランチで僕の入る隙間などない。だから部活に入ってない僕は一人淋しく教室の片隅で弁当を頬張る日々。

そんな淋しい日々を過ごしてはや三週間・・・教室の片隅で身を縮めて周りの人たちの会話を耳にするのも辛く感じてきた今日この頃、何処か自分の落ち着ける居場所を求め行く当てもなくまだ少ししか理解出来ていない校舎を呆然と歩いていた。

しかし何処にも人は居た。

 

昼休みが始まって五分程しか経っていないのにあり得ない程の時間が経ち、あり得ない程の距離を歩いた気がした。

「人多すぎ」思わず嘆いてしまう。

 そうして歩いて行くと学習棟の秘境である生物資料室に辿り着くもそこにも人はいた。仕方なく教室に戻ろうかと思った瞬間、ふと階段が目に入った。「こんな所に階段あったっけ?」

 不思議に思いつつも何故かこの階段に心が魅かれ足が勝手に階段を登った。

 

登るとそこは壁も天井も一面が寂しい灰色のコンクリートに囲まれて、ドアが壁に埋め込まれてるように付いている空間があった。ドアの少し上には白いプラスチックのプレートが付いている。何やら文字が書いてある。

「屋上?」

 屋上が珍しい訳じゃない、小、中学校にも屋上はあった。しかしどちらも基本は立ち入り禁止でおまけに鍵もかかっていて入る事はまずなかった。その為屋上は僕にとって身近な未知の世界となっていた。

 

そしていつの間にか僕の足はその未知の世界に足を進め、ドアノブに手をかけていた。どうせ鍵がかかってると思いつつもノブをひねるとドアはびっくりするくらい簡単に開いた。

「あれ!?」自分で開けたくせにこんなにも簡単に開いたことに驚いた。

 ドアを開けるとスッーと心地よい風が体全体を通り抜けた。

 殺風景さっぷけい。それが屋上への第一印象だ。

 よくドラマや漫画なんかに出でくるような特に何の塗装もない一面のコンクリートの床にそこそこの高さのフェンスが周りを囲んでる。あとはプールサイドなんかによくありそうなプラスチックの低めの青いベンチが二つ置いてあるだけだ。

 穏やかだ、それが何よりも嬉しかった。

 ベンチに座り弁当をひろげる。吹く春の風と静けさが弁当をよりおいしく感じさせた。高校へ入学して初めてランチタイムが有意義に感じた。

 そんな余韻に浸っていると後ろのドアが開く音がした。


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