第4話|完全な除外
朝、職員室の配置が変わっていた。
机の列が詰められている。
一列、少ない。
自分の机は、端に寄せられている。
片付けられたわけではない。
残されている。
ただ、
動線の外だ。
*
時間割を確認する。
担当は、ある。
削られてはいない。
だが、
備考欄に一行、追加されている。
「補助教材併用」
誰の補助かは、
書かれていない。
*
教室に入る。
生徒は、すでに端末を開いている。
画面には、
教材のトップページ。
自分が話す前に、
進行が始まる。
*
説明は、要らない。
「今日は各自で進めてください」
その一言で、
全員が動く。
質問は出ない。
確認もない。
*
教室の後ろに立つ。
見て回る。
詰まっている生徒はいない。
詰まっていないなら、
介入は不要だ。
*
授業が終わる。
チャイム。
生徒は、
画面を閉じて立つ。
黒板は、
使われていない。
*
次のクラス。
同じ形。
同じ進度。
同じ画面。
同じ説明不要。
*
昼休み。
職員室に、生徒が来る。
端末の不具合について。
対応するのは、
別の担当だ。
自分の前は、
通過される。
*
午後、
管理職から連絡が入る。
「今年度の授業アンケート、見ました?」
見ていない。
「特に問題は出ていません」
それが、
最も重要な情報だ。
*
アンケート結果を確認する。
教科の満足度。
理解度。
どれも平均以上。
コメント欄は、
空白が多い。
名前は、
出てこない。
*
放課後。
卒業関連の書類が回る。
記念品。
寄せ書き。
文集。
担当者名の一覧に、
自分の名前はない。
確認されない。
役割がないからだ。
*
文集の原稿を見る。
教科の思い出。
授業の話。
教材の名前は出る。
動画。
問題集。
誰に教わったか、
という文はない。
*
写真が掲示される。
行事の写真。
集合写真。
写っている。
だが、
説明文がない。
「〇年〇組」
それだけだ。
*
学年末。
机の上が、
少しずつ空く。
書類は減らない。
だが、
使う物がない。
*
最後の日。
チャイムが鳴る。
生徒が出ていく。
「ありがとうございました」
誰に向けた言葉かは、
分からない。
*
教室は、
静かになる。
黒板は、
最後まで使われなかった。
*
帰り際、
校内掲示を見る。
来年度の案内。
「ICT活用による学習環境の充実」
図の中に、
人は描かれていない。
*
校門を出る。
後ろで、
生徒の声がする。
「この教科、誰が担当だったっけ」
少し考える間。
「まあ、いいか」
話は、
そこで終わる。
*
学校は、問題なく回っている。
成績も、
進路も、
満足度も。
必要なものは、
すべて揃っている。
ただ、
自分が最初から数に入っていなかっただけだ。
チャイムは、
来年も同じ音で鳴る。




