表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

第3話|代替


 朝、教室に入ると、黒板に文字が残っていた。

 自分の字ではない。

 だが、内容は合っている。

 今日扱う範囲。

 要点。

 消す理由がない。


     *


 生徒は、着席している。

 端末が立ち上がっている。

 画面は同じページを開いている。

 配布していない資料だ。

 誰かが共有したのだろう。

 経路は分からない。

 分からなくても、

 問題はない。


     *


 授業を始める。

 説明をする前に、

 生徒の一人が言う。

 「今日は、ここまでですよね」

 確認だ。

 自分は頷く。

 「そうです」

 それで済む。


     *


 板書をする。

 だが、

 写されない。

 すでに画面にある。

 ノートに書く必要がない。


     *


 問いを出す。

 答えが返る。

 速い。

 正確だ。

 補足を入れる前に、

 次へ進んでいる。


     *


 自分の役割は、

 確認だけになる。

 進度が合っているか。

 間違っていないか。

 それだけだ。


     *


 チャイムが鳴る。

 生徒は、静かに立つ。

 誰もこちらを見ない。

 見る必要がないからだ。


     *


 次の時間。

 同じ教科。

 別のクラス。

 状況は同じだ。

 板書は、

 最初から想定されていない。


     *


 休み時間、

 教室の外で声がする。

 「動画の方が分かりやすいよね」

 「倍速で見られるし」

 「先生の説明と、内容一緒だし」

 同意が返る。

 比較はされていない。

 置き換えられている。


     *


 職員室。

 机の上に、

 新しい書類が置かれている。

 「授業補助教材の試験導入について」

 自分の教科名がある。

 担当欄は、

 空白だ。


     *


 会議。

 管理職が言う。

 「この教材、評判いいみたいですね」

 成績の推移が示される。

 下がっていない。

 むしろ、安定している。

 「先生方の負担も減りますし」

 減る負担に、

 自分が含まれている。


     *


 質問される。

 「使いづらい点は?」

 考える。

 使いづらくはない。

 「特にありません」

 それが正解だ。


     *


 午後の授業。

 生徒は、

 画面を見ながら進めている。

 自分は、

 教室の後ろに立つ。

 全体を見渡す。

 介入する場面は、ない。


     *


 誰かが手を挙げる。

 一瞬、

 こちらを見る。

 だが、

 画面に戻る。

 自己解決だ。


     *


 授業後。

 提出物を確認する。

 理解は十分だ。

 誤答は少ない。

 自分の赤字は、

 ほとんど要らない。


     *


 日誌を書く。

 特記事項:なし。

 それで、

 帳尻は合う。


     *


 放課後。

 質問対応の時間。

 教室に行かない。

 掲示を外す。

 誰も気づかない。


     *


 廊下の掲示板に、

 新しい案内が貼られている。

 「学習支援コンテンツの活用について」

 図がある。

 生徒。

 端末。

 矢印。

 人は、

 描かれていない。


     *


 帰り際、

 教室を振り返る。

 黒板は、

 使われていない。

 だが、

 授業は成立している。


     *


 自分は、

 教室にいた。

 だが、

 そこにいる理由は、

 もう説明されていない。

 説明されないものは、

 判断の外に置かれる。

 判断の外にあるものは、

 削減の対象にならない。

 だが、

 必要ともされない。

 それで、

 学校は回っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ