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チア|大会前フェイズ
目が、覚めた。
天井が、ある。
水が、ない。
胸が、
少しだけ、苦しい。
カレンダー。
制服。
バッグ。
すべてが、
「今日」を、指している。
大会。
バタフライ。
胸の奥で、
不安が、波を打つ。
洗面所の鏡に、
知らない顔が映る。
でも、
名前だけは、知っている。
——明音。
水着を、触る。
つるつるして、
冷たい。
水槽のガラスみたいだ、
と思う。
「……ふぁ……」
小さく、
声が漏れる。
そのとき、
スマホが、光る。
里香から。
『いつもの明音の力出せば大丈夫』
短い文。
でも、
胸の奥が、少し、あたたかくなる。
チアは、
深く、息を吸う。
うまく泳げなくても。
怖くても。
今日は、
水に、向かわなきゃいけない。
——あの子が、
水の中で、待っている気がするから。
行こう、大会へ




