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明音|ゆらゆらフェイズ
水は、
今日も、よく揺れている。
砂から少しだけ体を出して、
チアは、ゆらゆらする。
外では、
人間たちが立ち止まっている。
顔を近づけて、
目を丸くして、
なにか言っている。
それが、
ちょっと、うれしい。
チアは、
いつもより大きく、
ゆらり、と揺れる。
角度を変えて、
少し、長めに。
——見てる?
すると、
外の人たちが、笑う。
光るものが、
こちらを向く。
カメラ。
スマホ。
でも、
嫌な感じはしない。
追い立てられない。
比べられない。
ただ、
「かわいい」って顔。
「チア、揺れるのうますぎじゃない?」
となりから、声。
「最近、変わったな」
砂の中から、
仲間のちんあなごたちが、
顔を出している。
「そうかな?」
チアは、
また、ゆらゆらする。
特別なことは、
していない。
ただ、
水にまかせて、
体を預けているだけ。
外では、
みんなが、笑っている。
ここには、
順位も、
期待も、
三連覇も、ない。
あるのは、
揺れと、光と、
やさしい視線。
チアは、
砂に戻って、
少しだけ、目を閉じる。
——このままで、いい。
プレッシャーのない世界で、
ゆらゆらすることが、
こんなに、楽しいなんて。




