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チア|プールサイドフェイズ

里香と待ち合わせて、

会場へ向かう。


「大丈夫だよ」


里香の声は、やさしくて、強くて、

胸の奥にすっと入ってくる。


でも、口から出たのは、

ふわっとした、いつもの癖の声。


「ふぁっ……」


明音は、自分でも驚いた。


水族館の水槽では、

ゆらゆらするだけでよかった。


でも今は違う。

プールの水は、広くて深くて、

そして、競う人たちの熱で、

重く感じる。


緊張が、胸をぎゅっと締める。



——泳げるだろうか。

——うまく、バタフライできるだろうか。



水槽では、

ただ漂って、

揺れていればよかった。


今は、違う。


人の声が、ざわめきが、

耳の奥で波になって押し寄せる。


背中のラインを、体の感覚を、

全部、使わなきゃいけない。


でも、体は覚えている。

バタフライのリズムも、腕の伸びも、

微かな記憶として、ここに残っている。


そして、順番が回ってきた。


——私の番だ。


コースに立つ。

プールの水面が、静かに揺れる。


緊張は、最高潮。


胸が、波打つ。


息を整える。


心の中の、静かな水槽を思い出す。


——でも、ここは現実。

揺れるだけじゃ、足りない。


深呼吸。

肩の力を抜く。


目の前の水が、呼んでいる。


そして、指先が、プールに触れた。



——始まる。


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