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プロローグ
水は、音を隠す。
強い声も、
急いだ足音も、
考えすぎた気持ちも。
ガラスの向こうで、
青い光がゆらゆら揺れている。
ここでは、
前に進まなくてもいい。
速くならなくてもいい。
ただ、
そこにいて、
揺れていればいい。
砂の中から、
細い影がひとつ、顔を出す。
口が、
ぱかっと、ひらく。
それは、驚きでも、合図でもなくて、
受け取るための形。
同じ時間に、
同じ形で、
同じように息をする存在が、
まだ知らないまま、向かい合っている。
境目は、
いつも、静かにひらく。
音が消えた、その瞬間に。




