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名馬とは
昔々、まだ武士が戦争をしていた頃、ある馬農家があった。
そこにはとても足が速い馬がいた。
ある日、その話を聞いた殿様がやって来た。
「ここにはとても足が速い馬がいると聞いたのだが、見せて貰えるか?」
農家の男は大喜びで言った。
「勿論よろしいですよ。足が速いのも本当ですので、きっとお気に入りいただけると思います」
早速、男は馬を見せた。
実際に見てみると、その馬は確かに、殿様が今まで見たどの馬よりも足が速かった。
「いかがでしょうか?お気に召していただけたのなら是非ご購入を……」
「そうだな……。乗ってみてもいいだろうか?」
「勿論です」
そうして殿様は馬に乗ろうとした。
ところが、殿様が乗ろうとするとその馬は暴れ出して手が付けられなかった。
「いくら足が速くても、こんなに暴れるようでは人を乗せる事はできない。わしの家来や他の馬に怪我をさせてしまうかもしれない。これでは役に立たないな」
殿様はそう言って帰ってしまった。
どんなに能力が高くても、人の役に立たない者や他者に迷惑を掛ける者・害を与える者は評価されないし、するべきではない。