ハトとタカの争い
ある森で無数のハトの群れが暮らしていた。
ある日、その森に数羽のタカの群れがやって来た。
タカの群れのボスが言った。
「ハトども。今日からこの森には俺たちタカの群れが暮らす。痛い目に遭わされたくなかったら、俺たちをここから追い払え。それかこの森から逃げ出すんだな」
ハトの群れのリーダーが言った。
「あなたたちが私たちを敵とみなしても、私たちはあなた方と敵対するつもりはありません。この森は広いですし、好きに暮らして構いませんよ」
次の日から、森のあちこちでハトとタカの争いが起こるようになった。
まともに戦えばタカの方が明らかに強く、ハトは次々とタカに仕留められた。
しかし、ハトは圧倒的に数が多いため、タカは次々と現れるハトの群れを相手に疲れてしまい、そこを数羽がかりで追い立てられた。
ある日、ハトのリーダーとタカのボスがまた出会った。
ハトのリーダーが言った。
「私たちはあなた方と敵対するつもりはないと言ったではないですか。どうして私たちを襲うのですか?」
タカのボスが答えた。
「お前たちが敵対するつもりがなくても、俺たちはお前らと仲良くするつもりはないんだよ。俺たちを追い出そうが、そっちが逃げようが好きにしていいと言っただろうが」
その後もハトとタカの争いは終わることがなかった。
この話は、一見ハトが善良でタカは悪に見える。
だがハトの主張は「自分たちが受け入れるのだから、そっちも自分たちを受け入れろ」と、自分たちの考えを受け入れることを強要しているとも捉えられる。
対してタカは「自分たちが受け入れないのだから、そちらも無理に自分たちを受け入れなくていい」というふうにも捉えられる。
多様性と向き合うのであれば、単純に違いを受け入れるだけでなく「『違いとの向き合い方』の違い」を考えることも重要である。