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#8 思った以上に、目の前のやつはやべぇやつだった。

「そういえば、ユウキって転生してから長いの?」

「あ、あー……まあ。ざっと300億年は経ってるかなあ」


……ハイ?

300、おくねん……?


俺は目を瞬かせつつユウキを見た。

苦笑に近いはにかみを顔に乗せている。


「300年ではなく?」

「この世界の天地開闢を見てる」


酷く透明な、深淵を瞳に宿したまま、ユウキは笑んでいた。

てんち、かいびゃく……


「やっぱお前……澪夢さんより偉いじゃん」

嘘つきぃと嘆いた。


天地開闢を見る……それはつまり、この世界の創世神だってことじゃんかー……


「魔導教の守護神が、なんでアルヴェリアをほっつき歩いてんだよ」

この世界の創世神は、魔術の神様……つまり、魔導教の守護神であるということは、周知の事実で。

まさかそれが前世のクラスメイトで、そしてこの世界を気軽にほっつき歩いているとは。

「ん? だって俺アルヴェリア国民だぜ? みる?」

サテライトのウィンドウを投げてよこしてユウキが見せるのはアルヴェリア国民の住民カード。

わあお、まじでアルヴェリア国民だ、この神様。

「え、でも魔導教の本山ってフェンファーゲン|《世界樹》だろ? なんでアルヴェリア国民なのさ」

疑問が増えるわ。なんでアルヴェリア国民なんだよ。ってか神様に人権あるんかよ。

神様ってなんだ……?

「……本体はちゃんとフェンファーゲンに置いてるぞ?」

「本体?」

首を傾げた。

それにユウキがにんまりと笑みを浮かべた。

いやだわあ、その意地悪い笑み!

「俺が神族だってわかったでしょー? 分け御霊ってご存知なあい?」

んまあ! ユウキさんったらまるで幼子に教えるようなねこなで声でっ! 9割馬鹿にしてるわねっ!


……いや、俺この世界では5歳だし。事実上幼児だが。


「え、でも本体って、システムじゃないの?」

「システムのことも知ってたな、お前」

 お前聡いなってユウキが天を見上げた。

 その目は遠くを見ているようで何も映っていない。

「まあー……あれが大元ってのはそうなんだがね。システムの優樹、神族のユウキ、魔王のゆうき……『世界の外側』で3分割して、『世界の内側』に来たわけだが……それでも原初の世界では負荷が強すぎてな。こっち側でさらに2分割して、本体は亜空間に封い……幽閉したんだよ」

「言い直す意味ある? それ」

半目で睨めばユウキが苦笑した。

「思った以上にこの世界は脆弱で……いや、創世神の権能が強すぎたのかなあ……」

遠い目をしたまま呟くユウキの瞳は、宇宙か深海を思わせる深い青をしている。底なしの暗さがあるのに、どこまでも透明で。深淵に星が瞬いている。

……言い直した意味は答えてくれないのね。

まあ、俺もはぐらかしたから、お互い様か。


「結構良い時間だぜ? 一旦家に戻ってから牧場へ行くか」

おや、そんな時間か。

ユウキの提案にサテライトを見ると9時近くだった。


結構良い散歩になった。


ユウキと一緒に家に戻ると、母君が、ユウキに気づいてお辞儀をする。

ユウキも母君に微笑んで世間話を始める。

あ。母君ちょっと顔赤らめてる。

駄目だぞ母君、そいつは女装で彼氏持ちだ。

つか母君には父上が居るんだから不倫は良くないぞー。ユウキは澪夢さんにチクってやるんだ。

ユウキが我が母君にちょっかいかけてましたって。


……まあ、ユウキが我が母君に手ぇ出すとも思えんのだがなあ……

昨日今日の、それも数時間付き合いだけど、こいつの澪夢さんへの感情は異様だ。ひしひしと伝わる。


好きとか、愛してるとかそういうの超越してそう。


いや、前世含めて20歳にもならん俺が語るのもアレだが。恋愛の機微なんてしらんよ。


家に入って、水筒のお茶はほぼほぼ飲まなかったので継ぎ足しはせず、そのままおやつ入りのリュックを背負う。

サテライトの、交通券に残高がそこそこ入っていることを確認してからユウキのそばに戻る。


「じゃあ、行きますか」

ユウキがそう言うので、俺は母君に向き直って「いってきます」と声をかけた。

母君はすこし不安そうだったが、「いってらっしゃい」とおくり出してくれた。


「良い家族だな」

しばらく歩いてからユウキが呟く。

それに俺は目を瞬かせた。

「ん。母君も父上も優しいし、俺のこと愛してくれてるよ」

「あの、さ。俺は……転移から転生したけど、さ。さっきも言った通り、創世神だから、親とか……居ないんだわ。俺の親と言える存在は、日本にいる父と母だけだ」

「お、おう?」

割りと真剣な顔で言うユウキに、俺はさらに目を瞬かせる。何が言いたい?

「……お前、前世の両親と比べたり、しないの?」

「あ、あー……」

比べたり、かあ……


実は俺の前世の出生は少しややこしい。

ぶっちゃけると、養子なのだ。


前世の、父と母と血が繋がっていないわけではないのだが……養父と養母である。

養父と実母が兄妹で、実父と実母は俺が産まれてすぐ交通事故で亡くなったらしい。

で、養父が引き取ってくれたわけだが……


うーん。


比べる?


アレらと、父上と母君を?


「ないなあ……」

いやあ。

あの。

5年間の付き合いだけどさあ……いや、出来た両親だよ?

比べれんよね。アレらとは。

まあ、引き取ってくれたことには感謝する。

ちゃんと衣食住整えてくれてたのも、まあ。感謝しよう。


……。


「いやあ、この5年間、いかに両親が俺を愛してくれてるかひしひしと伝わってたしねえ。前世のアレらと比べるべくもなく。俺は母君と父上が好きよぉ? 尊敬してる」

「……俺は、お前の前世の家族知らんのだが……え、アーバインだよな? お前の姓」

「ん? そうだよ。アーバイン」

肯定すると、ユウキの顔が曇る。

「アーバインって、あの、アーバインだよな……? 黒の……」

「え、なに。黒のってなに。なにその仰々しいの。何?」

「知らない? 七魔殿」

ユウキが首を傾げた。

俺は少し興奮気味にユウキを覗き込む。

「何その厨ニ臭いネーミング!」

正直な感想を叫んだ。

黒のアーバインって何?! 七魔殿?!

カッケーと思う反面厨ニ臭くて寧ろダサいとも思う。

「七魔殿はフェンファーゲンの魔術大家の総称だよ。白のリリン家、赤のヴァイオラ家、青のスヴェル家、紫のミヤケ家、緑のガドルガドラ家、黄のゴルオーレ家……そして黒のアーバイン家。みんなハイエルフの、超エリート魔術師の家系でさ。お前もアーバイン家ならエルフの血が流れているはず」

人間だけどな。お前は。

そう付け足してユウキは吐息を吐く。

アーバインって、そういう流れの家系なのね……でも確か……


「うちは分家だったはず。爺様がハーフエルフで、曾祖父様と曾祖母様が、爺様とアルヴェリアに亡命したとかなんとか」

「わりと過激なのな。いや、熱烈なのか。……そういえば100年前に一騒動あったなあ……アーバインの……セレニエ? セレミエ? が人間と恋をしたとかなんとか」

「セレニエ曾婆様だよ」

「あいつ、かなりの使い手でなあ……アルヴェリアでもよく絡んでた。確かにお前の母さんとよく似てた。お前は父親似かね」

「よく言われる」

「クリーチャーとはいえ、そこまでイケメンなのはズルイわー」

「……前世からのガチイケメンに言われたくねえ」

「……お前は俺の前世知ってるもんね」

「……澪夢さんは?」

知らねえの? と問えば、ユウキは淋しそうに笑んだ。

「俺、入院してたろ」

「お、おう」

「澪夢は、俺の兄貴の嫁さんの連れ子だから」

「だから?」

「アイツは、外を知らずに餓死して転生してる」

餓死? 日本で? なんで!?

2014年の、平成の日本で! なんで餓え死になんか!!

俺の様子にユウキは泣きそうな笑みを浮かべた。

「親を責めないでやってくれな。兄貴は、海外出張で単身赴任してて、その……様子を知らなかったんだ。母親も……心を、さ。持ってかれたあとでさ……」

「持ってかれた?! まさか浮……」

「心だけ! この世界に堕ちてきたんだ……!」

俺の言葉を遮って、ユウキが叫んだ。

「澪夢が前世で死んだのは! ……俺のせいなんだよ……俺が、この世界を、墜ち人の受け皿を作らなけりゃ……」


あ、あー……


いつの間にか、地雷を踏み抜いてたらしい。

泣きそうなのに泣かないユウキは痛みを堪えた顔で俯いている。

そんなユウキに手を差し伸べることも、掛ける言葉も見当たらない。頭を撫でることだって、非力な童子の背丈では届かない。


「俺ら、波乱万丈だな」


やっとの思い出でた言葉は、お粗末なものだった。

が、それにユウキは吹き出した。


「澪夢ほどじゃないけどな」

「どうだか……お前だって、300億年のどれだけ、独りで過ごしてたんだよ。システムにも聞いたぞ」


こいつは腐っても創世神。天地開闢を見たと豪語する、創世の神様である。

前世でさえも、人類が出現したのは猿人を含めても400万年ほど前。

300億年には程遠い。


「そだねえ……人類が出てきたのは……10億年前くらいだったかな」


ん?


なにか違和感を覚えた。

10億年?


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