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#78 そういえばこいつ最早人間じゃないんだよなぁ……

「いやぁ……食べたなぁ……」

「つか、酒飲んでる君をみて、君が大人だって痛感するの、なんか悔しい」

 最初は「や、俺はお茶でいいですー」とか遠慮してたくせに、盛り上がるにつれてビールやら日本酒やらを貰い、最終的には父上とブランデー飲んでたユウキ。

 羨ましいというか、なんか最早悔しい。

 俺は6歳なので、酒はまだまだ早いのだ。

 ついでに、母君は妊娠以前に下戸なのでほぼほぼお酒を飲まないが、父上と曾おばあ様はかなりイケるクチである。蟒蛇……とは言わないけれど。

 が、ユウキは父上と曾おばあ様が酔うレベルでもケロリとしていた。

 ……ザルか蟒蛇か……。

 結構なお酒をちゃんぽんしてたくせに、ほろ酔い程度に留まっている雰囲気がある。

 最終的に伸びた父上と曾おばあ様をユウキがそれぞれの部屋に連れて行き、母君が恐縮していた。

「ほんとすみません……」

「いやいや、妊娠中に無理しちゃだめですし。ご馳走になった手前、これくらいはさせてください」

「もう、主人も浮かれちゃって……普段はここまで飲まないんですけど……」

「ま、お家ですしね。気に病まなくて大丈夫ですよ」

 にこにことほほ笑んだまま対応してて流石だなぁと思う反面『ユウキのくせに……』という感情を抱いてしまう。うーん……悪感情。


 時計を見れば、22時を指しており、少し驚く。

 楽しい時間はあっという間に過ぎるものだ。


 そして端、と気づいた。


「きなこ、寝る場所どうしよう?」

「あ、あー……」

 

 母君が頬に手を当て、吐息する。


「きなこちゃん、人間モードで居続けなきゃダメなんだっけ……お布団はあるんだけど……敷く場所がないわねぇ……客室は曾おばあ様が寝ているし、ハルトの部屋もユウキさんの布団は敷けるけど……きなこちゃんの分までは厳しいかも」

「……今日はきゅっきゅモードに戻って、朝から人間モードになるか?」

「きゅ……その方が、いいっぽいです?」

 そういった直後、きなこの輪郭が溶けてスライム状に崩れ、瞬く間にきゅっきゅちゃんな姿になる。

 そして俺の肩に飛び乗った。

「きゅっきゅ!」 

 ……やっぱきゅっきゅちゃんモードのきなこは、とても落ち着く。

 この、ぬいぐるみみたいな重みが肩にちょうどいいんですなぁ……


 二人と一匹で自室に戻り、曾おばあ様が持ってきてくれた布団を引いたユウキがそのまま横になる。

「ふはー。……お前ん家の布団、寝やすいなぁ」

「そうかぁ? 普通では?」

 自分のベットをバフバフ叩きながら言えば、ユウキが喉で笑みを転がした。

「今度俺ん家来いよぉ」

「それ、ユウキの家の布団は寝心地悪いと白状してない?」

「フェンファーゲンの拘置所よりマシマシ」

「……前科持ちっすか」

「ムショに入ったことはないぞ?」

 寝返りを打ってユウキがうつ伏せになる。

 長い青銀の髪がゆるりと動くのに目が行く。

 きなこが俺のベットから飛び降りてユウキの背中に着地した。

「うっ!? きなこ、軽いからっていきなり落ちてきたらビビる」

「きゅっきゅ」

 にゅっと触手を伸ばしてきなこがユウキの髪をつつき始めた。

 猫か? 猫がじゃらしにじゃらされてる感じか?

「あっ、こらっ。きなこ、俺の髪引っ張んな!」

「きゅっきゅー」

 怒られても反省しない声色できなこが返す。

 そして触手の動きも鈍らない。

 ちょいちょい髪を触手で掬い、弄っている。

 良いなぁ、俺も弄りたーい。

「普段そんな感じだったの?」

「んー……まぁ、修行以外じゃこんな感じだったかなー。-13番街-を散歩したり?」

「-13番街-、ねぇ……どこにあんの?」

「どこ……難しいな……しいて言えば、空?」

「空?」

「空。空中に島を浮かせてる。移動するから今どこ辺りを漂ってるか……ま、そもそも次元が違うから、空を飛んで-13番街-に行くことは不可能だけど。-街-の外なら影くらいは見えるんじゃない?」

「へぇ……」

 そら、アルヴェリア王国の-街-は-12番街-までしか存在しないと言われるわ。

 ユウキの言っている-13番街-……つまりはユウキの神域ってことじゃん。

 やっぱユウキって神様なんだなぁ……

 ……なんか解せない。

「そういえば、何で浅桐様に本気ださせたの? ユウキも似たようなことできるんじゃないの?」

 そう、神の本気……小説でいうなら神気開放? とか、ユウキも神ならできるやつでは? と思うのに、浅桐様にさせて自分はしなかったこととか、俺にとってユウキが『神っぽくない』と思ってしまう要因なんだよなぁ……

「……んー……とりあえず、前提知識として神にも位がある話とか、位によって圧が違うとかややこしい話もあるんだが……俺、創世神じゃん?」

「うん」

「創世神って、思ってるより厄介な存在でな? 世界を造った偉業で神に成ったのは良いんだけど、俺の存在にこの世界が耐えれないの。だから、そもそも俺はこの世界の内側に存在できなくて世界の外にあったわけよ」

「うん」

「でもさ? 世界の外って俺以外何もないわけで。いっちゃえば寂しい場所でな? 逆に内側は世界が出来て、宇宙が、天体が出来て……生命が出来て……眩しく感じるわけよ。たのしそーって。じゃぁ、中に入って見たくなるじゃん?」

「だから?」

「うん、だから、存在を割って……小さくして内側に入ったわけよ。……でも、割っても俺の存在は他者を圧倒しちゃうわけでして。俺ってば、さらに存在を分けてて……今の俺って最強の魔術師ではあるんだけど、それでも人類の上限を少し突破してるくらいの力しかないわけね?」

「ふんふん。つまり?」

「つまり、神としての権能は使えるけど、神としての存在はそこまでな訳。この世界に降臨した時点の俺が100だとすれば、今の俺は0.01くらい、かな?」

「1万分の1くらいに割ったの?」

「ついでに、システムの優樹《俺》は神族のユウキ()よりすごいよ。世界そのものだし。別格って言っていい」

「どれくらいすごいの」

「システムの優樹が100なら、本来の神族のユウキ()が0.01くらいになる程度には」

「そんなんと戦争してるの? お前」

「世界を挟んで外側と内側で戦争してる感じだからねぇ……」

 くふくふと笑い、ユウキが寝返りを打つ。

 きなこが巻き込まれて布団とユウキの背中に挟まれた。

「きゅぷー」

「お、すまん」

 謝ってさらに寝返りを打ち、うつ伏せに戻るユウキ。

 きなこはユウキから離れてきなこ用のペットベッドに移動する。

 触手を使って毛づくろいをし始めた。眠いのかな?

「ま、纏めればアレだ。今の俺って神様としては下の下だからね。本気なんて出せないわけよ。ぶっちゃけ、生活する分には苦労しないしな」

 カラカラと笑い、ユウキが目を閉ざす。

「神威がなくったって、世界一の魔術師だしねぇ。俺」

「魔術の神様だもんねぇ」

「生きてる時間が違うしねー」

「神ってさ、生まれた時点で完成されてるんだろ? 存在してる時間って関係あるの?」

 気になることを尋ねれば、ユウキが目を瞬いた。

 そして驚きというか、『んなことも知らんのか』と言いたげな目で俺を見る。

「無限にもレベルがあるって話する?」

「どう関わんのさ」

「神だって最低保証があるだけだぜ? その神にとっての存在しやすい形で生まれる、その世界の知識がある程度わかっている、その程度の話で。新しい文化を取り入れて、価値観をアップデートして、変化する神様だっていっぱいいる。どっかの駄菓子屋商売してる神だってさ、生まれた時から商売してたわけじゃないだろ?」

「あぁー……」

 そもそもイワナガヒメは盤石なるものの象徴というか、そういうものだもんねぇ……駄菓子屋商売、何も関係ない。

 神について分かったような……より分からなくなったような……

「神が変化しないと思ってるのは人間だけだよ。ハルト君? 大体の神はね、信仰で左右されるんだ。バアルちゃんだってそうだろ? 嵐と慈雨の神。だけど信仰にゆがめられて蠅の王と謗られたりもする。ヒンディー教では最高神の1柱とされるシヴァ神は仏教では大黒天とされるし、いろんな神がいろんな神と合一したり、分離したり、化身になったり……姿を変える。いい意味でも悪い意味でも信仰によって変化するものだぜ? 神ってのはな」

「……わかったような、わからないような……」

「神は完璧であり、完全であり、完成されたもの、そういう信仰があるから神はそのように存在できる……とも言えなくはないんだよね。あれだ。誰かが言ってたろ?『忘れた時がその人の真に死ぬとき』だって。それは神にも当てはまるのかもしれないな?」

「……それはお前にも当てはまるのか?」

「さて……、俺は俺で特別だからねぇ……ただ言えることは、『信仰を失って消えた神は存在する』ということと、『前世の世界で全知全能といわれたあの神はこの世界でもやっぱ全知全能だった。そしてその神はあっちの世界よりは信仰されなくなったが確固として存在している』ってことかなぁ」

「……え、前世の世界宗教……あるの? こっちでも」

「そら、堕ち人に凌辱されつくした世界だぞ? 有用だと感じたらこの世界でも取り入れられるだろ……」

 呆れたような返答に、俺は驚きを隠せないでいる。

 そら、仏教がこの世界にもあることは知ってたが、残りの2つもあるとは思わないじゃん。

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