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#70 神様ってすっげーのなあ


 ……


 社務所の裏手に来た俺たちは、大きな御神木の前にある鳥居の前で立ち止まった。


「この鳥居通ったら、俺の神域」

 鳥居の奥には御神木が見えるだけだが……神域?


「そういえば蓮華はー?」

 とユウキが話をぶった切って問う。

 今聞くことか?

「蓮華は家で寝てるでー。なんか、徹夜したみたい?」

「Titanか」

「イベントだったからなぁ……周回してたんやと」

「イベント命かよ」

「アイツにとっちゃぁ、命より重いやろね」

 苦笑気味に笑い飛ばして、浅桐様が鳥居をくぐった。


「あれ?」

 鳥居をくぐったはずの浅桐様が消えた。

 奥には相変わらず御神木がそびえているだけである。

「ほれ、後に続け―い」

「ちょおまっ?!」

 急に背を押しながら鳥居へ導くユウキに、俺は慌てて文句を言おうとして……

 鳥居をくぐった瞬間景色が変わったことに気づいて息を止めた。


 昼間だったはずの空に星が瞬いている。

 延々と続く桜並木、四季関係なく咲き乱れる花々、真っすぐ続く石畳……近くに小川が流れているのか、水の流れる音がする。

 そして、少し離れた場所に小さな家屋が一軒建っていた。

 

「半日ずれてんの。ごめんな? 戻してもいいんだけど……ちょーっと、都合が悪くてな……我慢してくれ」

 と謝ってくる浅桐様。

「まぁ、これが神域。神の意のままに変化する場所でな……法則も変えれるから、神によっては生身で立ち入れない……ってのもある。浅桐は、極力合わせてくれてるけどな」

 なんて、ユウキが説明してくれる……んだが……

 実際神域に入っても……なんか……説明できねぇな、これ。


 雰囲気が物々しく感じるのは、森っぽい場所から生き物の気配がしないからか、それとも全体に満たされた濃密なマナのせいか。

 景色はそこまで異常じゃないのに、物々しい雰囲気のせいか息がしづらい。


 暫く浅桐様の後を追って石畳をあるいていると、家屋に着いた。

 普通の家だ。一般的な、木造家屋。

 こじんまりとした平屋の家だった。


 中に入ると、本当に、神様が住んでるとは想像できないくらい、質素で、ふつーな家だった。

 2LDKらしい。

 リビングが広く、ソファーの下に大きなクッション……というか、人をダメにするアレが転がっていた。

 アイランド型のキッチンには生活感がない。やっぱ神様だから自炊とかしないのかな。


 浅桐様は一室のドアをノックし「おーい、蓮華ー。きたでー」と室内にいるらしい主を呼ぶ。神様のわりに……気軽だ。

 蓮華という人は、神様なんだろうか。……聞いたことないけどな……

 しばらくどんどんとノックしていると、ドアが開いた。

「うにゃ? 蓮華さん、まだ寝てたーい」

 眠気眼をこすりながら出てきた女性は、ユウキと似たような年ごろか。

 マジで寝てたのか、パジャマ姿である。


 ……とても、ファンシーなパジャマだ。

 黄色で、飴柄の、フリルがたっぷりあしらっているパジャマ。

 幾度か欠伸を噛み殺した彼女が周りを見る。

 俺と目が合った。


「……しゅごぉ~い、オドがじんじょーじゃなぁ~い」

 やばーいってげらげら笑っている。

 ……この人、ハネズに似てるな……。

 雰囲気というか、見た目? 目の形とかそっくり。


 緩くウェーブのかかった、ミルクチョコレートの髪を腰まで伸ばした彼女は、俺の頭を無遠慮にぐりぐり撫でだす。やめて―。いきなり触らないで―。

 文句を言うと口を開いた瞬間、視界に影がよぎった。


 えっ!?


「アイター!」

 パッシーンッという音共に蓮華さんが悲鳴を上げた。

 見ると、きなこが空を舞っている。


「きゅっぺー! きゅっきゅちゃあああああああん!」


 地面に着地したきなこがきゅっきゅきゅっきゅと鳴いている。

 文句……だろうか。

 ……って! 暴力沙汰!


「すみません! きなこっ! ダメだろう手をだしちゃ!」

「きゅっきゅー! きゅきゅきゅー!!!」

「ダメッ、のっと暴力! 暴力良くない!」

「きゅきゅー!」

 きなこがきゅんきゅん抗議の鳴き声を出すが、俺も折れるわけにはいない事態なので、白熱してしまう。

「まぁまぁ、少年。きなこ?ちゃん? は飼い主を守ろうとしたんだろ? ぼきゃぁ大丈夫だからその辺にしてやってくれ。どっちかといえば、遠慮なしに触ってた私が悪いってのもあるしな。むしろゆるしてくんろ~」

 ……ハネズに似ているが、蓮華さんはハネズより大人らしい。

 ハネズと比べるのも悪い気がしてきたな……。


「おっす! おら蓮華! 翔真君のパートナーで魔女やってる! よろしくな!」

 めっちゃ簡潔に自己紹介をしてくれる。

 しかし、魔女って公言しちゃったよこの人。やっぱハネズ系か。


 この世界で魔女とは、「魔導教の信者ではないが魔術を使う人」という認識である。なので、男性も魔女と名乗る。……魔女っていうか、ウィッチ、のほうが正しいかもしれない。つか、そもそも自称するもんじゃない。蔑称にちかい存在なのである。それを公言するとは……さてはなかなか豪のものだな? この人。


 まぁ、俺は宗教の自由は保障されるべきと思ってるし? 魔導教を信奉しない魔術使いがいてもいいと思ってるけどねー。


「……ハルト君……お前、魔術師じゃないからこいつの言ってるすごさ分かってないと思うけどさ……大体の一般魔術師は魔術の神の補助を受けて魔術を行使してるんだわ。だから、魔女って……いうか、魔術の神の加護を受けずに魔術行使できる存在って、魔術使いとして上澄みも上澄みだからな」

 大体、魔女と言われてるやつ研究職が多いし。

 とかユウキが付け足している。


 ……まぁ、ユウキの知り合いだし、すげえ人なのはわかってたさ。

「それほどじゃないぞー。私は精霊使いだしな」

 何が精霊使いだからそれほどじゃないのか良く分からないが、俺はきなこを抱っこしたまま適当な場所に座った。

 浅桐様がいつの間にか麦茶を用意して持ってきてくれた。


「推薦状かいたやつらに会いに行ってるんだって? 今何人目?」

「お前らで7人目。俺と澪夢抜いてだが。だから後一人」

「へー。誰?」

「アカツキちゃん☆」

 ユウキの一言に浅桐様が飲みかけていた麦茶を拭いた。

「うひゃぁ! きったねぇ!!」

 と絶叫するのはもろにかぶった蓮華さんだった。可哀そうに。

「え、まじ、結局あの人からもぎ取ったの?! つか、あの人に会わせるの!? まじで?!」

「いやいや、神様には会わせまくってるんだから、今更だろう」

「まぁ、俺含め今更といえばそうだけど、いや、アレは違うだろ?!」

 とかゲラゲラ笑いだす浅桐様。

 え、そのアカツキ? って人……そんなヤバイひとなの?


 Ark-八番街-支部、支部長補佐より?

 魔導教の主神で創世神より?

 浅桐神社の主神より?

 異世界の、嵐と慈雨の神より? 堕天使の長より?


 ……こう振り返ると、そうそうたるメンバーと会ってきたんだなぁ……俺。

 

 ハネズとヴィーさんは知らんけど。

 でもこの面々にタメはれるんだから、やっぱすごい人たちだったのだろう。

 

 最後の人は相当えらいらしい。名実ともに。

 誰だろう。

 アカツキ……聞いたことないなぁ……。


「そうそう。ちょっとあっちの予定があってさぁ、アカツキちゃんに会うのは暫く後になりそうなんだわー。忙しい人だから、タイミング合わなくってさ」

「へー……澪夢さんレベルで忙しいんすねぇ……」

「澪夢より忙しいんじゃね? 下手したら」

「忙しいだろうねぇ……最近ログイン全然してないし」

 率直な感想に、ユウキと浅桐様がしみじみと返すが……そんなに忙しい人なの。

「でも、彼女も君を見てみたいって言ってたぜ。やったねぇ、君。めっちゃ好かれてるぜ」

「会ったこともない人だし、どんな人かも知らないから何とも言えないんだが……バアル様的嗜好の持ち主?」

「断じて違うから、不敬だぞ……」

「それ……バアル様に対しても不敬では……?」

 ってか、この感想で不敬? ユウキが不敬とかいう人物なんていたのか!?

 ……相当立場として偉い人らしい。……まさか、Ark支部長か!? いや……支部長に対しての言動で「不敬」という感想が出てくるか……? なら……神様関係?


「ヒント出し過ぎたか? めっちゃ推理してるな……」

「ま、正解してもしなくても、楽しいもんだからなぁ。そういうのって」

「しょーまくーん。蓮華ちゃんはお腹すいたので、何か食べて良ーいー?」

「蓮華はマイペースやなぁ……冷凍庫に焼きおにぎりあるから食べ」

「わーい、れんれん焼きおにぎり大好きぃ」

 

 ……そんな珍獣みたいにみられても困るんだが……。

 蓮華さんはキッチンの奥に消え、ユウキと浅桐様がニマニマと俺を見ている。

 きなこは興味深そうに周囲を見ていた。


「アルカディアじゃ、結構君の話題で持ちきりなんだけどさ。堕ち人なんだって? ど? この世界」

「どう? と申されましても……前世も今世も変わり映えしないですよ? 俺にとっては。まぁ、家庭環境は激変してますけど……」

 いうほど、感想が出るもんでもないんだよなぁ……

 頬を書きつつ答えれば、浅桐は首を傾げた。

「変わり映え……ないか。ま、魔術を使えないならそうなるの……か?」

「そりゃぁ、原始時代……じゃなくても中世とか、文化が全く違う世界に堕ちたら戸惑いやらなにやらあるんでしょうけど……ただ生きるだけならさほどQOLも変わってないですしねぇ……あ、でもサテライトは便利ですね」

「だってよ。良かったなユウキ」

「いやぁ~」

 テレテレと照れだすユウキ。どした? 気持ち悪いな?

 うろんげに見ていると、ユウキが何か察したらしい。

 そして爆弾発言をしてくれた。

「あれ? 知らない? サテライトシステムの開発者俺だぞ」

「なんでさ」

 なんでさ。


「知らない? って、お前が言わなきゃ誰も知らんだろ。秘匿情報だろうが、それ」

「そらそっか」

 半目で突っ込む浅桐様にユウキが手を叩いて頷くが、軽いな!? ユウキ。

 つか、流石創世神。

 こいつの功績、多過ぎね?


 つか、魔術の神だし、やりたい放題してるなぁ……オリ小説の主人公かよ!!

 趣味作家の書く三文小説よりやりたい放題するやつが現実にいるかってんだ。

 ……いるんだよなぁ……目の前に。ほんと、現実は小説より奇なり、だ。


「一応、サテライトメカニックの資格持ってるから、アップブレードの相談なら受けるぞ」

「……いや、さもありなんだけど……いや、あの、さ……」

 もうユウキの無法っぷりには何も言えない。


 つか、サテライトメカニックって資格、あるんだね……国家資格かな……。


「国家資格だぞ☆」

 ウィンクしながら資格証を提示するユウキに「思考読むなよ」と文句を言えば「口に出てた」と返答が来た。畜生。

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