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#67 移動中の雑談こそ、友人との交流って感じで好き

「ユウキと出かけてきますので、お昼のサンドイッチは冷蔵庫に入れてます」

 まぁ、そろそろユウキと出かける時間なので、曾おばあ様に昼食のことを事務報告。曾おばあ様は苦笑を滲ませたまま手を振ってくれる。

「はいはい、わかったわ。ありがとうね」

「きゅ?」

 きなこがご飯の気配を感じたのか俺を見た。

「きなこも、お昼のサンドイッチ用意してるぞー。あとで食べようなぁ」

「きゅっきゅ!」

 曾おばあ様の腕の中から飛び出し、俺の肩に飛びついたきなこは元気よく鳴く。

 やっぱこの重み、落ち着くなぁ。


 曾おばあ様が部屋に戻ったのを確認してからリビングに戻ると、何故かユウキが洗濯物を畳んでいた。

「や、だって、曾お婆さんパニックにさせたの俺だし? 洗濯物をそのままにするのは……ねえ?」

 最後の洗濯物を畳み終えて、母君に声を掛けるユウキ。

 母君は苦笑気味に「ありがとうございます」とお礼を言っていた。

 なんか、母君の方が馴染んでるのウケる。現状を曾おばあ様に見せたら卒倒するな。たぶん。


「じゃあ、行ってきます」

「はい、気を付けてね」

「きゅっきゅー」

「きなこちゃんもいってらっしゃい。ハルト、今晩のご飯は母さんに任せなさい」

「えっ、体大丈夫?」

 身重は心配しすぎるくらいがちょうどいい。

 ……いやほんと……失ってから後悔したって無駄なのだ……。

 母君は俺の心配なんてよそに「多少は動かないとそれこそ体に毒よ」と否定する。

 そして困ったように首を傾げて笑った。

「きなこちゃんの退院祝いに何もしないのも、ね? 大丈夫よ。曾おばあ様もいるからね」

「無理しちゃだめだよ?」

 念を押せば母君は困ったように笑んだ。

 ……無理しそうで怖いなぁ……ほんと、失ってから気づいたって遅いんだよ……?


 † † †


 恒例行事となった高速線での移動。

 今回も中央区かと思えば、予想に反して何と北東区だった。

 

 東北区といえば、浅桐神社が有名である。


 神社と名乗って入るが、主神は神道の神ではなく、この世界固有の神である。

 が、神社と受け入れられている。まぁ、神道も、八百万の神だしね……許される……のかなぁ……。

 軍神であり、刃物の神様。 

 だから剣や刀を使う冒険者はもちろん主婦からの信奉もアツい神様が祭られている。

 ……噂ではめっちゃノリがいいイケメン過ぎる神様なんだよなぁ……

 みんな好きだよね「●●すぎる」ってやつ。


 神というやつは性質的に完成された美しさを持っている。

 こう……『醜女である』とか『醜男である』と評され、そのように形どる神がいないわけでもないんだが……基本的には神という存在は調和のとれた美しさを持った存在なことが多い。

 それが、人間にとって美しいと感じるよう神が顕現しているためか、人間が神を美しいと感じるようにできているかは知らないが。……気になるところではある。鶏が先か、たまごが先か……。

 

「そういえば」

 唐突にユウキが声を掛けてきたので、俺は思考の海から現実へ浮上する。

「おん?」

 駅で買った生絞りオレンジジュースを口に含みながら応えれば、ユウキは心底わからないといった顔で問うてきた。

「お前、妊娠中の母親に対して……とても心配してたよな? なんか、過剰に思えるくらい……なんで?」

「なんでって……身重は心配しすぎるくらいがちょうどいいだろうがよ……」

 呆れた顔で俺は返した。

 お前……何年生きてるんだよ? アレか? 妊娠は病気じゃないからそんな気を使わなくていいだろうって思ってるタイプか? 軽蔑するぞお前……妊娠は病気じゃないからこそより慎重になって気を遣わねばならんのだ。妊婦は薬も使えないんだぞ?

 口に出てたのか、顔に出てたのか、ユウキは半目になって吐息する。

 そして補足といわんばかりに言葉を足してきた。

「いや……前世だって享年14歳だし、お前妊娠したことないだろう? 他人事のはずなのに、やけに親身というか……なんかあったの?」

 そうかぁ……?

 でもまぁ、ユウキが気になるくらいには慎重か……?

 なんで? って……なぁ……。

「前世さぁ……兄貴と俺と、妹で3人兄妹じゃん?」

「うん。まぁ、兄妹+1といってもいいな」

「うるせえよ。だがまぁ、実は3人兄妹+1になる予定だったんだよ」

「ほぅ?」

 初耳だ、といわんばかりの反応。

 前世(あっち)で言ってなかったっけ? ……まぁ、言えんわな。ほぼほぼ恥部だし。

「ただまぁ、末っ子が流産してなぁ……一時荒れに荒れてなぁ……養母が」

「あぁ……」

 納得、と声を挙げるユウキ。

 いろいろ察してくれてうれしいよ……

 ユウキは俺の前世の家には行ったことがない。こいつが病弱だったってのもあるんだが、何より育ての両親が他人を……というか俺関係の人間を家にあげることを許さなかったのだ。

 だが、ある程度ユウキも事情を知ってくれているので……察せるものがあるってやつだ。

「俺は当然だが兄貴や妹にも矛先は向くわ……妹なんてそれまでお姫様扱いされてたのに、いきなりでしょ? ショックで精神病みかけて……」

 あの頃はもう……思い出したくない……

 死んだ目で遠くを見つめる俺を、憐れみのこもった生暖かい目で見つめ「どんまい」というユウキ。

 ドンマイじゃねぇよ……


 養母の気持ちもわからないまでもないんだが……

 それを自分の子供にすら当たるのはどうかと今でも思う。

 そして、逆を言えば、母君は流産してもきっと俺には当たらないだろうって予感があるんだよなぁ。

 その分母君は自分を責めて潰れそうって自信もある。

 だから、極力無理しないで欲しい。妊娠や出産に集中してほしいし、出来るだけ手助けしたいのだ。

 ……でも曾おばあ様もいるから、土曜日は出かけます。あと、日曜も父親を連れ出します。

 ほら、母君も一人の時間欲しいでしょ?


「んまぁ、終わったことは別にいのよ。それより浅桐神社だ。刃物の神様って知識はあったが……冒険者なんだ?」

「ほぼほぼペーパーだがなぁ……。あいつは本業が忙しすぎる」

「……イワナガヒメ様もそうだが……神様みんな副業してるの? 本業で食っていけない感じなの? この世界」

 常日頃気になっていたことを尋ねてみれば、ユウキは目を細めた。

 呆れに、だ。

「……一応言っておくが、神って霞食って存在できるから、存在するだけなら金銭要らないんだぜ」

 スティック状のスナック菓子をもそもそ齧りつついうユウキに説得力がない。

 霞食って生きていけると豪語する神そのものなのに、飯食ってるやんお前。

「ならなんで?」

 菓子が吸い込まれていく口元を見つつ問えば、ユウキはあっけらかんと答える。

 常識を諭すように。……そういう言い方俺きらーい。

「そら、存在するだけだったら暇だからだよ。暇すぎて意味消失とか嫌だろ流石に」

 んなん、常人というか定命の、しかも子供の俺にわかるかい。

 なに常識みたいに言ってんだよ貴様。

「……なんかやだなぁ……現実突きつけられた気分」

 文句言ってもいいが、話の骨を折りそうなので、感想だけ述べておく。

 そんな俺の葛藤を知ってか知らずかカラカラ笑いながらユウキはスティック菓子を指揮棒のように振る。菓子で遊ぶな、行儀悪い。

「刺激の一種だよ。労働もな」

「道楽ですか……いい御身分ですね……」

 不労所得も憧れるが、道楽感覚で労働するのもいいなぁ。

「そら神だからなぁ……でも、これだって、本業の助けになるんだぜ? 人間の目線に合わせられるから、少しは手助けしてやろうって気分になる」

「上から目線だなぁ……」

 神だから当然か、という納得もあるが、言ってるやつがユウキ(元クラスメイト)なのでなんかイラっと来る。俺としてはまだユウキは前世の、ただの人間の、病弱でよく入退院を繰り返していた中学生の高藤優樹であるという認識が抜けないのだ。

 見た目も年齢も性別すら違うというのに。

「超越者だからなぁ……あれだよ。箱庭を上から見るのと、中から見るのは景色が違うだろ? 何もしないってさ、箱庭を上から覗くどころか、それすらしなくなるからね……誰かが助けてって祈っても気づけなくなるんだよ。興味がなくなるから。もちろん、神がみんな生命を愛でるような精神を持ってるやつばっか……って訳でもないし、愛でようだって神それぞれだ。神の価値観で愛でる奴もいれば人を想って愛でる奴もいる。人の破滅を面白おかしく眺めている奴、率先して破滅に導いて爆笑してるやつ……神だって千差万別ある。でも、さ。人に寄り添って人を知っていこうと思ってるやつもいるし、そういうやつはこうやって世に紛れて労働に勤しんでるやつもいっぱいいるって話」

 長々と説明してくれるのはありがたいか、いまいち理解できるようなできないような言い分である。言い訳だな? と思うくらいには、難解だ。

「バアル様やイワナガヒメ様は優しい神様なんだねぇ……」

 とりあえず、思ったことを言えば。

「俺は? 俺は?」

 とユウキが目を輝かせて問うてくる。

 なんだよその反応。

「お前はユウキじゃん」

「お、おう……ありがと」

 率直に言ってから、そういえばこいつ、この世界の最高神なんだよなと思いだす。

 創世神なので、この世界を造った神である。

 ……こいつが? 信じられないといった感想のほうが強いなぁ。


 見た目は若いし……どう見たって二十歳前後だし?

 6歳児の俺からすれば、まぁ……大人ではある。

 ……元クラスメイトで同い年だったくせに。

 言動から、時々長く生きている雰囲気を滲ませることもあるが……

 しかし、神様って実感がない。

 クラスメイトだったという印象が強いせいか? ユウキ自身がそういう雰囲気を出してないせいか?

 ユウキはユウキだから、種族とか関係ないよなぁ……と思ってしまうのも……無理ないよねぇ?


 ユウキは豆鉄砲を喰らった鳩みたいな顔して困惑していた。

 なんでだよ。

 

 こいつ、神であることを隠したいのか、見せびらかしたいのかよくわかんねぇなぁ……。公の場では伏せている節がある割に、俺に対しては「我神ぞ?」的な……おおよそふざけて言ってるようにしか感じないが。それでも公言してくるし。

 何なんだお前。


 ……イワナガヒメも神であることを隠してるわけじゃないし、この世界の神様ってみんなこういう感じなのかな……

 まぁ、ユウキが言うように、神にもそれぞれイデオロギーやアイデンティティーがあるし? 俺が知らないだけといえば、そうなるわけだが……。


 たぶん、俺があってきた神はみんな、()()()()()()()努力している側の神様なんだろうなぁ……

 これからは今以上に敬意をもって接しよう。


 ……できるかな?


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