#65 いろいろ考えないこともないけれど、好きなことしてる今が幸せ
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さわらの西京焼きにほうれん草の白和え、4種のきのことキャベツの炒め煮、きゅうりの浅漬、お麩のすまし汁。
今晩の献立である。
「ああ〜、幸せ〜」
何度も言うが、母君のご飯は絶品だし、正月とかで親戚が集まったときにお出しされる曾おばあ様の料理に不満があるわけでもない。
が、
それはそれとして、前世の染み付いた性根か俺が料理を作るのが好きなので、好きなように作れる今は幸福すら感じるのだ。
あぁ〜しあわせぇ〜
まあ、近隣に海のない-八番街-でどうしてここまで新鮮な魚が売ってるのかとか、-街-同士で交易とかしてないのにどうして……とか、そもそも(魔物のせいで)漁船が海に出るとか不可能なのにどうやって魚が採れるんだとか考えたらきりがないが。
そこらへん考えると-八番街-というか、アルヴェリア王国……ひいてはこの世界の闇が垣間見えそうなので考えないようにしよう。
俺だって好き好んで深淵に首突っ込みたいわけじゃないし、出来れば平和に生きたいのである。
好戦的なバトルジャンキーじゃないですー。
父上用のご飯はラップで包んで、母君と曾おばあ様にご飯の支度が出来たことを知らせる。
ついでに、今日から俺用のエプロンが実装されました。
ネイビーのキッズエプロンにお揃いの三角巾。
俺が幼稚園行ってる間に用意してくれたらしい。わあい。
やっぱエプロンがあると気が引き締まりますなあ。
「そういえば母さん。明日のお昼、生姜焼きにしようと思うんだけど、食べれそう?」
「うんー、多分大丈夫だと思うわ。ありがとうね、ハルト。……ほんと、ここまで出来るとは母さん、知らなかったなあ……」
複雑そうな顔で魚を口にいれる母君。
西京焼きも食べれるみたいで何より。
……んま、今日食えるからって明日食えるか不明なのが妊娠中の怖いところだが。
前世の母親なんて、妹を妊娠してたときは……やばかったなあ……
俺が4歳だったからよく覚えてるよ……
最後水すら受け付けなくって、病院に行って点滴してたし……
イライラの矛先がこっち向くから……うっ……
過去のことは振り返らないようにしよう。うん。
だがしかし、前世の兄貴と妹は、元気にしてるだろうか。
親とは最悪だったが、兄弟仲はさほど悪くなかったのだ。あれで。
大学生の兄貴と、小学2年だった妹……
うーん、懐かしい。
今世では兄は居なかったが、妹か弟はできるらしい。さてはて……
「そう言えば、母さんはなにか食べたいものない?」
ごはんの片づけついでに母君に尋ねた。
「んー……今のところ、何が食べたいってないかなあ……吐きそうな感じもないし……」
母君は頬杖をついたまま答える。
眠気が来てるのか、やけに眠そうに目をしょぼしょぼさせていた。
こういう母君見るの初めてかもぉー。
母君、いつも早起きでシャキッとしてて、主婦の鑑って感じだったからなぁ。
「それはよかった。なにか食べたいものあったら言ってね?」
片付け終わったらフルーツゼリー作るんだぁ。
缶詰ミカンはいっぱい買ってきてもらっているし、牛乳寒天もいいなとは思うが今日はミカンとブドウと、キュウイに白桃を使ったゼリーにするのだ。
カンヅメシロップを使ったさっぱり系のゼリーにする予定である。
これ、前世の妹が妙に好きだったんだよねー!
いや、あいつは果物全般好きだから、タルトも強請るし、フルーツバスケットも強請られたが!!
母君も喜んでくれるといいなぁー。
俺は牛乳は寒天で固める派だが、フルーツゼリーはゼラチンで固めたい派である。
この世界でも、ゼラチン、寒天、アガーが揃ってて重畳だぁ。
……海で漁ができないのに、寒天はどこから捻出してるか謎だが、深く考えないぞ。考えないんだから。
……ま、魚もだが、海産物系はプラントだよね……。
-八番街-の主に地下にある生産プラント。
普通に養殖とかも扱っているが、代替食料や合成食糧を生産しているのもプラントである。
-街-単体で食料自給率をおおよそ100パーセント賄っていながら多種多様な食べ物に舌鼓を打てるのはひとえにこのプラントあってこそである。
プラント様々やでぇ……。
果物を一口より小さい程度に刻み、温めた缶詰シロップにゼラチンを溶かし、器に全部注いで冷やすだけ。フルーツゼリーは簡単なのにおいしいから反則だよな!
ふと思ったので、丸い氷を作るための製氷皿にもフルーツゼリーを注いでおく。
明日のおやつはこれでフルーツポンチだな!
父上が好きなので、我が家では炭酸水が常備されている。
こそっと1本くらい拝借しても怒られんじゃろ。フルーツポンチ! いいよねぇ。
粗熱が取れたら冷蔵庫にイン。あとは明日のお楽しみー!
「あぁ……素敵」
土曜日にゃきなこも帰ってくるし、何作ってやろうかなぁ。
パウンドケーキとかも作っていいかなぁ!?
……料理、たのしー!
俺はルンルンになりながらキッチンから出る。
そろそろ風呂入って寝ないとね! 幼稚園児として夜更かしからのお寝坊は許されんのだ。
「二足の草鞋は大変だにゃぁ~」
傍から聞いたら大変そうには見えないだろうと突っ込まれそうなのは自覚もあるが、俺はうっきうっきに浮かれながら風呂に入る準備に入った。




