#63 同い年に癒しを貰ってるって、ようよう考えればやっぱ変?
しんみりとした空気のまま幼稚園に到着。
「せんせー、おはよーございます!」
「ハルト君おはよう。今日も元気ねー」
「はい! 今日も遊具で遊びます」
「……けが、しないでね……」
ちょーっとヒキ気味な気がするがこれも気のせい。
この程度の遊具で怪我してるようじゃ、冒険者になれんのでなぁ……
でもまぁ、気を付けて遊びます。今骨とか折ったらシャレにならんのだ……。
先生と合流し、曾おばあ様と別れる。
「曾おばあ様、いってきまーす」
「はあい、時間になったら迎えにくるよー」
手を振りながら園を後にする曾おばあ様を見送っていると、ユマ君が近寄ってきた。
「ねね、ハルト君の曾おばあちゃん? すっごく若いね?」
「ハイエルフだからねぇ……」
「いいなぁ、ママも曾ばあばも美人って……羨ましいー」
「えぇー? ユマ君のママもチャーミングだと思うけどなぁ……」
「それ、獣形態のこと言ってる?」
「ナナナナンノコトカナー?」
目を泳がせつつピューピュ―口笛を吹いてすっとぼけてみたが、ユマ君の視線は痛い。
ユマ君の獣形態ももちろん素晴らしいのだが。
ユマ君のお母様の獣形態はグレートピレネーズっぽくって……白くて、ふわふわで、もこもこで……素晴らしいのだ……本当に。
ユマ君も、大人になったら素晴らしい獣形態になるんだろうなぁ……
成人してからモフらせてほしい。
が、きなこがめっちゃ嫉妬しそうだな。やめよう。
「まぁ、とりあえず遊ぼう。かけっこする?」
ユマ君は犬系の獣人なので、かけっこが大好きだ。
俺の提案に今回もユマ君は目を輝かせて「うん!」と頷いてくれた。
さて、今日は何分もつかなぁ……。
……。
「みなさーん、一度集合しましょうー」
先生の声に俺は足を止めた。
ユマ君がぜいぜい言いながら俺の背中にぶつかる。
「おや、大丈夫?」
「……ほんと、君、早いね……僕……結構……、……かけっこ得意……なのに」
「まぁ……ほら、獣人って持久力ないじゃない? 短期決戦タイプっていうか? 50m走なら君に勝てる自信ないけど、ねぇ……」
「褒めてるんだか、貶されてるんだか、わかんない……」
「褒めてるよ?」
いや、獣人の瞬発力は半端ない。
やっぱ人間とは体の構造が違うのかねぇ……。ただ、スタミナはやっぱ人間に分があるのか、長時間走りこむのはやっぱ無理があるんだよね……。
「先生呼んでるから、いこっか」
「……うん」
ぜはーぜは―と息を切らすユマ君の手を引いて先生のいる場所へ向かった。
今日のカリキュラムはなんかなー。
参観に向けての練習かなー。
「……ほんと、元気だねぇ……ハルト君」
「わはは。ありがとう」
そりゃ、冒険者を目指すなら多少は、ね?
歌やら体操やらこなすとあっという間に昼食の時間になっていた。
いやぁ、時間が立つのはあっという間ですな。
机の上でいそいそとお弁当を広げていると、ユマ君がまた話しかけてきてくれる。
「ハルト君のお弁当、今日もおいしそうな匂いしますなー」
「おやユマ君、おめがたかいですなぁー」
といってもユマ君の好きなお肉系は入れてないので、そこまで魅惑的な弁当ではないと思うのだけれども……。
明日のお弁当は生姜焼き弁当にするかなぁ……。
「あれ、いつものお弁当とはなんかちがうね? 曾おばあちゃん作?」
ふたを開けた途端に尋ねてくるユマ君に、俺は「ほんとお目が高い……」と感心してしまった。
いや、弁当の趣がいつもと違うとか、ようみとる……対して魅惑的なお弁当でもないだろうに。
しかし俺作だとは流石に想像できないか。
「いんやぁ? 僕が作った」
「まじ?」
「まじ」
だし巻き卵を口に放り込みつつ首肯すれば、ユマ君がはへー……と感心していた。
……明日のお弁当は生姜焼きにしてみよう。そうしよう。
「すごいなぁ……僕なんて、料理をしようと思う事すらないのに」
「んー……それが普通なんじゃない?」
俺は、俺の前世が異様なだけで。
たぶん、ほんとなら今だって料理をする必要はなく、ただ、俺がやりたいからやってるだけで……
いんげんの胡麻和えを口に入れて天井を見上げているとユマ君が「お弁当に詰めるくらい、やったほうがいいのかなぁ」という声が聞こえた。
「……親に甘えれるなら、甘えた方が良いんじゃない?」
「……その言い振り、甘えれない状況なの? ハルト君のママ優しそうなのに」
「僕の母さんは優しいよぉ? ……でも、妊娠したからねぇ……甘えてばっかもいられない」
「にんしん?」
「弟だか妹だかできるの」
「わっ、おめでとう!」
ぱちぱちと拍手をして祝ってくれるユマ君。キミのその素直な反応、俺、好きよ。
「人間の子供って、一度に一人か二人くらいしか生まれないんでしょ? それでも、兄弟いいよねー」
「ユマ君って犬系だから一度に10人前後生まれるんだっけ」
「うん、僕8人兄弟の真ん中。僕だけこの幼稚園だけど、後の兄弟は保育所とか、別の幼稚園に行ってるよ」
「へー。全員ここでもよさそうなのにね」
「んー。一番上と二番目はとても頭が良いから、しりつ? っての? に行ってお勉強してるんだって。あと下の兄弟は迎えの時間を遅らせたいとかなんとかで保育所いってるって言ってた」
「大変だねぇ……8つ子も」
「ママがハルト君とこ羨ましがってたよ。『できた息子さんがいて羨ましいー』とかなんとか」
「僕はユマ君しか知らないから、なんともだけど。ユマ君だって『できた息子』だよねぇ」
「そーかなぁ……」
「5歳でお弁当詰めるくらいの手伝いしようかなって思う時点ですごいと思うよ?」
「そっかー。でも作ってる子に言われても説得力なーい」
「それは違いない」
自分でも変なこと言ってる自覚はある。
楽しくおしゃべりしながら弁当を完食し、袋にしまう。




