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#60 そういえばきなこの存在を曾おばあ様は知らないんだよな

 ……。

 曾おばあさまがもそもそとご飯を食べだしたので、俺も「いただきます」と手を合わせた。

 

「最近、どう?」

「にゅ?」

 どう、とは? と俺は曾おばあ様を見る。

 曾おばあ様は大変言いづらそうというか、言葉を選んでいるように口の中をもごもごさせている。

 どう……って、言われましても……

 曾おばあ様と最後に会ったの、半年前だからなぁ……。

 あの時も、親戚一同集まってわいわいしてたからこう一対一で話すのって……初めてのことでは?


 あれ。そういえばきなこのこと、曾おばあさまに言ってないな。

 近況のこと聞きたいんだろうし、きなこの話でもするか。


「今入院中なんだけどさ、最近ペット……? 飼っててさ。きなこっていうんだけど」

「へー。ペット? 入院中って、病気なの?」

 興味を示したらしい曾おばあ様。……言っちゃってから気づいたけど、曾おばあ様にきゅっきゅちゃんのこと言って良いのかな……濁しようがないんだが。

 まぁ、いいか。なんかやばかったらユウキに謝ろう。

「うん。魔力不足で倒れちゃったから、魔術師として修業してるっぽい」

「ちょっと待って? なんて?」

 まぁ、そんな反応になるよね。

 ぽかんとした顔で俺を見る曾おばあさまに、どこから説明しようかと苦笑する。

 でも実際は、会ってみないと説明し辛いよなぁ。

「母さんも惚れるくらいかわいいんですよ。きなこ。そして母さんが真っ青になるくらいやばいんですよ。きなこ。今度会ってやってください。今週の土曜に退院するんですよ」

「……しばらくこの家にいるつもりだけど……魔術師になれるペットって……人じゃないわよね?」

「人ではないです。というか、人間をペット扱いするような非常識はちょっと……」

 俺は兎も角、孫にそんな非常識疑惑持たないでくださいよ曾おばあ様。

 みそ汁啜りかけてやめて良かった。啜ってたら大惨事必至だったわ。あぶねえ。


「あ。そう言えば、きなこが師事してるのユウキなんですよね」


 ぶはぁっ!!


 みそ汁を啜っていた曾おばあ様が轟沈した。あぁ……可哀そうに……。

 むせる曾おばあ様に「大丈夫です?」と問えば、曾おばあ様は箸を持った手で静止のポーズをとっている。

 あ、はい。タイムですね? 待ちましょう。

「ユウキって、あのユウキ様?!」

「たぶんそのユウキ」

「……呼び捨て、よくない。さん付け、しよう。せめて」

「えぇ……? 本人から呼び捨てでいいって言われてますし……」

「いや、あの、ハルト? 曾おばあちゃんのこと様付けするわりに、あのお方を呼び捨てって……ちぐはぐすぎるわよ……」

「そうですかねぇ……」

 言われてみればそうかも。

 

 創世神だし、魔術の神だし、そうじゃなくてもトップクラスの魔術師で人気講師で……魔療師で……?


「ユウキって、そこまですごい人なんですか? 僕としてはあんまり実感なくって」

「そりゃ、ハルトは魔術師じゃないもんね……」

 納得と頷く曾おばあ様。

「魔術の基礎理論を確立した人だし、あの方が書いた論文はどれもこれも魔術の常識をぶち破るすごい論文なのよ。そして、あの方の魔術講座は軒並み予約が殺到してて、今10年待ちみたいなのもざらにあるくらい人気講師なのよ」

「へー」

 フットワーク軽いからそこまですげえ人ってイメージが全くない。

 そもそも、前世では元クラスメイトだったし? あれか、同窓会で久々に会ったクラスメイトが大企業の社長やってたみたいな? ……それすげぇことやん……。

「それに、私がフェンファーゲンから亡命するときに、命を救ってくださった恩人なのよね」

「めっちゃくっちゃすごいことしてますやん」

 魔術がどうのこうのより、曾おばあ様の命の恩人の方が衝撃強かった。

 今度会ったらお礼言っとこう。

「そんな方に師事しているから、きなこちゃん? も、きっとすごいんでしょうね……」

「すごいというか……まぁ、見てもらった方が分かりやすいかな……とりあえず実際の修行の一部を母さんが見たら顔真っ青になってました」

「……見たい半分、見たくない気持ちもあるんだけど……」

「僕には魔術知識ないですから、どうすごいのかまだ良く分かってないんですけどねぇ……魔術知識ないどころか、まともな魔術も見たことないですし」

「……魔術大家のアーバイン家……ではあるけれど、今の私たちに魔術師である意味はないからねぇ……なる意思がないなら、そもそも触れない方が身のためって業界でもあるし?」

「……きなこが魔術師として戻ってくるんですけど、僕も知っといたほうがいいですかね?」

「とはいうけど、ハルトって、魔力……といよりオドは膨大にあるけど、マナを取り込めない体質でしょ? 魔術師になれないから、そのままでもいいんじゃない?」

 オドとかマナとか俺よくわかんない。

 アンニュイな顔で麦茶を飲んでいると、曾おばあ様のサテライトが着信を教えた。

 チャットらしい。

 曾おばあ様のサテライトはデフォルメした天使、って感じの姿をしている。

 金髪で、白磁の肌……目は青いがいつも閉じている。

 背中には1対の白い羽。

 

 今のところ、俺のサテライトはシンボル型で図形を組み合わせたような2次元的な見た目をしているが、冒険者をやるようになったらサテライトもアビリティーサテライトに変更することになるし……今から見た目を考えた方がいいのかな……ネトゲしたいし。

 天使型もかわいいけど、俺には少し()()()()に感じる。

 

 チャットの内容を一瞥し、ふんふんと頷いて。曾おばあ様が俺を見た。

「受診終わったって、迎えに行きましょうか」


 † † †



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