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#54.5-3 ???

「”勇者”くんを恐れるのは良いけど、ヴィーは恐れなくていいのかい? アッ君?」

「……?」

 ハネズの声に、”彼”は首を傾げた。

 それから数拍、みるみる顔が青ざめる。

「……いや、ほんと、申し訳ないと思ってるんですよ……? そうだね”勇者”より殺されても文句言えない……けど、この体はハルトくんのものなので、できれば除霊とか、エクソシズム的な対処でお願いしたいところなんですが……いかがですかね……?」

 プルプルと小鹿のように震え命乞い(?)をする”彼”にヴィーは満面の笑みを浮かべた。

「私は赦しましょう」

 聖母もかくやな笑みを浮かべるヴィーに、ホッと安堵する”彼”。

「だが、こいつは赦してくれますかね?」

 しかし、ヴィーが笑みのまま身の丈もある十字架を取り出した瞬間、また”彼”は青ざめプルプルと震えだした。

「お覚悟!」

「ぎゃー!」

 構えた十字架を振り上げたヴィーに、悲鳴を上げる”彼”だったが、衝撃はなく、存外優しい一撃が脳天へぽこんと見舞われた。

「……あ?」

「貴方って、そんな声でるんですねぇ……」

 感心したような声を出すヴィーに、”彼”は目を瞬くしかない。

「いやいや、殺された恨みって、別に私、貴方に殺されてませんし? どうして魔王の手下から守ってくれなかったの! なんて、言える義理ないですって。それ、貴方に言ったら意味不明の逆恨みじゃぁないですか。というか、魔王ですら被害者ですし、悪いのは国王って知ってるんですよ? 私。じゃぁ、貴方に恨みなんて持つはずないじゃないですかぁ……」

 バカを見る目で、生暖かい微笑みを浮かべ見降ろすヴィーに、冷や汗を浮かべたまま苦笑を零した。

「……なんというか、私が説明すること、あるかね……?」

「いえいえ、いっぱいありますとも。なんであんなまだるっこしいことしたんだ、とか。私たちのことどう思ってたんだー、とか。動機とか、動機とか、動機とか。そりゃ、途中退場してからは私とハネズは外野から見てましたからね? 事情はある程度知ってますよ? けど、ねぇ……あなた自身のことは私はなーんにも知らないんです。仮面被って嘘つかれてたみたいですしねー」

「や、だって……あの世界で不老不死なんか、魔王関係しかいないじゃないですか、ヴィーさん。そんな中で、『不老不死なんで見た目変わりません、数千年生きてます』なんて言ったら最悪魔王だと勘違いされるじゃぁないですか。……いえ、実質魔王ですけどね? なりましたけどね? 結局」

「あ、まぁ……それはそう。あの時聞いてたら『魔王関連だな!』ってなってた自身しかないわ……というか、アイリーンは多分ハネズさん見ても『魔王! 覚悟!』とか言ってのけるよ」

「……アイリ、いうて正義感あったもんなぁ……だからこそ勇者パーティーに加わったわけだし」

「そうそう。……でも、そこまで信頼無かった? 最後の方とか、結構仲良くできたと思ったんだけどねぇ……」

 少し寂しさ混じりに眉を下げるハネズ。

 それに”彼”は肩を落とすしかない。

「……私は、ああするしか方法はないと思ってたんだ。そして、あのまま裁かれて死にたかった。生きることに疲れてたってのもあるが……生きる価値などないとおもってたんだ。あとな、あの世界がそこまで末期だと、私は知らなかった。魔王を倒して、あの国王がいなくなった世界は、穏やかにでも癒えて立て直せると思ってた。だから、仲間たちには下手に重荷になりたくなかったんだ。ただの裏切り者として過去に屠ってほしかった。……今更言い訳だけどね」

 自虐的に吐露して笑う”彼”に、ヴィーとハネズは眉を下げる。

 ”彼”としては嗤って欲しかったが、笑える状況でもないことも理解できている。

「ただの勇者パーティーで、居させられなくて悪かったね」

「何も言えないですよ、それ」

「”勇者”くんにもよろしく言っておいてくれ。私は……もう出てくるつもりはないんだ。私は、もうあの時死んでいるのだし、この人生はハルト君のものだから」 

「……ん。ハネズさんとヴィーは納得した。理解もしたから赦そう。でも、”勇者”くんが望むなら出て来いよ? それは贖罪だ」

「……ハルト君を害しない方法が思いつかないんだが……贖罪だと言われたら文句はいえないな。……まぁ、善処しよう」

「カタいねぇ……万一”勇者”くんが襲い掛かってきたら、フォローしてやろう」

「すまない。助かる」

 口約束を交わし、”彼”は時計を見た。

 それから眉を下げて困ったように笑った。

「ハルト君、この後きなことデートするんだぁとか言っていたが……時間を潰してしまったな……」

「あの魔物にそんなにぞっこんなんねぇ……」

「ハルト君の前できなこちゃん……というか、きゅっきゅちゃん達のこと魔物扱いしない方が良いぞ。かなりキレるから」

「わぁ、5歳児がキレても別にいたくないけど、ユウキの友達を怒らせるのはよくねえな」

「……一応私の別人格なんだが……」

「や、そこはほら。裏切った負い目でも負っとけよ」

「何も言えないな……」

「にゃはは。ところでアッ君」

「なんだい、ハネズ」

「改めて聞くけど、この世界はどうだい?」

 暖かく微笑むハネズに、”彼”は苦笑交じりに笑った。

「最高な世界だよ。ありがとな」

「その言葉が聞きたかった。創世神にも言っといて進ぜよう」

「さて、そろそろ眠るわ。ヴィー、ハネズ、これで最期だと思うけど……すまなかったね、本当に。それでも、私は君たちを仲間だと思ってたよ」

 一息にまくしたて、逃げるように”彼”は消えた。

 ハルトの奥底に潜っていったのだ。

「もう出る気はない、かぁ……」

 意識のないハルトの体が床に倒れる。

 それを見守りながらハネズはヴィーを見た。

 ヴィーは手近にあったクッションをハルトの頭の下に差し込んで枕にし、タオルケットを取りに立ち上がる。

「まあ、”勇者”くん次第でしょう? まだ生まれてないんですっけ」

「そだねぇ。日本に転生してたのは補足してたんだけど、見つけた時にゃ病人でさぁ。余命宣告受けてた」

「あら」

「アッ君……じゃねぇな。ハルト君の前世? の家庭よりは健全……だったけど母子家庭でさぁ、碌な医療受けれなかったっぽくて、あっさり死んじゃったから、こっちに引き入れたんだけど……さぁ」

「? 何か問題でも?」

「……いや、”勇者”くん、”勇者”くんって言ってたけどさ、女の子なんだよね」

「まぁ」

 驚き口元を手で覆うヴィー。

 ヴィー的には男より女のほうが嬉しいのだろう。声には喜色しかとれない。

「……たぶん、こっちでも女の子として産まれると思う。魂の形がしっかりしたままだったから」

「……記憶も問題なく持ってるでしょうね。それなら」

「だろうね」

 肯定し、ハネズは笑う。

「アッ君、元気そうだったねぇ」

 露骨に話題を変えるハネズに、ヴィーは苦笑で応えた。

 まだこちらに生まれてない”勇者”の話はあまりしてもややこしいだけなのだ。

 特に力ある真祖のハネズが話す言葉は言霊として大いなる流れにいる”勇者”の魂を縛ってしまう可能性もある。

「アレを元気といえるの、流石ですよ」

「最悪ヴィーを見た瞬間自害して意味消失する可能性すら考えてたんだから」

「ハネズ、酷いですよ。私そこまで化け物じゃないですよ?」

「……姿が違うハネズさんは兎も角、ヴィーはあの頃とほぼ変わらないからねぇ……トラウマがフラッシュバックして自己崩壊するかも? とか心配しちゃうよ」

「……まぁ、否定できませんけど……思うなら一言言ってくれてもいいじゃないですか。服装くらい変えますよ。それなら」

「……ヴィーがそこに思い至らなかったの、意外だったんだけど」

 ふざけるのも忘れて真剣な面持ちで言うハネズに、ヴィーは息を詰まらせた。

「うっ……いえ……あの……」

 言葉に詰まり、どんどん顔が赤くなる。

 そして数拍、とうとうぶちまけた。

「そうですよ! アッ君に会えるって浮かれてました! うーかーれーてーまーしーたー! だって、あの日から全然、会えなかったんですから! そりゃあ、うれしいじゃないですかぁ!」

「ま、だろうと思ったよ。……さーて、ユウキに終わったって連絡するかなぁー」

「お願いします。んー……思ったより……話せましたねぇ……」

 そういって背伸びをするヴィーに対して、ハネズは笑った。

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