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#5 とんでもないことを聞いた……きがする。

 

 落ち着いてから、俺は二人に今までのことを話した。


 コンビニで立ち読みしてたら車が突っ込んできて巻き込まれて死んだこと。

 奇天烈な姿をした女性の手でご神木の洞に落とされ、この世界に転生したこと。

 白い場所でタカトーの肉体と会ったこと。少し話したこと。


 この世界に生まれて、母君や父上に愛されて育ったこと。でも母君が俺のことを恐れていること。


「……」

「……えっと……ハルト? ハルト君?」

 途中から、ユウキが何かしどろもどろしていた。

 が、まぁ、関係ないな。俺の訴えをとりあえずは聞いてもらおう。

「いや、母君に転生者だってことは俺は言ってない。でも、俺は母君に迷惑かけたくなかったから。出来るだけ無理させたくなかったから……それが、普通の赤ちゃんとは乖離したんだろうな。母君は、俺が《《違うものだって》》認識しちゃったんだ……と思う。いや、母君はちゃんと俺を愛してくれてるよ。子どもとして扱ってくれてる。父上もまあ仕事が大変らしくってあまり家に帰ってこないけど……でも休みの日は遊んでくれるし、いろいろ話すことだって……だから、俺は不満なんて無いんだよ。だから……」

「ハルトさん?」

「俺を、施設に保護するとか、そういうのは……ちょっと、嫌だな……」

 後半は口をモゴモゴさせてしまう。なんというか、言葉にしずらい。

 でも多分、そういうことなんだろうな、と俺は内心覚悟していた。

 この二人はきっと、俺を孤児院だかそういうところに斡旋するために来たのだと。


「あの、さ。さっきも言ったが俺たちはお前と話に来た。俺はお前が墜ち人……転生者だって知ってたし……だから、俺が来たんだ。説明するために」

 困ったと、表情に浮かべてユウキが後頭部を掻く。目線が泳ぎ、時折男性を見た。

 男性も無表情ながら困惑……というか戸惑っている様子がある。

「確かに、私は万が一の為にそういう施設を紹介する目的でも来ていますが……健全な家庭の家族を無理やり引き裂く意図は全くありません。ただ、墜ち人とその家族はその……堕ち人の記憶が為に関係が拗れることもあるので……その場合は、こう……保護する必要がある場合もありますから……」

 少し気まずそうに二人が話す。

 そこに敵意はない。二人とも俺を案じてくれているようだった。

「俺も……なんかごめん」

 気を使わせている、と思った。

 なんだか申し訳なく感じる。

「あの、さ。俺もなんだが、コイツももとは墜ち人なんだわ」

「へ?」

 ユウキが男性を指さして言った言葉が理解できなかった。意味はわかるんだが、意図がわからない。


「この場にいるのは、みんな同郷ってこと。で、まあ、この−街−の様子は、みた? 中央区とか」

 ユウキが問う。

 アルヴェリア王国−8番街−南区。

 俺が住んでいる場所の名前。


 アルヴェリア王国はかなりでかい国だ。

 この世界で一番規模がでかい。

 が、−街−はポツポツと12個、この星に点在している。

 まあ、−街−一つとっても前世では一国くらいの規模があるが。

 例えば−8番街−は半径150キロのドームが9個配置された巨大な−街−なのだ。


 まあ、その他の−街−も−8番街−と似た規模である。

 後は世界樹の中にある国……フェンファーゲン連邦国と、地下帝国であるペクダ・バーザド合衆国。

 この世界にはアルヴェリア王国を含め3国しか無い。


 これは前暦に起こった【大戦】と、その後から続く魔物との戦いのせいらしいが……5歳の俺にはよくわからない。


 父上も母君も「学校で習うから」と詳しくは教えてくれなかった。

 まあ、幼稚園児である俺は遊びながら学ぶのが主で、勉強は小学校からでいいと両親は思っているようだった。

 もちろん、聞けばいろいろ教えてくれるし、図書館や本屋さんにも連れて行ってくれる。

 欲しい本は買ってくれたり、図書館で借りてくれもする。が、もっと学ぶことがあるだろうと思っているようだった。


 でも、なあ……


 俺には、橘悠人だった14年間がある。

 この体は生をうけて5年の付き合いだ。体の動かし方などは1から学んでいるところではあるし、この国の言語習得という厄介託すもある。が、アドバンテージはあるのだ。前世という14年間が。


 こう、俺は元来知りたがりなのだ。

 しかし両親は俺に子供らしさを求めている節がある。

 がり勉気味よりは外で遊んでほしいし、図書館よりは公園で遊んでほしい。

 そんな感じ? 

 別に、俺も遊ぶことが嫌いなわけじゃないのだが……

 気になることをとりあえず置いて遊ぶことはできないタチというか……なんだか、歯に何か挟まっているような気持ち悪さを感じてしまうのである。

 両親の気持ちもわからんでもないので、結局我慢してストレスを抱えるはめになるんだがね……トホホ。


「中央区はいったことあるよ。ってか、サテライトと契約するのに中央区のArkに行かなきゃだめじゃん」

「それ、生まれてすぐだろ……?」

「その後も何度か行ってる」


 同じ−街−ではあるが、中央区と南区は日本で言う地方が違う位には離れている。

 日本で例えるなら……大阪府から静岡県くらいには離れている。まあ、そうそう行ける場所でもないのだ。


「んまあ、−8番街−って、妙に日本くさいだろ? その原因ってまあ、日本からの墜ち人がこの−街−に堕ちてきやすかったからってのもあるんだが」

「あるんだが?」

「まあ、原因の6割はこいつのせいだ」

 と、ユウキは男性を指した。

 どゆこと? と、首を傾げると男性が優雅にお辞儀した。

「自己紹介が遅れました。私、Ark−8番街−支部支部長補の咬薙かんなぎ澪夢と申します」


 母君。

 母君は知っておられたのですか。

 目の前に座るこの男が、この−街−のNO2だと。

 この−8番街−の王だと……。


 平伏しよう。そうしよう。


「顔を……ていうか、体をあげてくださいな。ほら、椅子に座って……」

 半分困惑気味に澪夢さんが俺を立たせて椅子に座ることを勧めてくる。

「なかなか話が進まんな……」

 呆れた顔でユウキが言う。誰のせいだ、誰の。

「……そんなお偉いさんと一緒にいるお前も相当なんだろ……? オレハシッテルンダ」

 というかコイツもタカトーだというなら、世界の外? にいるタカトーと同質のなにか、ということになるから、つまりは神様とかそういうのなのだろう。やっぱ平伏するか。


「平伏するなって。俺はただの魔術講師だよ。一応魔術療師……魔術を使う医者みたいなもんでもあるけど」

「それだけじゃないでしょー? だって、あのタカトーは神様っぽいことしてるじゃん。こっちのタカトーだってやばい存在なんだーオレハシッテルンダア」

 嘯くが、まあ、実際俺は何も知らんが。

 が、ユウキと澪夢は複雑そうな顔をした。

「あっちの俺……システムの俺はなんか言ってた……?」

「んぇ? 俺の知ってるタカトーではあるけど、タカトーとは別人だって言ってたかな。体はタカトーだが人格が違うとかなんとか」

「……あいつ、人格を形成したのか……」

 ぽつりとユウキが呟いた。

 その口ぶり、まるで元はなかったかのような……?

「そっかそか。他には?」

 急に笑顔で問うて来るユウキ。

 その美人顔に輝かんばかりの笑顔! やめて!

 腰砕けちゃう! 蕩けちゃう!

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