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#53 知らないことに興味がないわけじゃないんだけどさぁ

 電車に揺られながらハタと気づいた。

 そういえば、今日会う人4人って言ってたな。


「なぁ、ユウキ。今日会う人4人じゃなかった? 俺2人しか聞いてないぞ」

「あぁ……まぁ、2人は有名どころだが、もう2人は前者と比べたらマイナーだからなぁ……一応いうけど、たぶんハルト君知らんと思うぞ? 武器商人と付与師(エンチャンター)だよ」

「えんちゃんたー?」

 えんちゃんたー……エンチャンター……付与師エンチャンターか!


 前世にはなかった職業の一つだよな。エンチャンター。

 武器や防具に魔術刻印や神の祝福を付与する職業である。

 大体鍛冶師、研磨師、装飾師、付与師と4人一組で武器屋や防具屋に雇われているイメージ。

 そうかー。付与師かぁ……そして武器商人?

 武器商人は、前世にもいた……あの武器商人である。まぁ、日本に暮らす一般ピーポーな俺にはあまり関係ない職業だったけどね。

 

 武器や防具を生産している者から買い取り、武器屋や防具屋などに降ろしている。

 そういう仲介業者的な職業だ。


 美女な武器商人……ちょっと気になるー。どういう系美女だろ? 

 俺は某世界蛇も大好きな中学男子だったのだ。ああいう美女は大好きだ。

 

「武器商人のハネズと、付与師のヴィー。聞いたことないっしょ」

「へー……有名?」

「まぁ、質のいい防具や武器を卸してるって有名だがな?」

「ふーん?」

「興味なさそうねぇ……」

 そういうユウキもさして興味があるわけではないようで、編んだみつあみを弄っている。枝毛でも探してんのかね?

 しっかし、ユウキの髪って綺麗だなぁ……

 月の光を紡いだような、青味を帯びた銀色の髪って、反則だよなぁ……絶対人間にゃだせない髪色。羨ましくはないが、見る分には良いよねぇ……。

 枝毛探してるのかと思ったが、絶対ないよね。枝毛。どんな手入れしてるんだ……じゃ、なくて、だな。えっとなんだっけ、武器商人の話だっけ?

「まぁ、俺にゃまだ関係ない職業だしねぇ……」

「関係ない……ねぇ、ステゴロで冒険者する気かい?」

「まだ、っていったぞー? でもまぁ、推薦人を全員見て、でも蹴る可能性だって、ないとは限らねーなぁ?」

「あー、ひっどいんだぁ。推薦状もらうのもだが、今回会わせるのだって結構苦労してんだぞー。俺はなぁー」

 言葉とは裏腹に、口調や態度はさほど傷ついた様子がうかがえない。

 まぁ、苦労はあったんだろうけれども、どうも俺はこいつに対してなんでも卒なくこなすイメージを抱きがちというか。苦労しているイメージが全く持てないのだ。

 うーん……こういう万能な超越者をいいように使ってる感は、なんというか……愉悦感と背徳感のないまぜな感情が……若干の申し訳なさもあるよね。若干だけど。

 ……俺はずいぶん図々しくなったようだ。……いや、前世もこいつに対してはだいぶ図々しかったか……素か。これが俺の本性か……

「……大丈夫?」

 どんどん自省で落ち込んでいく俺を心配してユウキが俺の顔を覗き込んでくる。

 ほんと、ずるい顔してるわ……惚れるじゃんか……。

「大丈夫。いろいろ考えてただけ」


 そういえば。

 俺たちが乗っている電車は、在来線ではなく新幹線……というか、高速線だったりする。

 流石に、南区から中央区は遠いからねぇ……在来線で行くととても時間がかかる。

 ので、高速線でビューンと飛ばしていくのです。運賃はユウキ持ちだぜ。やったぜ。


 前世で新幹線どころか特急にも乗ったことないので、比較対象がないのだが、長時間座ってても苦痛にならない座席って素晴らしいなぁ。

 窓から見える景色は……区間を結ぶパイプ内なのであまり面白くない。

 ものすごい勢いで流れていく景色から、かなりの速度で移動中なのはわかるけど。

 

 いいねぇ……わくわくする。

 と、同時に眠くなってきた……やっぱ電車は……睡魔を呼ぶ……ねぇ……すやぁ。


 ……。


 はっ……!?


 気づいたら寝てた。そして駅についていた。

「よーく、お休みしてましたねぇ」

 ニヤニヤと笑うユウキがいる。

 ムッカ―。ちょっとその顔ムカつきましてよ。

「きゅっきゅー」

 同じ表情できなこが笑う。それをリュックの窓越しに見た俺はしょぼーんと顔を歪ませた。たぶん(´-ω-`)みたいな顔になってる自覚がある。

 ……きなこにそんな顔されたら俺はもう凹むしかないね。

 俺の表情にきなこが慌てだした。

「きゅきゅっ!? きゅっきゅー?!」

 リュックの中でもごもごうごいているが、ごめん。だしてやれんのだ。

「きゅきゅーん……」

 泣きそうな声で鳴くきなこ。

 すまんな、そんな声で泣かれても、俺は出すことも出来んのだ。


 高速線から駅に降りると、解放感がすごい。

 背筋を伸ばしつつ高速線が駅を去っていくのを見送る。

 いつになっても電車が走る様は心躍るものがある……って、俺まだ6歳だわ。

 ついつい前世も年齢としてカウントしてしまってるが、見た目はばっちり6歳児である。6歳だから電車にテンション爆上げでも可笑しくないね! みんなやってるから大丈夫! いえーい! 電車たのちい!


 駅構内は、前世のそれとあまり変わらない印象がある。

 基本的には島式ホームで、転落防止柵があり、待合室や何か所かにベンチが設置されている。改札は別の階にあるのでエレベータ―や階段、エスカレーターも設置されているので、結構大きな駅って印象。まぁ、-八番街-の駅はどこの駅もこんなんらしいけど。


 駅から出ると中央区の、大都会が迎えてくれる。

 前世で言うところの東京都……23区だもんなぁ……ここ。

 

 そういえば。

 -八番街-中央区での交通の要は電車だが、その他の区は基本車社会だ。

 ……うん。中央区は電車……というか地下鉄が毛細血管張りに張り巡らされている。ので、南区では高速線の駅までバスだったが、中央区での移動は地下鉄がメインになる。

 だから、俺もこれから地下鉄の駅に移動するんだが……


 ……

 

「どした?」

「あ、いや……前回……つか先週も思ってたんだがな……」 

 

 ちょっと、言い淀む。

 なんだ、その……恥ずかしいな。

 しかし、ユウキは目を瞬いて俺を覗き込んだ。

「なあに?」

 うわ、その言い方いらつく。

 半目で吐息を零し、俺は吐き出した。

「前世だっていうほど都会に行ったことなかったんだが、6歳でこんな大都会に、何回も行って大丈夫なんかね」

「大丈夫って、なにさ……冒険者になったら結構気軽に来るようになるぜ? 南区にもギルドはあるけどさ……そもそも冒険者なら武器防具はこだわりたいし、メンテナンスにもちょこちょこ来ないとだめだし―? 南区にも腕利きいるなら別にいいけどー……」

「腕利きは存じあげませんなぁ……」

 そもそも防具屋とか攻撃屋の場所すらご存知ありません。

 

 あー……今から行くの武器商人の店だっけ。ユウキ的にはここ使えってことか。

 なるほど?

 外堀埋められてんなぁ……。

 ほーんと、着々と俺が冒険者になるよう仕向けられてる。

 

 いや、悪かない。悪くはないんだけどねー?

 でも急ぎ過ぎでは? 俺6歳だぜ6歳だぜ?

 通常冒険者は成年に達しないとできない職業である。

 ……というか、未成年労働は違法なんよなぁ……この国。

 一応アルバイトとか、例外もないこたないんだけど……冒険者にアルバイトはないからなー……


 この国の成年は20歳なので順当に行けば俺が冒険者になれるのは15年後になるはずなんだが……まぁ、推薦状やら適正検査やらをクリアすれば未成年でもできるらしいけど、こう……そこまでしてユウキが俺を冒険者にしたい理由がよくわからん……俺自身、成人してからでいいかなーって思ってるから余計に。


 ……まぁ、俺としての結論は、『踊らされるのも一興かなー』で決着ついてるからねぇ……疑って気苦労を重ねるのも、非効率的だよね? 踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損、損、ってな?


 なんて考えていると目的地に着いたらしい。

 バアル様とルシファー様に、武器商人のハネズと、付与師のヴィーかぁ…… 

 

 ハネズ?


 ハネズって言ったか!?


 ハネズって、俺をこの世界に落としてくれちゃったあのアバズレか!!! いや、あのまま地縛霊になってても困るんだが!!

 ……一発殴るって決めてんだ……今日が年貢の納め時だぁああああああ


「……ハルト? 大丈夫?」

「積年の恨みを今思い出した」

「お、おう……おう……?」

 戸惑い気味に首を傾げるユウキに、俺はほの暗い笑みを浮かべた。

「俺をこの世界に堕としたこたぁ感謝してますがね? 説明もなくタックルで堕としたのは赦しちゃぁいないんですよ」

「あぁ……お前、ハネズに連れられたクチかぁ……珍しいなぁ……ま、さもありなんか」

 感慨深そうに呟くユウキに俺は首を傾げるしかない。

 そんな俺に苦笑を返して、ユウキは武器屋の扉を開けた。

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