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#52 驚愕と崇拝、そして一握りの恐怖をスパイスに

 毎週土曜が楽しみすぎる。

 推薦人に会いに行こうって企画だが、俺的には本題そっちのけできなことデートってのが嬉しすぎてね。うふふ。

 前回はろくにデートできなかったからなぁ……今度こそきなことデートするんだ。


 しっかし、だ。ユウキの奢りで毎回美味しいもの食べれるのもグッド。

 素晴らしい。

 今回はどこに連れてってくれるのかなー。否、今回は希望を出すのだ。

 俺にはいきたいところがある!


 ……楽しみだなー。


 わくわくしながら朝ご飯を食べて、支度をし終わり、玄関で待っていると、いつものごとく虚空からきなこがペッと吐き出され、地面に着地。

 Y字ポーズでキメた。うん。一万点。


 数拍ポーズを決めていたきなこだけど、俺の存在に気づいて近寄ってくる。


「きゅっきゅちゃん!」

「きなこー、おかえりぃ~」


 腕の中に飛び込んできたきなこが俺の胸に顔を押し付けてグリグリグリグリグリグリ……

 今日もきなこは可愛いでなあ……


 きなこを愛でているとユウキも虚空から飛び出してきた。


「おいすー」

「うぃっすー」


 右手を軽く上げて挨拶するユウキに俺も軽く手を上げて応える。


「本日はー。なんと、一気に4人紹介します」

 唐突な発表だなぁ……

「多いねえ」

「一緒の職場にいるからな……喜べ。美女美女美女そして美女だ」

「へー」

「興味なさそうだね?」

「だって、ねえ?」


 片頬をぽりぽりと掻きながら俺は苦笑した。

 興味ない……ワケジャナイヨ……? 俺は確かにウェブ小説が大好きで、二次創作というジャンルもまぁまぁお世話になっていたが……俺の性嗜好は至ってノーマルである。異性に興味がないわけじゃない……ん、だが……


 いや、うれしいよ? 美女と会えるの。しかも一人じゃなくて複数。

 人並みには嬉しいけど。

 あちらからしたら俺は塵芥と同じで。居ても居なくても同じ存在でしょうしねえ……寧ろ仕事場に押し掛けるんだし、迷惑では?

 そんな状況でそう諸手あげて喜んでも、ねえ?


「なんか覚めてんねー。前世でなんかあった?」

「寧ろなんもないまま死んだからでは?」

 半目で呻けば、生暖かい目でユウキが見てくる。

 いやぁ……そんな目で見られると……

「お気の毒に……俺は澪夢がいるからアレだけど、君にも今世はいい目みれるんじゃないかな。夢を捨てないで」

 なんでそんな憐れみの目で見やがりますかねえ……


 そこまで興味ねえからまじでありがた迷惑だよ。

 つか、その目やめろ。いたたまれなくなる。


 まぁ、ぶっちゃけ、目の前にいる絶世の美女が「美女だ」というのだから、期待してないわけじゃないんだが……

 こう、母君といい、ユウキといい……俺の目は一般と比べるとどうしても肥えていると言わざるを得ない。過度な期待も……それはそれで怖いのである。


 ……きなこチャージ!(という名の現実逃避!)

 そう頭で嗜好しつつきなこの腹部辺りに顔を埋める。

 極短毛で、ほどほどな温かみが柔らかく俺の顔を迎えいれてくれる。

 おっほー……これは効きますなぁ……


 喫きなこ、きなこ吸いを堪能して顔を上げれば、ユウキが可哀そうなものを見る目で俺を見ていた。

 やらんぞ。これは俺の家族なんだから。


「そいえば、推薦状って、誰がくれたんだ? 名前だけでも教えてよ」

 前回は、聞いたところで俺の知る人ではないだろうと思っていたので聞いていなかったが、ぐるみ屋の店長から推薦状をもぎ取ったなんて知ったら、他のメンツも気になってしまう。

 それにユウキはいたずらっぽく笑った。

「知りたい?」

「知りたい、知りたーい」

「でも教えてあげませーん!」

「えー? ケチ―!」


「んまぁ、それは冗談として。先週会ったのはネイト・グライデシナな。で、今回はなんと、お前も知ってるはずの有名人だぜ」

「え、だれだれ?」

「バアルとルシファー」


 ぶっはっ?!

 口の中の唾液全部噴きだした。

 ばあ……っ!? るし……っ!?


「ばっ……ばあっ!? るし……るし……?!」

「ま、そうなるよな」

 アンニュイな顔でうんうん頷かんでもろて……つか、その2人から見ず知らずの子供への推薦状もぎ取ってくるってどんな交友関係してんだ?!

「いや、お前の交友関係……って、創世神なら神友もいるか」

「ふふん。俺の交友関係を舐めてもらっちゃ困るな。これでもこの世界トップの神様なのさー」

 からからと朗らかな笑みを浮かべて俺の肩を叩くユウキ。

 まぁ、まかり間違っても創世神だもんなぁ……神友だっているか……。

 に、しても……


 バアルって、たぶんバアル様だよな? バアルゼブル、気高き主……

 カナンで信仰されていた嵐と慈雨の神……美人らしいけど、どんな感じの美女かな……っていうか、バアル様って女神だっか……? どっかの神話では最高神の息子とかいわれてなかったっけ……? まぁ、目の前に女装癖な創世神もいるし、そういう趣味だとか、なんかの不具合でそうなった可能性もある……? 

 まぁ、いいか。伝奇や神話なんて語られる場所や文化でいくらでも捻じ曲がるもんである。みんな都合のいいことは後世に残したいもんね。逆に不都合なことにゃ蓋をしたい。


 つか、バアル様自体がそういうもののある意味被害者、象徴そのものか。

 蠅のバアル、蠅の王……嘲りをもってそう呼ばれたことだって……


 そしてルシファー様。

 こちらは神ではなく堕天使として有名だけど……

 ルシフェルとサタン、バアルゼブルとベルゼブブ。

 厄ネタコンビじゃねえか。

 つか、ルシファー様も男性じゃ……? まぁ、今更か。


 俺はどうも性別というものにとらわれ過ぎているような……いかんな……前世もだがこっちだって性的嗜好、性自認の多様性の時代である。

 つか、前世よりも人間以外の種族が多いこの世界は、性の多様性が激しい。

 片方固定の者ももちろんいるが決してマジョリティーだと断言できるものでもなく。

 両方ついてたり、両方ないもの、任意で切り替えられるもの、環境で変化するもの様々な性が存在し、受容されている。

 まぁ、衝突もあるし、根深い問題が存在しないわけでもない、けどね。


 それでも、この世界は、この国は。

 他種族を受け入れ、多様な文化を、性を、受容し認め、共同体として成り立っている。それはきっと、素晴らしいことだ。


「あ。バアルにベルセブブって言ったり、ルシファーにサタンっていうなよ」

 ふと思い出した、といった体でユウキが口にした言葉に俺は目を瞬いた。

 まぁ……そら、そうか……?

「おん、そら、蔑称で呼ばれたらキレるよな」

 そう答えれば、ユウキは「なんもわかってねぇなぁ……」といった顔で俺を見つつ嘆息する。え、違うのか……?

「……ハルト、ベルセブブはともかく、サタンを蔑称っていうなよ……サタンが泣くぞ……まぁ、ベルちゃんもか……貶す言い方だから、じゃねえよ」

「うん?」

「サタンも、ベルセブブも、この世界には別にいるから、ごっちゃにして呼ぶなよって言ってんだよ。チルヒメとイワナガヒメが別にいるのと一緒で、な?」


 え、マジで?


「サタン様、別にいるの?」

「おう。あいつは……≪地獄≫にいるからすぐに会うことは出来んけど……流石に≪地獄≫の統括者に軽率に会いには……ねえ?」

 明後日の方を見つつ黄昏れた顔をする。

「じごくのとうかつしゃ」

「≪地獄≫、知ってる?」


 ≪地獄≫

 霊界の一種で、死後、罪を犯した魂が罰を受ける世界。

 各-街-で別の統括者が存在し、-八番街-の地獄統括者は閻魔様だったはず。

 わりと-八番街-の≪地獄≫は日本人が思い浮かべる地獄に似てるんだよね。


 灼熱の八大地獄と、極寒の八寒地獄の2エリアに分かれていて、罪の種類や重さでそれぞれに振り分けられ、罪を濯ぐ。

 そして綺麗になった魂は、大いなる流れに戻り、また新しい命へと変性するのである。


 しっかし≪地獄≫かぁ……そんな言葉、こっちの世界でも聞くとは……しかもかなり身近に。

 前世ではあるかどうかわからんものだけど、こっちの世界では確実にあるものだし。

 ついでに、アルヴェリア王国には死刑がある国だけど、死刑方法の一種に『火車便』というものがあるんだが……ぶっちゃければ生きたまま≪地獄≫送りである。

 一度見たことがあるけれど、アレはヤバイ。

 業火を纏った牢を乗せた車が罪人をかっさらって牢にぶち込み、そのまま≪地獄≫へと超特急で向かうらしいのだが……生で見るとちびるよ。子供心にトラウマを植え付ける。あれ見たら、まっとうに生きなきゃってなるよね……。


 ……コワイネ。

 俺は健全に生きていたいね。


「いつか≪地獄≫巡りもいいかもなぁ……」

「やだよ、俺は真っ当に生きるんだ」

 ぼそっと怖いこというユウキに俺は少し後ずさりつつ拒絶を示した。

 ユウキが笑う。

「一回行ってみる分には楽しいぞ?」

「楽しいって……おま、≪地獄≫だぞ?」

 怪訝にユウキを見ればユウキはカラカラと笑う。

「≪地獄≫だよ? まぁ、お前が思ってるほど恐ろしい場所じゃねえよ。≪地獄≫も。罪を犯すから怖い場所になるだけで、まっとうに生きてる分には……ね?」

「えぇ~?」

「信用無いにゃぁ」

 ケラケラと笑い、それからユウキは俺に手を指し伸ばしてきた。


「行くか」

 伸ばされた手を取り、応える。

「……おう」

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