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#45 日常的に摂取したい癒しである。うん。


 朝起きたら、きなこのおしりが目の前にあって、何故か感動した。

 ぷすー、すぷぅーと寝息をたてるきなこ。寝息のたびに背中が上下していることに泣きたくなるほどの感動を感じる。

 やっぱ、きなこの寝顔を見ないと朝は始まんねえな。


 ベッドから身を起こして床に目をやれば、目のやりどころに困る寝相が広がっていた。

 当然、寝相の主はユウキである。

 なんつーか、300億年生きてる神とはとても思えないっていうか、あなた仮にも少女の姿取ってんだから、小学生のガキみたいな寝相どうにかなさいよ。


 いつのまにか着替えたのか、どっから調達したかわからないパジャマに身を包んでいるが、寝相のせいでボタンが全開になっており、下着が……シャツだが。丸見えである。

 布団は蹴り飛ばされて部屋の隅で団子になってるし、パジャマのズボンも……危うい。

 ……


「これが、神の末路かあ……」

「きゅっきゅー……」

 情けないやら、呆れたやら。

 いつの間に起きたのか、呆れたような声できなこが鳴く。

 そんなきなこと顔を合わせ、笑った。


 爆睡中のユウキをほっといて、一階に行けば、味噌汁用か出汁の香りがする。

 やっぱ和食の香りは落ち着くでぇ……

 この世界に和食文化をもたらした存在と、和食文化のある地域に俺を転生させてくれた存在に感謝やで。なんて沁み沁み思う。

 ……転生させたであろうやつには心当たりがあって、多分、元クラスメイトのアイツというか、眼の前のコイツなので若干複雑な気分だが。


 まだ、朝早いので、周囲は静かだ。

 俺ときなこも、できるだけ音を立てないように移動する。

 廊下を突っ切って曲がれば、縁側へと繋がっている。そんな縁側からは庭が見えるが、今は雨戸を締めているので、見ることができない。

 が、誰もこないし、どの部屋からも離れているので邪魔されないし、邪魔にもならない位置と言えるだろう。ちょーっと寒いけど。

 とか思っていると、きなこが上半身を起こし、両手を前に突き出す。

 何をするんだ? と見てみれば、きなこの出した手の間に暖かい色をした光が灯る。

 炎……というよりは電球のような色合いの光だが、じんわりと周囲が暖かくなる。

 暖房も魔法で出しちゃうのね。

 QOLが爆上がりしますなあ。

 一家に一匹きなこさん。ってか?

 やだ。きなこは我が家の家族です。他人にゃ渡さねえ。


 光球を俺の頭上に放ったきなこを、俺の膝に乗せてサテライトを呼び出し、絵本アプリを起動する。

 日頃の特訓で、初等文字はなんとか読めるようになった。

 前世の言語……日本語の知識が邪魔してアルヴェリア共通文字は文字として認識できなかったのです。なんつーか、模様に見える。寧ろ模様にしか見えない。

 が、取っ掛かりがあれば習得は容易なのです。

 なんとなくわかってきたので、漢字に準ずる高等文字の習得も、時間の問題でしょう。


 ふはは。やればできる男なのです。俺は。

 が、今日はアプリに読んでもらおう。

 音量調節できるアプリは便利だね。ほんと。


 ふわふわひつじさんシリーズを何冊か読んでいると、人の気配がした。

 そっと振り返ると、母君が微笑ましく眺めていた。


 なーんですかね、その顔。


「母さん?」

「かわいいなーって」


 かわいいなーって……母君……かわいいもの好きの血が騒ぎますか。

 きなこの触手を掴み、盆踊りをさせてみる。

「きゅ? きゅぺっ? きゅきゅきゅ?」

 されるがままに踊るきなこは、操り人形のよう。

 かわいい。

 母君も両手を叩いて笑っている。


 平和な日常だなあ……

 

「さて、朝ご飯出来たし、食べましょ?」

 しばらく和んでいた母君だったが、本来の目的を思い出したらしい。

 朝ご飯と聞いてきなこが目を開く。

 キラキラした目を開いて俺を見た。

 キラキラピカピカだあ……


 俺の腕から抜け出して、きなこがキッチンへと跳ねていく。

 俺と母君は顔を合わせて笑った。


 ほんと、きなこは食べるのが好きだなあ……



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