#43 元クラスメイトのくせに。元クラスメイトのくせに……!
……相変わらず、整った顔が視界を占める。
「チートもない、ただただ現実の世界で。死ぬかもしれない冒険者に俺を巻き込もうとしてる意図、聞いていいか?」
「きなこの為って言ったじゃんー」
認知症には早くなーい? とか冗談混じりに茶化しているが、誤魔化しはされんぞオンドレ。
「いーや、違うでしょー? ユウキくーん?」
俺はユウキの眼を見た。
星雲の瞬きを宿す瞳が、細められた。
薄く、笑みが見える。
「……」
ユウキは崩した姿勢を直す。
雰囲気が少し、変わる。
「さて」
口の端に笑みを湛えたまま、ユウキは首を傾げた。
「何故だと思う?」
それを、聞きたいんだが?
まぁ、俺の考えを聞きたいんだよねー……なるほど?
俺は考える素振りをする。
ユウキが俺を冒険者にしたい理由……ねぇ。
この世界、思った以上に冒険者になるやつが多い。
そりゃ、他種族が跋扈する世界である。
人間寄り強い種族なんぞごろごろいる。
と、いうか。人間種族が最弱と言って差し支えはないだろう。
そんな他種族も、寝るときは無防備にならざるを得ないので、大体の種族は-街-の中で暮らすわけだが……日中魔物を屠るだけなら訳ない種族も、まぁまぁいたりする。
ドラゴンとか、ドラゴンとか、ドラゴンとかな!! あとは目の前にいるような神、神族あたりもか。それに連なる天使とか? 魔族、悪魔、それに……まあ、いろいろ。
だから、人間種以外では冒険者に対するハードルは低かったりするのも頷ける。
が。
俺は人間である。
クリーチャーヒューマンである。
神に創造された人であるが、性能は前世の人間……ホモサピエンスとどっこいである。五十歩百歩、どんぐりの背比べ……
なら、そんな最弱種である俺を冒険者にする意味は?
最低限、ユウキも良識はあるので、俺を魔物の餌にしたい……わけではないはずである。餌にしたいなら、そもそもコイツなら俺を-街-の外に捨てるくらい訳ないので、さっさと餌にしてるだろう。
だから、まじめに冒険者になって、ある程度の活躍を望んでいるはずである。
そして、活躍ができると見込んでいるのである。そのはずだ。
じゃぁ、その根拠はなんだろう?
この世界にチートはない。
スキル、なんて都合のいいものもないのだ。
あるのは、神々の祝福だけ。
俺が授かった祝福は、システムの優樹が授けたらしい根源接続。
万物の中枢……星の根幹、世界そのものに接続する……全知全能にすら届きうる技能……ではあるのだが、残念ながら俺が制御して扱えるものではない。
俺はただの人なのでな!
でもまぁ、心当たりはこれだよなぁ……
「根源接続……宝の持ち腐れだって?」
「それもあるけどな?」
それも……か。
「まぁみてるんだろ? キミ」
ユウキが小首を傾げる。
同時に妙な睡魔が……
あれ……そんな時間だっけ……?
泳ぐ視線で見た時計は午後20時。まだ寝るには早いはず……
だが、妙な眠気が……意識を刈り取って……?
……
† † †
薄く靄のかかった意識が、いきなり覚醒した。
明るくなった視界に、目を瞬かせると、いつの間にか膝の上にきなこがいる。
「……きなこ?」
「きゅ? きゅっきゅ!」
ぴょこり、と膝から飛び降りて、きなこはベッドの上に寝そべる。
……膝の上が急に寒くなった。
ふと、視線を感じて、目を動かせば。
ユウキが生暖かい目線でもって俺を見ている。
「……何ですか」
「べっつにぃー? そういえばハルト君? 君を冒険者に推薦するために、10人の推薦状をゲットしたんだがさ。キミ、誰から推薦してもらってるか分かってないじゃん? 次の土曜から、毎週会いに行く? もちろん俺が案内するから」
「……何、唐突に」
確かに、誰が俺を推薦しているか分かってないけど。
知っといた方が良いんだろうけど。
「いやぁ、冒険者になるには未成年だと推薦状を3枚以上集めないといけないんだけどさ? 声かけたら、結構集まってね? あいつらも、ハルト君のこと見てみたいとか言ってるし? 会わせて見たらおもし……いい刺激になるなーって」
今、会わせたら面白そうって言いかけたな?
じろっとユウキを睨めば、あはは、と両手を上げて笑った。
敵意のないポーズ。
「とりあえず、やっぱ眠いから、寝る。会うのは次の土曜からでいいんだよな?」
「いいよー。まずは、次の土曜。朝に迎えに来るよ……とりあえず俺も寝る。おやすみー」
ユウキが布団にもぐる気配がした。
程なくして2度目の睡魔が来る。
さっきと違ってよく寝れそうな気がした。




