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#41 やっぱさよならは寂しいようわあああん

 賑やかな夕食を過ごし、世間話に花咲かせていた俺達だったが、ユウキが「さーて」と腰を上げたのをきっかけに空気が変わった。


 と、いうか。

 俺が雰囲気をぶち壊したんだけど、ね?


「おいとましま……って、ハルトくんどした?」

 にこやかに挨拶をしようとしたユウキが俺の顔を見て心配そうに覗き込んでくる。


 俺は、ぼろぼろと涙を流していた。


「い……」

「い?」

 涙を流しつつ呟く俺に、ユウキと母君が首を傾げる。

「いやあああああああああああ……帰っちゃいやあああああ……! きなこをおいてけえええええ……!」

 決壊したように俺は泣きわめいた。

 ユウキが困惑に「えええ……」とつぶやき、きなこが俺の取り乱しっぷりにドンびいて後退り、母君は「あらあら」と困ったように笑んでいる。

 が、そんなこと俺にはどうでもよくって。

「きなこの家はここなんですぅううううー! きなこの帰る場所はここなのぉおおおお! きなこおいてけー! きなこは俺と一緒に寝るんですううううー!」

 なりふり構わず俺は泣き叫び、きなこを抱きかかえようとして、きなこに逃げられた。


「きゅっ……」

「えっ?」


 俺の手から逃れたきなこは、そのまますすすっと後ずさり、ユウキの影に隠れる。


 衝撃だった。

 きなこに避けられたことがショック過ぎて、俺は部屋の隅で蹲り、シクシクと涙を流した。


 心が優しいきなこは、俺を憐れに思ったのか近づいてきて触手でぽしぽし頭を撫でてくれる。


 その優しさが今は辛い。


 きなこに慰められつつえぐえぐと泣いていると、母君が俺の頭元に立って声を降らせてきた。

「ハルトー? きなこちゃん、治療の為にユウキさんところにお世話になってるの、わかってるでしょー?」

 諭すような口調の母君。 

 だが表情は柔らかく笑っている……と、いうか。面白がってないか? 珍しいハルトを見ている……的な? 

「わかってる、けどぉ……」

「じゃあ、困らせちゃ駄目よね?」

「でもぉ……淋しい」

 あんまりにきなことの日常が楽しすぎて。

 今日一日の一時帰宅が短すぎて。

「もっときなこと一緒にいたいのぉ〜」

 ぐずぐずと鼻水をすすりつつエグエグ泣いていると、きなこが呆れたような鼻息を零す。


 それから「きゅっきゅ。きゅっきゅきゅー? きゅきゅーきゅ? きゅきゅ?」ときなこの鳴き声。

 それにユウキの「えっ? 俺はいいけど……おかあさん?」という声と、「そうですね……」という母君の、少し困った、しかし面白いものを見たというような声がする。


「ハルト? きなこちゃん、心配させてるけど……いいの?」

「うう〜」

「きなこちゃん、心配だから一泊するって言ってるわよ? 一泊で納得できる?」

「が、がんばる……」


「意外だなあ……」

 面白おかしそうにユウキが笑う。

 あの、君ら、そんな面白がられても困る。


 聞き分けのいい子でいるつもりだったんだがなあ。

 こう、ここで駄々こねてもみんなが困るのは頭ではわかってるんだが、こう、年々感情の制御が難しくなってる気がする。子供っぽくなってるのかしら?

 それがいいこと? それとも……?


 頭の片隅冷静な部分で思考を回せど、体はきなこから離れまいと駄々こねモードを続行しており、心が二分してるよう。


 そんな俺にきなこは呆れたような鼻息を吐き、俺の頭をぽしぽし撫でる。


 相変わらず、きなこの撫で方は酷く優しく暖かい。


「客室に案内したいところなんですが、生憎掃除してませんで……ハルトの部屋にお布団用意しますね?」

 おや、母君が掃除してない場所なんて作るわけがないんで、なんか気を回したかな?

 まあ、ユウキといっしょに寝るのも……お友達とのお泊り会っぽくてテンション……上がんねえわ……事実前世では友達……というかクラスメイトだったけど、こっちじゃ年齢も立場も何も違うし、何だったら(見た目の)性別も違うから緊張するわ。

 ガワはめっちゃ美人だし。


 つか、ガワだけは女性なユウキを俺と一緒の部屋に入れていいのか?

 いや、6歳で間違いは起きないとおもうけどさぁ……

 ってか、間違いってなんだよ。


「きなこー。ということで一泊します。の、で。ハルトくんから離れなくていいぞー」

「きゅっきゅー」

 きなこが俺の頭の上に覆いかぶさる。

 息はできるよう、顔は避けてくれているので息苦しくないが、暖かいきなこの体がふわふわとくすぐったい。


 ……なんか、以前より少し重くなったかしら。

 まあ、それでも子猫ほどの重みなので誤差と言えば誤差だが。


「ほーれ、明日の昼までは居るから、泣き止めハルトくん」

「うー……」

 元クラスメイトにガキ扱いされるとなんか、癪。

 事実俺は6歳だしガキだけど、さあ。


 きなこはずっと俺の頭をぽしぽし撫でている。

 慰めてくれてるんだね。

 時折、俺の頭を触手で抱え、頬ずりしている気配がある。

「きゅーきゅ、きゅーきゅ」


 癒やされるう〜

 でれっと顔がゆるんじゃうのは、しゃーないよね。


「お風呂も準備できたし、入っちゃいなさいー?」

 という母君に、きなこが動きを止める。


 それからきなこが俺の顔を覗く。


「きゅきゅー? きゅーきゅきゅー?」

 ……

「な……なんて言ってるんですかね……?」

「一緒にお風呂入れるー? って」

 き、きなこぉおおおおお

 きなこのお姉ちゃんムーブやら、優しさやらなんやらで感情が大爆発した俺は、涙を滂沱のように流しつつきなこと一緒に入るのだった。

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