#39 WAKUWAKU夢が広がリング?
でも……そうかあ、きなこ。
魔術師としてそこまで優秀なのか。
ふーん……
「なに、変な笑い方してんのさ」
ちょっと気持ち悪そうに後ずさるユウキ。
うっさいなあ、俺の家族が一流の魔術師(であろう神)に褒められたんだから、喜んで当然だろさ。
「きなこすごいんだなあって」
「すごいぞー。あいつ。牧場で普通に暮らしてたことが不思議なくらい知能ある」
「あ、やっぱ? 人間用トイレで用を足したところで俺も思った。きなこの知性、かなり賢いよな」
「魔術師できるレベルだから、人型とれれば市民権取れるぞ、あれ」
「まじ?」
市民権とれる、ということは即ち、人間と同レベルの権利を持てるということで、ペット扱いしなくて済むということでもある。
「いいな、それ。納税義務出るけど」
市民権を得る=義務も発生するからねえ。
あ、ワンチャン学校とかも通える……? きなこと学校でもいつでも一緒にいれるってこと……?!
「まあ、人型とるには……つか取り続けるには結構魔力消費するしね、お前が冒険者になってからだなあ」
はい、夢潰えたり。
速攻で夢が潰えました。ぐすん。
……擬態ってそんな燃費悪いん?
「幼稚園に着いてくるとき、きなこ、猫に擬態してたけど……無理させてたのかな……」
「あ、いや。猫くらいじゃどーってことない。元のきなこがあの大きさなのに、人間に擬態しようとしたら、体積増えるじゃろ? 構造とかいろいろ違うからさ? 燃費悪くなるん感じ?」
「はへー」
猫と人間じゃそこまで違うのかー。
同じ哺乳類なのに不思議ー。
しっかし、魔導結晶を作れるようになったら、きなこさん人間に擬態できるようになって、市民権得て、学校へ一緒に通えるかもしれないとか考えると……なんか、冒険者になることに前向きになってきた。メリットしか聞いてないからだろうけどね!
……きなこが学生服を着てるの……いいな。
「なんか変な妄想してない?」
怪訝そうな顔で尋ねるユウキに、俺は笑みを返した。イエスともノーとも言えないよね。
代わりに「きゅっきゅちゃんって性別あるんかね」と尋ねてみる。
「……きなこにセーラー服を着せるとこでも妄想したか……」
「否定はしないが、やっぱきなこって女の子なのか? きゅっきゅちゃんってオスメスあるん?」
「うーん……きゅっきゅちゃんって、ほら。生殖行動しないじゃん? 基本的にはスライムだし? 性別……ないんだが。きなこの母親はきなこを産んだわけじゃん? きなこが母親の能力をどこまで受け継いでるか……ってのが問題かなあ」
「……きなこはメスって認識でいいの?」
「できるできないは知らんが、女の子でいいんじゃない?」
ま、きなこはきゅっきゅちゃんだし、生物学的には無性だろしね……
今俺が気にしてるのは生物学的より、性自認のはなしである。
正直、目の前にいるコイツ同様、きなこも見た目は如何様にもなるので外面の性別なんかは最早飾りなのである。
……すげえよな……ファッション感覚で性別変えれるんだなあ……異世界だ。
まあ、仮に俺が性別が変えれる種族に生まれたとして……俺はユウキみたいに女性になっただろうか。
……むりぃ〜。ハードルたっかーい!
いや、女子に生まれてたら違ったかもしれないけどねー。
……まあたらればの話なんて意味ないけどね。
俺魔法とか使えないから? これからも性転換とかTSとか関係ないってね!
……羨ましくなんか無いんだよ? ホントだよ?
「な、なに……?」
じーっと凝視してたらしい。ユウキがキョドっていた。俺にとってはTS代表格だからなあ……
「いやあ?」
「んまあ、活動するかどうかはさておいて、資格取るだけなら今からでもできるし? 今度の休みにでもやる?」
「そんな気楽な……」
「だって、推薦する側の冒険者3人とか秒で集まるぞ」
3人……ユウキに、澪夢さんは確定として……あと一人? だれじゃろ。
まあ、いうて? 俺が知ってる人なんて、家族と、幼稚園関係と、駄菓子屋さん、商店街の人たちと……ユウキと澪夢さんくらいなんだよなあ……
「ネトゲできるぞネトゲ」
「……ひっじょーに魅力的だが。5歳児にネトゲできるから冒険者になろうって、すっさまじくやべえ勧誘してる自覚ある?」
「そういうツッコミできるくらい賢い子だと思ってるので敢えて言ってる」
「あ、そう……一応母君にもお伺い立ててみるわ……」
「二つ返事くれそー……」
「……大事にはしてくれてるのよ?」
「そんなんわかりきってるよ」
即答で返ってくるユウキの声に俺は目を瞬いた。
あ、そこ信用あるんだ?
数回しか会ってないはずだが、そして傍から見てるだけなら結構放任主義にも感じる対応だが。
(実際陰口を叩いてる人を見たことも何回かあるけど)ユウキはそこんとこわかってくれてるのかあ……
なんか意外。
顔に出てたのか、ユウキが呆れたような顔を浮かべた。嘆息し、胡座を掻いた上で頬杖を付く。
「一回かーちゃんと腹割って話すべきでは?」
「えっ?」
「……転生者ってことも伏せてんでしょ? キミ」
「え、あ、うー……」
うん。まあ。そう。
でも、それ……母君に伝えるべき?
今の関係、崩したくないんだが……ほら、なんかいきなりそよそよしくなったり、関係こじれたりするんじゃない? するでしょ?
「ま、そこら辺言うか言うまいかはキミに任すがあー」
「うーにゅ」
俺も胡座を組んで、頬杖をつきつつ呻いた。
なんつーか。
ほら、小説なら転生カミングアウトって、ロクな結果にならないじゃあないですか?
腹割ってお話し……ねえ……
うーん……
頭から煙が出そうなので考えるのやめた。
「取り敢えず、保留」
「あーあー……」
なっさけなーいと言外に聞こえた気がしたが無視することにする。
俺には他にも考えなきゃいけないことがあるんだ。




