#38 ユウキと話すとやべぇ話ばっかぽこぽこ出てこない?
きなこと入れ違いに部屋に入ってきたユウキは、「どっこらしょ」と些か年寄り地味た声を上げて俺の隣に座った。
相変わらず、人知を超えた絶世の美女が目の前にいる。
が、こいつ……ユウキなんだよなあ……
青み帯びた白銀の髪……という、前世ではなかなかお目にかからない髪色で、瞳も星雲を孕んだ宇宙のような、青い瞳。縁取るまつ毛は長く、細部を見れば見るほど引き込まれる美しさがある。
うーん。いっそ芸術品というか。
人形だと言われたほうが納得するレベルに整ってる。が、反則なことにこいつ、生きてるんだよなあ……。
「……なんだよ、人の顔じろじろみちゃって」
「ずるいなあ、と。モテるでしょ。あーたー」
「んー? んー……」
悩ましい、と顔を歪めるユウキ。
なんじゃあ、そりゃ。
「そーいうきみはあ? 幼稚園でもモテるんじゃないのー?」
と逆にうざ絡みしてくる。
うっざーい。
と、いっても、だ。
所謂小説の主人公ならね? 転生系なんて、チート授かって、頭良くって、運動神経抜群で。かわいいヒロインに囲まれていてモテモテエリート人生絶頂の勝ち組コースまっしぐらだろうけどね?
俺別に主人公じゃないじゃん?
カワイイナーって子はいるけどさー……
そもそも俺6歳だし?
彼氏彼女って関係も、ねえ?
モテ? モテ期?
前世から通して知らない子ですねぇ……
彼女いない歴=年齢で、そのまま享年になっちゃったよ。
悲壮感が足りないのは、享年が14だからか。
彼女彼女っていうよろ、厨二病だからね。あの歳は。でもさあ、興味なかったわけじゃないのよ?
告白したことだって……無いわけじゃないのよ。
……罰ゲームでだけど。
『だって悠人くん、男として見れないっていうか……気の良いお友達? っていうか?』
……いや……まあ……ソーイウコトに興味がないというわけでもないんだけど……
正直、彼女は欲しいけど、出来たからって何するとか、よくわかんなかったしなあ……
デート? お店でお茶? 小遣いないからそうそう行けるもんでもなかったし?
まあ、彼氏として振る舞えるイメージなかったから、彼女たちは慧眼だったのかもしれない。
そして今世はといえば……まだ5歳だからわっかんなーい。
……と、いうより、周りに異種族が多すぎて、人間の女子が希少種なもんだから、どうこう以前に出会いがないのよね……
一応、他種族でも遺伝子が近けりゃ子供を設けれる場合もあるんだが……異種族間は基本的にプラトニックよね……
「この世界って、ほんと人間以外の種族多いよなあ」
「人間がマイノリティーなん、ビビるよな。昔は違ったんだがねえ……」
「そなん?」
「はじめはオリジンヒューマンしかいなかったよ。そっから、神降り以降、神がいろいろ創造したからねえ」
「ん?」
「今、絶賛2回目の神代✩」
そんなキャピッとした顔で言われても。
神降りは、我らが国王……アルヴェリア女王が−一番街−のある場所に降臨したことで、あれ以降、この世界は多種多様な神を受け入れる世界になったらしい。
「2回目ってことは、1回目もあったわけだ」
「うんむ。女神暦じゃなくて、お前らが有史前とか言ってる時代のさらに前になあ……鋼歴とか言われてたっけなあ……まあ、それの更に前だな。ガチの有史前。そんときゃ、まだこの世界由来の神もまあまあ居たんだがなあ……」
「お前以外に?」
「一応、成り立ちはアレだがこの国の女王女神と浅桐神社の神様はこの世界由来だぞ」
「成り立ちがアレって暴露してんじゃん」
「んまあ、俺も含め、全員核は転生者だからなあ……アルバは……で、浅桐は鬼を喰った刀だが」
「アルバ……?」
「アルバグランツ。この国の女王の名前くらい覚えとけ」
呆れたような顔で煽ってくるユウキだが、あのなあ……普通の一般人は女王の名前をそんな風に区切らんし。不敬でしょが。
……こいつ、なまじくっそやべえ神様だから、そういうの頓着なさそうなんだよなあ……
かくいう俺も、創世神に対して不敬も不敬だが。
こいつ、神様って以前に前世のクラスメイトってイメージがこびりついてて、敬うもクソもないんだよなあ。
まあ、ユウキ自身が俺の態度を許してくれてるってか、受け入れてくれてるってのが一番でかい要因だろうけど。
「そんな区切り方するのお前くらいだよ!」
びっくりするわ、と言ってみるがユウキはどこ吹く風で笑っていた。
「ええー? アルカディアメンバーはだいたいアルバ呼びじゃねえかなあ……」
まじかよ。お前以外にもそんな不敬者いるのか。
「って、アルカディア?」
「ネトゲのギルド」
女王陛下、ネトゲしてんのかよ。
なんかめっちゃ脱力した。なんかつかれる。
案外実際あってみたら神で女王でも取っ付きやすいお方だったりするんかね……
ま、俺がお目通り叶うことなんて無いだろがねー!
きなこにあげる用だった駄菓子袋から麩菓子を取り出し、齧る。ごめんきなこ。でも、甘みが脳に沁みるわー……
「ネトゲかあ……12歳以下は出来ないんだよなあ……」
基本的に、ネットゲームの類はR-12である。
サテライトで管理されてるので、詐称は不可なのだ。
「まあ、そらなあ……抜け穴がないわけでもないんだが……」
「ほう?」
初耳だった。抜け穴あるのか……?
「ねえ、ハルトくん。冒険者やらない?」
「またそれかあ……」
脱力。というか、逆に冒険者の権力って相当だな……と思わなくもない。
日本で言うあれか? 結婚したら社会人的な?
「ま、本格的に活動するのは10歳以降かなー。いくらお前でも、10歳以下で冒険者は死にそうだし。それはアイツに申し訳がない」
「あいつ?」
あいつというくらいだから母君ではなさそう。
「内緒」
ニマッと嫌らしく笑うユウキ。
なんだあ? てめえ……
でも、この世界に知り合いなんぞそんないないぞ。特にユウキとの共通の知り合いなんか……澪夢さんくらい?
でも澪夢さんに申し訳がないってのもおかしな話だ。じゃあ、だれだろ……?
俺が怪我すると困って、そして俺にも秘密でいるべき人……?
「いつかは冒険者になるのもアリだとは思うけど、急かされてまでやる気もないんだよなー。だいたい、前世が日本人の俺が剣を持てるとお思いで?」
「剣である必要なくね? 弓とか」
「弓ぃ? 俺が弓を引けるとでも? どうせ、フレンドファイヤがオチだよ」
ペッと唾を吐き出したくなる。
部屋が汚れるからやらないが。
「んまあ、いつかはなるつもりがあるなら、安心した。する気になったら呼んでくれ。速攻でA級まで押し上げるから」
「なんでわざわざ……」
「きなこのため。きなこのお薬の触媒を自力入手してもらいたいから、かなー。ずっとタダでやるのは流石に俺もしんどいから」
そう言いながら俺の手をとり何かを押し付けてくる。
なんこれ。
見れば、綺麗な青いガラス細工? キラキラ光る、ガラスのようなものでできた球体のオブジェだった。細い管が幾重にも絡まった、複雑な形状をしている。
見れば見るほど綺麗だ。
「それ、きなこの薬。売れば豪邸一つ手に入るくらいの金になるが売るなよ?」
取り落としそうになった。
「ちょ、おま……ユウキさん!?」
なんつーもんを寄越してくれるんですかあーたー!
「魔術の神様お手製の超高純度高濃度魔導結晶なんだから、そら豪邸くらい建つよ。最終目標はそれに準じた魔導結晶をきなこ自身が作れるようになることなんだからさ……材料を揃えるために冒険者にならんとお前……破産するぞ」
お、おーう……
「いやあ……きなこの魔術に対する飲み込みがやばくてなあ……いろいろ教えて出来るようになったのはいいんだがなあ……いやあ、今では一番弟子だよ全く。どうしてくれんだ」
「誰がそこまでしろと」
「魔導結晶作れるようになったら魔導教が買い取るからね。いい節税にもなるから是非」
いい節税ってあーたー……まあ、この国の政治家じゃあないもんね、あんた。




