#37 懺悔と感動と自責と感情ぐちゃぐちゃ
家に着くと、まだ時間ではなかったが、ユウキが来ていた。
アイツ、今回も転送魔法できたのかね。
ほんと理不尽というか、規格外というか……
「あ、ユウキさんだー」
「……ハルト、やめて。なんか鳥肌たつからそれやめて」
なんでだよ。
子供らしい反応できたと思うんだがなぁ……
ユウキには不評らしい。
嫌そうな顔で両腕をさすっていた。
「で、きなこは?」
「部屋にいるぞー。俺は君のお母さんとお話ししてるから、きなこと戯れてきなぁ」
「……お前、毎回そうだな……ま、お言葉に甘えて。……母さん、後で変わるね?」
後半、母君を見て言えば、母君は無言で笑顔を作った。
そしてひらひらと手を振る。
あ。
これ、何かややこい話するつもりだな?
大人な会話だ。
子供の俺は蚊帳の外ーってなー。
大人しく自室にいますよーっと。
ちょっと拗ねてしまう俺である。
が、そんなことは二の次でいいのだ。
まずはきなこ! きなこ! き な こ !
「きなこ!」
階段を駆け上がって自室のドアを勢いよく開けると、ペットベッドにきなこが寝そべっていた。
あら、寝てる?
近づくときなこがフスッと鼻息をあげる。
あ、起きてた。
「きなこぉおおおおお」
「きゅぺええええ?!」
感動のままに抱きかかえて頬ずりする。
ああ、ああ。あの頃のきなこのままだぁ。
少し色つやが良くなってるのが癪だがきなこだあああああ。
「寂しかったよきなこごめんなぁ、気づかなくって頑張ってくれてたんだろきなこありがとうなぁ、父上と母君のためにあんなに無茶して俺は怒ってるが、それ以上に申し訳なくってごめんなきなこぉおおお」
「きゅきゅきゅきゅ!?」
感情のままにまくしたてると、困惑したきなこが変な声を挙げる。
それから俺の頭を撫でてくれた。
やっぱりきなこのなでなでは優しい。
なでりこなでりこ、と撫でられるごとに少し落ち着いてきた。
深呼吸、すーはー、すーはー。
おひさまみたいなかおりがするぅ〜。
「きなこ、あんな無茶はこれっきりにしてくれよ? 俺も母君もめっちゃ心配したし、寂しかったし、辛かったんだからなぁ?」
「きゅー」
とりあえず、きなこに言いたかったことは言ったので、お土産をあげようと思う。
「と、いうことで。はい、きなこ。今日、またユウキと向こう行っちゃうじゃん? だから、駄菓子を君にあげよう」
そう言って俺はさっき買った駄菓子袋をきなこに見せる。
「きゅぺ?」
「お菓子。駄菓子だぞう? きなこ棒とか、スナック菓子とか。あんま一気にいっぱい食べちゃダメだよ? 太るから」
「きゅ」
体型は気になるお年頃な模様。
ちょっと緊迫感のある声が聞こえた。
……そう言えばきゅっきゅちゃんってオスメスの概念あるのかな……
スライムは当然単体生殖なのでオスメスの概念がないんだが、その進化系みたいなきゅっきゅちゃんは……どうなんだ?
きなこは、なんとなく女の子っぽい気がするんだよなあ……これでオスだったらどうしよう。
……いや、まあ……オスだろうがメスだろうがきなことして接するだけだし、今更対応を変えることも無いと思うけど……
「きゅっきゅー」
俺の心配? をよそにきなこは駄菓子の大量に入った買い物袋に顔を突っ込んでごそごそ漁っている。
スナック菓子から甘い系から雑多に入ったお菓子を物色していたきなこだったが、1つ取り出して「きゅっきゅー」と鳴く。
何を選んだんだと思ったら、きなこ棒だった。
「あ、きなこ棒。きな粉で出来てるんだぜ?」
「きゅ!?」
説明したら驚かれたというか、ショックを受けたらしい。
え、えーと?
「きな粉……大豆を炒って、粉にしたやつ。食べたことあるだろ? うちきた日のおやつ……きなこもち」
「きゅきゅ? ……きゅっきゅー!」
何やら納得した模様。
まあ、君の名前、きなこだもんね……
自分の一部が材料かと思ったのかね……
きなこもちは普通に平らげてたわりに……あれか、説明しなかったからか。
きな粉棒の包装紙を外したきなこは、しげしげときな粉棒を見ていたが、意を決して一口。
ぱくり。もっきゅもきゅ。
「きゅっきゅちゃん!」
美味しかったらしい。
きな粉餅も普通に平らげてたからね。
そらうまいよ。
2口で食べきったらしいきなこは、少しさみしそうである。
「もう一個、食べる?」
「きゅっきゅ!」
頷き、駄菓子を抜き取る。
今度はリング状のスナック菓子。
「ユウキの家はどう? しっかりご飯食べてる?」
「きゅっきゅーきゅーきゅきゅー」
相変わらずきゅっきゅちゃん語は謎だが、雰囲気的に良くしてもらっているようだ。良きかな。
しばらく駄菓子をしゃくしゃくしながら駄弁っていたら、ユウキが顔を覗かせた。
「きなこー。交代なあー」
「きゅきゅー」
ユウキの声にきなこが心得た、と部屋から出ていく。まあ、母君も会いたがってたしね。
しゃーないね。もっとお話してイチャイチャしたかったが……ユウキとも話したいしね。
……はあ。
「何なんだ、その態度」
ユウキが半目で睨んできたは無視することにした。




