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#31 優しい歌声の夜更かしさん


 はた、と目覚めた。

 時計を見れば23時。

 おおう、深夜である。

 ペットベッドを見ればきなこはいなかった。

 おや?

 

 自分のベッドにももちろんいない。

 どこへいったんだ?

 きょろきょろ見渡すと、薄暗い室内にきなこの存在はない。

 部屋の外……?


 部屋の外に意識を向けると、何か音がする。

 音というか……音楽……歌?

 

 音の正体が気になって静かに部屋を出た。


「〜〜♪」


 歌だ。鼻歌のような。

 階段を降りると、歌声の発生源はどうやらリビングらしい。

 そーっと覗いれみると、きなこが歌っていた。


「〜〜♪」


 ダイニングのテーブルに乗って歌っているようで、父君と母君が聞き入っていた。

 ふたりともきなこの歌声に集中しているようで俺の気配には気付いてないようだった。


 きなこの声は酷く優しく包み込むような温かさがある。

 

 この世界に墜ちた当初。

 『世界の外側』できゅっきゅちゃん達に出会ったあの頃を思い出す。

 あの子たちは『世界の外側』で元気にしてるだろうか。

 

 『世界の外側』にある存在は、基本的には肉体が無い状態だったと思い出した。

 俺も意識だけだったっぽいし。


 なら、きなこの母親も、『世界の外側』に行けばまた会えるのだろうか。

 ……意味消失した魂は、『世界の外側』には行けないのだろうか。


 ……次繋がった時にでも、探すか聞くかしてもいいかもしれない。

 俺は、あの子との約束をまだ果たして無いのだから。


 なれば。

 きなこの歌を聞いてる場合じゃないね。

 俺はいそいそと自室へ戻った。

 2度寝を決め込み、うっかり繋がることを期待しなければ。

 なんせ俺自身はあのチートスキル、使いこなせて無いんだもの。


「〜〜♪」


 優しい歌声がリビングを包む。

 その歌を聞くと、元気が湧き出る気がした。


 元気づける歌なのかな……


 † † †


 いつもの時間に覚醒。

 目覚めはいつも良いほうだが、今日は一段とスッキリ起きることができた気がする。


 くあり、とあくびを噛み殺してペットベッドに目をやれば。


 すぴぃーすぴぃーときなこが寝息を立てていた。


 かんわい〜い〜

 蕩けた顔できなこの寝顔を堪能すること10分。

 おっと、こうしちゃいられない。

 まぁ、寝顔を堪能し続けるのもいいんだけどね?

 今日も絵本を読みつつアルヴェリア共通言語のお勉強である。

 言語習得は早い方が便利なのである。


 ……やっぱねぇ……伝えれる手段はあればあるほど便利だし、伝えたいことが伝わらないストレスは……半端ないものである。


 ふと、視線を感じて振り返る。

 きなこが俺を見ていた。


「きなこ、おはよ」

「きゅっきゅー」

 朝の挨拶をすれば、きなこはにゅっと触手を伸ばして挨拶を返してくれた。


「昨日、夜更かしさんだった?」

「きゅっ?! きゅーきゅきゅー?」

 昨夜の一件を軽く茶化せば、焦ったきなこが言い訳のように鳴いた。

 それに目元を和ませて笑う。

「きなこだって夜更かしさんは体に悪いんだからなー?」

「きゅきゅぅ」

 むきゅきゅ、と鳴きつつ洗面台に向かうきなこ。

 俺もきなこの後を追いかけた。


 顔を洗って歯を磨き、朝の支度をしてからキッチンへ向かえば、母君が朝ごはんを作ってくれている。

 今日はピザトーストだった。

 相変わらず朝から凝ってるなぁ……

 俺的にはコーンフレークだけでも十分ありがたいんだがな。

 まぁ、きなこは食べづらいか……?


「きゅっきゅー!」

 ピザトーストに軽くサラダ、牛乳とフルーツを添えたヨーグルトというグレイスフルな朝食を目の当たりにして今日もきなこは感動している。

 まぁ、俺も感動しているんだけどね?

 毎朝早く起きて朝ごはんを支度してくれている母君が、俺は少し心配だよ……


 父上はもう仕事へ向かったらしい。家の中に気配がない。

 ……ほんと最近、父上とまともに喋ってないなぁ……

 きなこは夜お話ししたんだろうか。やっぱ俺も夜混ざればよかったか。

 ……まぁ、過ぎたことを考えてもしゃーないね。


 温かいうちに朝ごはんをいただきましょう。


「いただきます」「きゅーきゅきゅー」


 ピザトーストはジャンキーさがあって、毎日は厳しいが、たまに食べると感動するほどおいしい。母君のチョイスは今日も輝いている。

 きなこは今日も感動で震えていた。

 今日は泣かない模様。でもジャンキーな感じもイケる口なんですね、きなこさん。


「おいしー?」

 と確認する母君に俺ときなこは全力の首肯。

 ピザトーストって、ピザとはちょっと違って、そこがいいというか。

 いや、母君の焼くピザも好きだけどね?


 朝食を完食し、「ごちそうさまでした」と手を合わせ、ひとごこちついてから、幼稚園へ行く準備にかかる。

 リュックに必要なものを入れて玄関へ行けば、母君が微笑んで待っていた。


「じゃぁ、行きましょうか」

 きなこも一緒に向かうので、最近は専ら自転車移動である。

 まぁ、運動は幼稚園内でやってるし、行き帰りくらい楽しても、大丈夫だと思うけどね?

 いや、母君お手製の料理を堪能した結果、おでぶちゃんになる心配も……ないとも限らないからね……俺の理想は澪夢さんみたいな涼やか大和男児なんだってば。


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