#29.5 家族のみんなには内緒だよ?
ハルトを幼稚園に送り、そのまま家に帰ってきたきなことハルトの母親。
ハルトの母親がキャリーリュックごと玄関に置くと、中からきなこが出てきた。
「きゅっきゅー」
跳ねながら脱衣所へ移動するきなこを見送り、ハルトの母親はキッチンへと向かう。
「きなこちゃん、おやつに何か食べるー?」
「きゅっきゅきゅー」
反応からして食べたいらしい。
苦笑しつつおやつの準備をする。
冷蔵庫にプリンを冷やしていたので、今日はこれにしよう。
きなこちゃんは果物も好きなので、プリンアラモードにするのも良い。
そう考え、果物数種類をカットし、ホイップクリームを絞って飾り付ける。
そうやって準備していると、きなこがダイニングテーブルに飛び乗った。
「きゅっぷぷ?」
首を傾げるきなこ、何してるの? とハルトの母親を見ている。
それにハルトの母親はふふっと笑い、きなこの前にプリンアラモードを置いた。
「じゃーん! おいしそうでしょ? プリンアラモードっていうのよ」
「きゅっきゅー!」
「ハルトの分はないから内緒ね?」
「きゅきゅー?」
「仕方ないじゃない、プリン、2個しか作らなかったもの」
「きゅっきゅきゅぅー?」
怪訝そうな顔をしてきなこが鳴く。
それにハルトの母親はいたずらっぽく笑った。
「意地悪じゃないわよぅ? きなこちゃんと食べようって思って昨日プリン焼いたんだもの。ハルト幼稚園行っちゃうし、今食べるならハルトの分要らないじゃない?」
「きゅぺ」
「ハルト、結構たまご料理にうるさいからねぇ……どれもおいしいとは言ってくれるけどねー。プリンとか茶わん蒸しとか、割と思うところありそうなのよね。だから、中途半端なものはあげれないっていうか?」
ま、食べましょ。
とハルトの母親がきなこの向かいに座ってスプーンでプリンを掬う。
「まぁ、練習用を食べてもらうの、忍びないけどねー。一人で食べても、よくわかんなくなっちゃうから、付き合って?」
「きゅっきゅー」
スプーンを手に取ってから触手同士を合わせ、『いただきます』のポーズをとるきなこ、それからスプーンでプリンを掬い、口に入れた。
「……!!!」
目を見開き、ピカピカした瞳を見せる。
お気に召したようだった。
「おいしい?」
「きゅっきゅー! きゅっきゅちゃん!」
「そう、よかったぁ」
ふふふ、と笑いハルトの母親はプリンアラモードをつつく。
きなこもペース早くプリンアラモードをパクついた。
プリンアラモードをあらかた食して一息ついていると、ハルトの母親はきなこに目線を合わせるように覗き込んだ。
「ありがとね、きなこちゃん」
「きゅ?」
なにが? ときなこが首を傾げる。
「このおうちに来てくれて」
「きゅきゅ?」
「ハルト、すんごくいい顔するようになったから。きなこちゃんは知らないかもだけど。ハルトってば、凄い考え込むくちでね? 気難しい顔ばかりしてたから……」
「きゅっきゅ……きゅっきゅちゃ?」
「うふふ。きなこちゃんもわがまま言っていいのよ? もうきなこちゃんだって家族だし、母さんはきなこちゃんのこと、娘みたいに思ってるんだから」
「きゅっきゅー……」
「えぇ? きなこちゃんはもう大人ですって? ふふっ、じゃあ、ハルトのほうが弟かしら」
「きゅっきゅぷー……」
フスッと鼻息を吐き出してからきなこはコップを傾けた。
「ふふふ、おかわりいるかしら?」
冷蔵庫からお茶入れを取り出しつつハルトの母親は笑った。




