#26 ペットショップでお買い物!
……ま、店の前までたどり着いて、今さら考えてもしゃーないんだけどねー!
と、思ったら。
唐突に解決策が出た。
「にゃーん」
なんときなこさん。
猫に擬態したのである。
クリーム色の、猫。
体色はきなこのままだが、フォルムがちゃんと猫だった。
キャリーケースから出すとしっかり重い。
内蔵や骨がある気配がする。
え、どうなってんのきなこさん……?
「にゃーん」
前足でピッとペットショップを指すきなこさん。
ああ、はい。中に入れと。
アルヴェリア王国のペットショップは、生体販売をしない。
ペットとなる動物自体を販売しているわけじゃないのだ。
じゃぁ、ペットを飼いたい人はどうするのか、といえば……
ペットを飼っている知り合いから譲ってもらうのが一般的である。
が、ペットを飼いたい人が万人、飼いたいペットを飼っている人が知り合いにいるわけではない。ので、ペットショップでは仲介紹介なんかもやってたりする。
ただ、ペットショップの本分は仲介紹介ではなく……ペットグッズや飼料販売である。つまり、俺が今必要なものである。
ごはんは、人間と同じでいいので、主に……ペットベッドとか……
「かあさん?」
「んー?」
「きなこ、ゴハンは買わなくていいよね」
「うんうん。そうね。ごはん一緒でいいもんねー」
「必然的に、食器もあるものでいいよね」
「水飲みもコップでいけたから……そうねぇ……」
「何、買いに来たの……?」
「あっ……」
母君が口に手を当てて呟く。
そうなんだよねぇ……何買いに来たんだ? 俺ら。
まぁ、かろうじてペットベッドだろうか。あと、きなこ用のおもちゃ?
でも、きなこ……ペット用ので満足いくのか……? 割と知能ありそうだぞ?
しょぼんと、肩を落とす母君を見てきなこが「にゃあ……」と小さく鳴く。
「い、いえ! ペットベッドとリードだけでも、充分用事よ」
「リード……要る?」
「きなこちゃんだって自分の足で散歩したいわよねー?」
「……にゃぁ」
イエスとも、ノーともとれる曖昧な鳴き声である。
が、母君の耳にはイエスと届いたらしい。「ほらぁ、きなこちゃんだってそう言ってるわ!」と自信ありげに言う。
……まぁ、別にいいけどさぁ……。
ペットショップで生体販売はしていないので、店内はペット用の食事類やおもちゃ、ケージやキャリーケース、ペットベッドやトイレ等でごった返している。
動物自体は前世に存在するものと基本的なところはあまり変わらないので、ペットグッズも物珍しいものはあまりない。
の、だが。
食岩生物とか、鉱物や岩などを食べる生物用のケージは、鉄や石などで作ると食べられてしまうので、頑丈だが食べれない素材の物になっていたり、ちょこちょこ前世ではありえないような工夫が施されたグッズもまあまああって面白い。
それこそ、食岩生物用の岩とか売ってるから、凄い。
なんだったら、宝石とかも売ってる。
装飾用ももちろんあるんだが、食用が売っているのである。
食岩生物の中には、宝石しか食べない偏食家もいるからだ。金持ちしか飼えない生物筆頭だよね。
「……きゅっきゅちゃんって、宝石食えるの?」
「にゃ?」
きゅっきゅちゃんは魔物であるから、当然なんでも食べる。
いや、食べるというか、なんでも魔力に変換して吸収するらしい。
それは鉱物も一緒なんだが……
試しに、宝石(食用)を1つ購入し、きなこに渡してみた。色はきなこっぽい黄色。
食用宝石はグレードが低く、装飾品にむかないものが使用されているのだが、それでもキラキラピカピカ輝いていて綺麗だ。
キャリーケースの中に、黄色い宝石を入れてやると、きなこは宝石をつんつんとつついていた。
食べるのかなーとしばらく見ていたが、食べる気はないらしい。
最終的には体の下に潜り込ませてご満悦だった。
そっかあ。食べないかぁ。まあ、母君の料理を知ったら……ね。
ほんと、母君のごはんは最高なんだあ……
今日のご飯なんだろなー。
昨日はハンバーグで、今朝は和食……
魚かなー。魚食べたいなー。焼き魚!
-8番街-は、結界に囲まれていてそう簡単に海に出ることができない。
だから魚も川魚が主体で……海の幸という概念がない。
マグロっぽいもの、エビっぽいものもあるっちゃあるが……海で採れたものではなく、工場での加工品だったり、代替え品だったりする。
一度サラダエビだと思って食べたものが植物の実で、びっくりしたなあ……
こう、とうもろこしみたいな実で、皮を剥くとサラダエビのむき身みたいなものが並んではえているのだ。実物を見ると少しキモ……ゲフンゲフン。
……まぐろユッケ丼食いてえなあ……加工品のマグロは、刺し身で食べるには少々水っぽいが、漬けとかユッケにすると美味しいのだ。
「……ハルト?」
「おっと……」
海鮮のことを思うと涎が出る。
ペットショップで涎垂らすとか、傍から見たら不審者だな……
涎を袖で拭いつつ、母君には曖昧に笑った。
「にゃーにゃー」
キャリーケースの扉をぺしぺし叩いてきなこが鳴く。
「おん?」
なんぞ? と覗けば、きなこが前足で何かを指さしているようだった。
触手の先に視線を移せば……
ぬいぐるみ。
猫用の蹴るぐるみかなあ……
小さなだき枕みたいな、細長いぬいぐるみだった。
……なんだろ……胴の長い犬か猫みたいな……フェレットというか……? きゅっきゅちゃんとは違った、形容できない動物のぬいぐるみだった。首元には黒いもこもこが襟巻きみたいについている。
「ほしいの?」
「にゃ!」
ほしいらしい。
母君を見上げると、サムズアップしてた。
あるのか、その概念。
ペットベッドは、内側がもこもこしたドーム型のものを選択。色はきなことにたクリー厶色にした。
というか、きなこの希望だった。
「これでいいの?」
「にゃにゃにゃにゃにゃーにゃにゃにゃっにゃっ!」
マシンガントークでなにか訴えているが……すまんきなこ。俺はきゅっきゅちゃん語はわからんのだ。……今はネコ語か。
「あ、そーだ」
声を上げたのは母君だった。
見上げたら、母君がなにか持ってた。
よく見たら、リュック型のペットキャリーバック。透明な窓がついているやつだった。
「なんそれ」
「きなこちゃん、運ぶときこっちのほうが楽かなって。けっこう大きくて持ちづらいでしょ? それ」
ユウキが持ってきたキャリーケースを指さして言う母君。まあ、たしかに……背負ったら楽かな。
俺的には黒とか暗色のほうがいいんだけど、母君が選んだリュックは黄色ていうか、クリーム色だった。きなこっぽい色ー。
きなこをみた。
きなこの目がぴかぴか光ってたいた。
これはー……これ買うしかないね。
まあ、買うのは母君だし、否応はないよ。うん。
お金出すの母君だし。
精算して、リュック型のキャリーケースを背負ったら、きなこが入ってきた。
母君が、下のキャリーケースから出してリュック型のキャリーケースに移動させたらしい。
「きゅっきゅ!」
リュックの中でもぞもぞする気配がする。リュックの中に入った途端擬態を解いたらしい。誰も見てないからいいけどさぁ……。
あれか。擬態をし続けるのもしんどいのかね。
「きなこちゃん、毛布とおもちゃも入れるわよー」
「きゅっきゅっきゅ!」
俺の背後でごそごそする母君ときなこ。
いいなー。俺も見たーい。
暫くリュックの中でごそごそもぞしていたきなこだが、「きゅっきゅ!」とひと鳴きして落ち着いた。居住環境を整えたらしい。
「ユウキさんから頂いたキャリーケースとペットベッドは嵩張るから配送してもらうわね」
とか言って、母君が店員さんに依頼しに行く。
それを遠目で見ていると、きなこが背中をリュック越しに叩いた。
「きゅっきゅ」
「んー?」
リュックを前に回してきなこを覗けば、きなこはリュックの中で触手を伸ばしていた。
そして触手でハートを形作る。
お、おう……器用……だな?
「きゅっきゅきゅん」
なんか胸張ってるし……
きなこ的に自慢できることをしたのだろ悪いう。
しゅごいしゅごい。




