#21 どんな世界であっても、お風呂は極楽ですな
食事の後、ユウキは母君と何か会話していた。
「きなこのこともあるし、ちょっとお話しするわーん。おみゃーはきなこと戯れてなぁ?」
なんて言って二人でリビングに行き、俺はきなこと共に追い出された。
しゃーないので、俺はきなこを連れて自室に行く。
まぁ、それぞれに快諾されたとはいえ、大人同士何か言うこともあるだろう。
うーん。俺も混ぜてほしいけどなぁ。
きなこは俺が責任もってお世話するんだからぁ。
……まぁ、6歳児だしね。何言ってもな―……
そう、つい最近お誕生日を迎えました。おめでとう俺。ありがとう俺。
さて、ユウキに言われた通り、きなこと戯れてようかね。
「きゅっきゅ?」
きなこの胴体部分をもつと、自重に任せてテローンと伸びる。
体毛の見た目から、チーズか、其れこそきなこ餅である。
「ういのぅ」
もっちもちときなこを愛でると、きなこはこそぐったそうに「きゅっきゅっ」と身をよじっていた。
ねこっぽくもあるが、やっぱスライムだ……
不思議だなぁ……。
黙々ときなこと愛でていると、程なくしてユウキが声を掛けてきた。
「じゃ、帰るわー」
「早くね?」
「いや、もう夜だし? お子ちゃまは寝る時間よ?」
「5歳だけどさぁ……お前にそういう態度とられるとイラつく」
正直に呻いたら、ユウキがカラカラ笑った。
「いいじゃない~。今だけよ?」
なにが。
答えにならない答えを残して、ユウキは帰っていった。
「ご馳走様でしたぁ~。あとはよろしく~」
なんて、笑顔で無責任なことを宣いながら。
ノリと言い方はマジで責任感がない。(この世界の人間にとっても)未知の生き物を幼児に預けているわけだが……そこんとこ自覚あるのかね……?
……ま、言っても、サテライトでいつでも通話できるしね。
必要なら飛んでくるだろう。実際に。
「きなこー? お風呂入る―?」
きなこがどの程度生活に順応するか確認しつつ……日常生活に戻りますか。
とりあえず風呂だ風呂ー! 俺、お風呂大好き!
やっぱそこらへん、俺の前世が日本人だからかね? ぬるめの湯でゆっくり浸かるのも好きだが、少し熱めの湯に肩まで浸かるのがね……どうしょうもなく好きなのよ。
うふふ、と顔をにやけしつつきなこに問いかける。
「きゅぷ?」
きなこは首を傾げ、それから俺についてくる。
動物は水が苦手なものが多い。
が、きゅっきゅちゃんは関係ないらしい。
……いや、お風呂が何かわからんからとりあえず俺についてきているだけか。
「明日は、休みだから、母君と一緒に買い物にいこうねー」
「きゅっきゅきゅー」
俺の言葉にいちいち素直なリアクションをくれるきなこ。とってもかわいい。
一応ユウキが持ってきたキャリーケースはそのまま置いて行ってもらった。
まぁ、万一の逃げ場所として使わせてもらおうっていう魂胆である。
何かあって逃げたいとき、逃げる場所がないときなこがパニックを起こすかもしれないし? 入り慣れてるキャリーケースは逃げ場としていいと思ったのだ。
「きゅっぷ?」
首を傾げるきなこ。
……スライムっぽい楕円フォルムだが、ちゃんと首はあるらしい。
首を捻る度、頭蓋があるような振る舞いをしているが……ほんとに骨、あるんだろうか……にしては抱っこしても疲れない。風船を抱えているような感じすらする。
「ま、風呂入って……寝よーぜ?」
俺はそのままきなこごと浴室に直行した。
結論から言えば、きなこはお風呂が好きらしい。
「きゅぷー!」
体を洗面器に沈め、頭にぬれタオルを乗せて蕩ける。
石鹸で体を泡だらけにしても、頭からお湯をぶっかけても嫌がる素振りなく、寧ろ気持ちよさそうにしている。
すげぇ。きなこ、できる子!
最後に湯を張った洗面器に着水させると、ぬれタオルを自分で乗せて蕩けたわけである。
みっちみっちにきなこの体で満たされた洗面器。
なんか、かわいい。
「きゅーきゅーきゅぷー。きゅっぷぷぷー」
なんか歌いだすきなこ。上機嫌である。
俺はきなこにお湯が当たらないように気を配りつつ、自分の頭や体を洗い、湯船につかる。
あー……沁みるわー……
俺ときなこが同時に吐息した。
「ほふー」「きゅぷー」
極楽、極楽……。




