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#17 ユウキが尋ねてきた……!

 幼稚園から帰ってくると、キャリーケースを持ったユウキが玄関先にいた。


「よっ、ハルト君」

 気さくに挨拶してから、母君に会釈をする。

 少し世間話をしてから、ユウキは俺を見た。


「少し、ハルト君とお話しさせてください」

「あ、はい。ハルトの部屋へどうぞ。ハルト、案内して?」

 母君は不審がることなく快諾して、俺に指示してくる。

 ……いや、思うことがないことはないんだろうけど、俺の様子と、ユウキの立場とか総合的に判断しましたね? まぁ、俺的にも快諾してもらった方が世話ないんだけど。

「はーい、母さん。ユウキさん、こっち」

 ユウキの手を握って案内する。

 部屋に案内し、ドアを閉めてから俺は吐き捨てた。

「なんかユウキをさんづけするの違和感あるわ」

「なんじゃそら……呼び捨てしていいんだぜ?」

 喉の奥で笑みを転がせつつ言ってくれる。

 けどなぁ、お前……

「や、この世界に長くいる神様を、5歳児が呼び捨てしたらだめだろ……」

「ハハハ。気にせんでいいのに」

 ケラケラと笑い飛ばしてユウキはキャリーケース床に置いた。


「すまんハルト」

 キャリーケースを置いた瞬間、本題だと言わんばかりに表情を正したユウキが謝罪を投げてきた。

 なんだ?

「まずは……一匹は保護できた。クリーム色のきゅっきゅちゃんの方」

 キャリーケースの扉を開くユウキ。

 中にはユウキが言う通り寝こけているクリーム色のきゅっきゅちゃんがいた。

 おお、ほんとに保護してくれたのか。

 が、一匹『は』?

「もう一匹は?」

 半ば予想できることだが、敢えて聞く。

 別のところで療養中……なんて虫のいい話もあるかもしれないし?

「手遅れだった。すまん……」

 頭を下げるユウキ。

 いや、お前に謝られても……あ、牧場主はこいつだったか。

「何があったか、教えてくれるな?」

 俺はユウキの顔を真正面から見た。

 

 あの後、ユウキは速攻できゅっきゅちゃん牧場に行ったらしい。

 転送魔法で飛んだらしいから、相当である。 

 速攻でクリーム色のきゅっきゅちゃんを保護して、もう一人。

 マツヤさんを問い詰めて向かったらしい。


 通話で心当たりがあるような節をとっていたが、どうやらもう一匹のきゅっきゅちゃんはクリーム色のきゅっきゅちゃんの母親らしかった。

 

 本来きゅっきゅちゃんは子供を産まない。

 自己分裂による分裂体はいるが、あくまでクローンである。子供ではない。

 

 クリーム色のきゅっきゅちゃんの母親は、他の遺伝子を取り込んで子供を産む体質を持ったきゅっきゅちゃんだった。

 そして、それに目をつけられて、実験体にされていたらしい。


 クリーム色のきゅっきゅちゃんの母親は……ユウキが見つけた時にはもう手遅れで。ほとんど意味消失していたようだった。

 

「遺品と呼べるものもなかった。スマン……」

「そっか、いや……一匹でも助けてくれてありがとう」

 

 一昨日保護できなかった俺では、この子すら失っていたかもしれない。

 この子の母親が、助けを呼んでくれなければ……。

 せめて、昨日の時点で気づいていれば、あの時、声に反応していれば……結果は変わっただろうか?

 俺は静かに拳を握ることしかできなかった。


 ユウキが眉を提げた顔で俺を見ている。

 掛ける言葉もない、ということだろうか。

 確かに牧場主はユウキで。でも、本人が管理してたわけではなく、委託した奴が悪かったという話だ。

 まぁ、その管理人を選んだのもユウキだし、あんまりきゅっきゅちゃんに対する愛がないというのを知ってて管理させ続けてたこいつに全く非がないということは、俺には言えない。

 けど……


「あの、さ」

 暫く思考を巡らせていたが、俺は意を決してユウキに提案する。

「その、クリーム色のきゅっきゅちゃん。俺が保護しちゃダメ、かな?」


 ユウキに任せれないと思ってるわけではない。

 マツヤと比べれば、ユウキはきゅっきゅちゃんに対してまともな対応をするだろう。

 けど、ユウキが付きっきりで見てくれるわけではないだろうから。

 それは今までのこいつの対応を見ればわかる。


 ……ま、言い訳だな。

 俺がきゅっきゅちゃんの傍にいたいのだ。

 一気に全員は無理だから、とりあえず一匹。

 この子を完璧にお世話して信用をとる。

 そして……いつかはきゅっきゅちゃん牧場を俺の手中に収めるのだ。


 いつかはきゅっきゅちゃんの楽園をここに……-八番街-に築く。

 そして、きゅっきゅちゃんの楽園をこの世界全域に広げるのだ。


 俺はこの、きゅっきゅちゃんを世界に満たしたい。

 

『世界の外側』で出会った時から……俺は決めていたのだ。


 だから、この子が俺の第一歩。

 ちょっと、この子を利用する感じになるから、悪いけどね。

 ばれなきゃ、いいよね?


 ユウキは驚いたように目を瞬いている。

 深い青に星雲が滲む不思議な瞳が、俺をじっと見ている。

 なんだか、引き込まれそうな青だ。


「いいの?」

「いいのって……逆に良いの?」

 なんかすんなりOKもらえた気がして、やましい考えを持っている俺は挙どってしまう。

 

「なんか、お前って……きゅっきゅちゃんに惚れこんでるじゃん? べたぼれじゃん? 絶対酷いことしないじゃん? お前以外の適任を、俺はあんまり……知らないなぁ……」


 あ、あのー。

 いや、俺はきゅっきゅちゃんに酷いことなんてしないし、するつもりなんて毛頭ないけどさ……

 数日しかこの世界では関わってないのに、なんでこう信用してるんです?

「あーたー、俺に対して信頼感バグってない?」

「ないない。お前のきゅっきゅちゃんLOVE感は俺の澪夢に対するそれを超えてる。見てればわかる」

「それは言い過ぎでは?」

 いや、それが透けて見えるというなら、俺は相当すぎて、俺自身にひいちゃう。


「いーや、俺にゃわかる。タメはれるか以上だよ。おみゃー」

 ユウキもなんか口調がおかしくなっている。

 大丈夫か? 俺ら。


「ま、まぁ……ちょっと母君に許可もらってくるわ」

「そういえばお前5歳児だし、親の許可は絶対か。アレだったら俺も説得するから、難航したら言ってくれ。加勢する」

「あー……あー……まぁ、最終的には頼むかも? とりまこの子見せるわ」


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