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#13 グッバイきゅっきゅちゃん、また今度。

 この作品では飲酒・喫煙のシーンがありますが、未成年の飲酒・喫煙を推奨しておりません。寧ろだめよ、絶対。

 酒・煙草は二十歳から。


 また、本作品において飲酒・喫煙をしているキャラクターは全員本作品の世界の中で成人しております。


「あ。きゅっきゅちゃん。どうする? また後日にするか」


 ……あ。


 そういえば、今日はきゅっきゅちゃんを見に行く予定でしたね。

 今から戻っても……


 時計を見るといい感じの時間である。

 そろそろ帰らないと夜になってしまう。


「また後日だねぇ……」

「ま、今度はお前の都合に合わせるよ。事前に連絡くれ」


 ああ、サテライト、友達登録してたもんね。


 そうか、ユウキとはいつでも喋れるのかあ、、、

 いや、そう気軽に電話しようとも思わんがね……

 なんせ神様だし。


 しっかし、俺自身の事情で切り上げてしまったが、現実で接したきゅっきゅちゃんは存外に最高な存在だった。 

 牧場に行くのだけでも約半日かかるし、手元に数匹引き取りたいなぁ……

 ペットとして飼えないかな……でも元は魔物らしいしな……きゅっきゅちゃん。


 つか、『世界の外側』で聞いた、『可哀そうなことになっているきゅっきゅちゃん』は、結局どの子のことだったのだろうか。ちょっと触れ合った感じ、牧場でゆうゆうと過ごしているように見えた。あそこに可哀そうな子がいるとは……あまり思えなかった。それとも見えない場所でいたのかな?

 

 悶々と考えごとをしていると、ユウキが虚空に手を突っ込んだ。

 空中にユウキの手が飲み込まれている。全く不思議な光景だ……。

 暫くごそごそと虚空をまさぐっていたユウキだったが、手を虚空から引き抜いた時、手には煙草らしい箱が握られていた。


 ……ほんとこいつ、大人になったんだなぁ……

 俺はまだ5歳だってーのに。

 すこしの羨望も交じった目でユウキを見る。


「タバコ吸うんだ?」

「薬煙草だがな。魔力を扱う者なら大抵吸ってる」

 尋ねれば、素直に答えてくれるユウキ。

 薬煙草……そんなものもあるのか。

「薬……といってもな、燃やして出した煙を吸ってるわけだから、まぁ……魔術をたしなんでないお前には、悪影響……って程のものは出ないかもだが、まぁ。念のため? 離れて吸ってくるわん」

 結局体に悪いのか、悪くないのか、歯切れの悪い言葉を述べつつユウキが席を立つ。

「お、おう……」

 すらっとした体躯で、姿勢よく部屋の外へ歩いていくユウキを見送りつつ、俺はきょどってしまう。ここに一人置いていかれるのも、ちょっと居心地悪いんだが?

「定期的に吸わねーと、体調崩すのよ」

 そんな言葉に俺は少し不安を抱く。

「……麻薬とか、そういうのではないんだよね?」

 煙草とやばいお薬は切って切れないイメージがある。

 なんか、たばこの形しているだけで……とか、ありえそう。

 そして魔術と麻薬も……やっぱ切って切れないイメージあるよね。サバトとか。

「断じて違う。 人聞き悪いこというなぁ!?」

 念のため尋ねたら即座に否定された。

 ちょっと抗議の声を挙げつつユウキが部屋を出ていく。

 ……いや、アブナイ薬やってる人とか、お近づきになりたくないし……


 ……。


 あ、いやいや。かつての友人を心配してるのよ!?

 トウゼンジャァ……ナイデスカァ……ヤダナァ……。


 ユウキはぐるっと玄関から回ってきたらしい。

 窓の外にユウキが見える。

 

 指先に火を灯し、それで煙草に火をつけていた。

 ……魔術師らしい……。


 ところで、アルヴェリア王国は、どの-街-でも、-街-中は魔術・魔法の行使を原則禁止している。

 攻撃魔術はもちろん、転送・転移魔術や防御魔術も禁止されているはずである。


 ……まぁ、ユウキのことだから、そこらへん抜かりはないんだろうけど。

 

 転移魔術が使えるのに、公共交通網でとぼとぼ来たのは、魔術行使が原則禁止されている事情によるものだろう。

 ……あと、純粋に燃費悪いこともあるかもしれない。


 ついでに。

 魔導教の祈堂……前世で例えるなら教会のような場所だ……は、魔術の行使ができる。

 それは、魔導教が魔術師のための宗教だし、魔術の発展を良しとする教義だから、というわけだ。

 母君は魔術師ではないが、魔導教の教徒であるので、何度か祈堂に赴いたことがある。


 敬虔な魔導教徒はガチの学者である。

 魔術を基盤として、世界の深淵を紐解くそれは、まるで学問だ。


 いや、魔術は学問である。

 

 だから、魔導教の教徒は信徒であり、学徒でもある。


 ところで、魔導教の本部はフェンファーゲンにある。

 偶像崇拝禁止の宗教なので、神を模る銅像とかがある訳ではないが、神が住まう社 がフェンファーゲンにあるらしい。

 そういえば、フェンファーゲンの首都は、<一番枝>ケテルだが、魔導教本部は<十番枝>コクマトにある。ケテルは、首都であり、政治の中心だが開かれた場所ではなく、一部の種族しか入ることができない。だからだろうか。

 一応、霊堂と呼ばれる魔導教的に重要な施設はケテルにあるし、ケテルで重要な宗教行事を年数回行っているらしいが、俺は人間だしアルヴェリア国民だからあまり関係ないんだよなぁ……ぶっちゃけ俺は言うほど魔導教信仰してないしな……

どっちかといえば……仏教徒だし、神道が好きである。まぁ、肉体はアルヴェリア国民だが、魂はまだ日本人であるらしい。


 クリスマスやイースターも楽しく参加するので、ほんと心は日本人のままだろう。

 ハロウィンも好き。……前世ではじいちゃん家の台所借りてクッキーとか焼いてさぁ、友達に配ってたなぁ……仮装したりさぁ……懐かしい。


 こっちの世界でも、前世の宗教行事がイベント事として存在している。

 いわゆる『堕ち人の知識』というやつだろう。

 生まれ堕ちた当初から感じていたことだが、この世界……特にアルヴェリア王国-八番街-は異世界っぽくない。

 人間以外の種族がいたり、目の前にいると宣う神様がいたり、魔術や魔法があったり、冒険者という職業、剣などの武器、その他防具を売る店があったり、ところどころゲームじみたファンタジーも垣間見えるが、日常生活に注視すれば前世のころとまるで変わらない。

 食べ物……食文化、衣服や住居、それに文化。

 暦は……有史自体が飛んでもなく長い。女神暦は20000万年を優に超えている。

 が、1年は365日だし一日は24時間で、一時間は60分……つまり前世と同じである。


 そこらへんは、大体が前世の世界からやってきた堕ち人がもたらした前世の世界の知識を活用した結果……らしい。

 あれだ。日本人が米を求めた結果、-八番街-の主食は米中心だったりするし、日本酒という飲み物もある。……ちゃんと酒である。

 そして文化も相当堕ち人の知識が侵食している。新年に神社へ初詣とか、お年玉とか。お花見だってある。

 転移ではなく転生だからというのもあるが、やはり、先輩堕ち人がずいぶん文化的に侵略した結果が大きいんだろうなぁ……こう、異世界っぽくなーいって感じちゃうの。

 

「いやぁ、悪いね~」

 少し上機嫌に戻ってきたユウキが、笑いながら謝ってきた。

 ……やっぱさっきの煙草……

「……麻薬じゃないってば」

 俺の表情から思考を読んだらしいユウキが呻いた。

「原料言っても意味不明だろうけど、説明するかぁ?」

「いや、いい……要らない……」

「とりあえず、1箱あげゆ」

 と、ユウキが俺に煙草の箱をくれた。

 俺5歳児なんだが?

「受動喫煙に配慮して外で吸ったのに箱ごとくれるんすか」

 胡乱気に問えばユウキはカラカラと笑む。

「ま、魔術師の勘だな。きっといつか必要になるぜ?」

「これがシケる前に?」

「開封しなきゃ100年保つぜ」

 わあお、すんげー長持ち! ……まぁ、魔術的何かが施されてるんだろうな。

 

 ……これが必要になることが、これから100年で起こるのか……

 とりあえず、どこにしまっとこかな……

 

 ジーっと煙草の箱を見つめてみる。

 ぱっと見で煙草の箱だとわかる大きさの箱だが、ボタニカルな意匠が施されている。アロマ系の煙草っぽーい。


「市販品?」

「いや、俺オリジナル」

「なのにパケ凝ってんねー」

 エンボス加工の、つる草模様が刻まれた箱である。

 紙製らしいが、妙にしっかりしていて多少乱雑に扱っても大丈夫な感じがする。

 匂いを嗅いでみたが紙っぽい匂いしかしなかった。魔術的なアレか?

「よく出すからな。味気ないのは面白くないだろー?」


 中には20本ほど入っているみたい。開封できないので厳密には分からんが。

 俺はリュックに煙草の箱をしまった。


 帰りは行きを逆にたどっていく感じで。

 家についたのは夜に近い時間だった。


「いやぁ、時間かかったねー」

「なぁ、ユウキ。……きゅっきゅちゃんって、個人で飼えないかな?」

「ほう?」

「……いや、毎日通える距離じゃないじゃん? 一匹くらい……ダメかね?」

「ふにぃ……」


 少し思案する素振りを見せてから、ユウキは俺を見た。

 酷く困った……というか、泣きそうな顔で情けない声を上げた。


「……持ち帰って、検討させてもらっていいですかね……?」

「……まぁ、魔物だしね……でも、きゅっきゅちゃんって今発見されてる分は全部牧場にいるんだろ? で、システムのタカトーが言うにはあの中に可哀そうな目にあってるやつがいる……と。環境替えたら可哀そうな事態が解消できるんでは? と思うんだよね」

「むーん……可哀そうな目にあってる個体……特定できそ?」

「やー……ビミョー。会ってみた感じ……そんなひどい目にあってるとは思えないんだよね……」

 がくっと肩を落として正直な意見を述べる。それにユウキは肩を竦めた。

「まぁ、だよなぁ……心当たりがないわけじゃ……ないんだがな」

「あるんだ? 心当たり」

「あるっちゃ……ある、けど……」

 歯切れの悪い返答ですなあ……

「ま、次のタイミングでじっくり見てくれ」


 ええ……ヒントなしっすか?


 もやもやした気持ちを抱えつつ、俺たちは帰宅することにした。

 

 前書きで成人云々の話をしたので、少しだけ補足。


 この作品の世界には3つの国しか存在しませんが、アルヴェリア王国の成人は基本的に種族別に設定されてます。一律に二十歳にすると、成人前に死んでしまう種族がおるんや……(ネズミ系の獣人は、10年前後で亡くなるんです。あとは虫人族とか)

 そういう短命族の子供は一瞬で成人するので、幼稚園など教育関係は別口で専用学校があります。超絶詰め込み教育らしいですぜ。なんせ10年で死ぬから。10年とか、人間だったら小学……?

 逆に、平均的な教育では成長が遅すぎてついていけない長寿族専用学校も存在します。

 ハイエルフは1万年くらい生きますし、最初の100年くらいは普通に赤ちゃんしてるんで……龍(竜)族も平均5万年生きるんでやはり専用学園行きです。ただ、ハイエルフはその性格というか、文化的に家庭教師を迎えて、家の中で教育する方が多いでしょうね……


 まぁ、そこら辺の教育関係の設定は、おいおい楽屋裏にでも投棄します。


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