#12 異世界転生らしくなってきたな……
数度瞬きすると、そこは室内だった。
白を基調にした家具で揃えた落ち着いた雰囲気の部屋だった。
「適当に座れー?」
と、ユウキが少し離れたところから言ってくる。
どうやら、部屋に備え付けられたキッチンでお湯を沸かしている様子。
あれか、お茶の用意とかしてんのかな?
いつの間に……。
俺の傍らには白い布地のフカフカそうなソファー。
……少し、いや、すんごく高そうだ。
ちょっと、座るのに二の足踏んでしまう。ためらうわー。
「お前……5歳だもんな……ジュースとか、ないんだけど」
「お茶でいいよ」
そういいつつソファーに座る。
思った以上にフカフカだったし、でも体をしっかり包んで支えてくれるから腰が痛くならなそう。
……やっぱお高いソファーだ。
「お菓子ならあるから食いながら話そうぜ?」
ユウキが大きなお菓子皿に山盛りにお菓子を盛ってやってくる。
「で、なんかあった?」
菓子皿からチョコレートを引っ張りつつユウキが問いかけてきた。
その声はいつも通り軽い。まぁ、そういう態度はありがたい。
変に気を使われても、ね?
「意識してなかったんだがな……俺、この世界のこと、知り過ぎてね?」
だから、俺は素直に答えた。
「ん?」
「5歳児がさ、魔力炉の仕組みとか知ってるもん? それを、親が教えてくれるもん?」
「あ、あー……」
何か、得心いったといった様子でユウキが声を挙げる。
俺は構わずぶちまけることにした。
「俺、お前が『天地開闢を見た』って言った瞬間さ、『ああ、創世神なんか』って思ったんだよ。あっさり受け入れたんだよ。あり得るか? そも、創世神なんて言葉……どっから仕入れたんだよ。俺」
「ハルト君」
ユウキの声は、酷く穏やかだった。
真摯だが、気負いしない顔で足を組む。
カッー! 美人がやるとアレだな! 様になるなー。
「お前、異世界転生者じゃない?」
あまり予想できなかった言葉だった。
確かに俺は転生者だ。
「関係あるん?」
「ある……と、言えばある。……んーだがー……」
歯切れの悪い反応である。
「転生者って、今じゃ珍しいからさあ……こう、神がさぁ……いろいろ祝福するんよ」
言葉を選んでいるのか、考えもってユウキが言葉を紡ぐ。
人差し指を立て、片目を閉じつつ説明する様は、なかなか……見とれてしまう。
美人は反則だなぁ……。何やっても様になる。だが。
「祝福」
オウム返しに返しつつ、考える。
祝福……か……?
前世の、ウェブ小説を読み漁った知識から言えば……
神の祝福は、人間に対して碌な作用をしない。
別に神が人間を困らせてやってるわけではないのは、わかる。
ただ、単純に。神の感覚と人間の感覚が乖離しまくってる結果である。
脆弱で矮小な人間に、神の恩寵は……最早……劇物なのだ……災害なのだ……
ひとえに……人間がひ弱なゆえに……!
「……あんのー……一応、お前の目の前にいる俺も神だからな?」
組んだ足の上で頬杖をついて、呻く。
「そういえばそうだった。というか、お前、創世神だから、並みの神様よりやべえのか」
「酷い言いがかりだな。つか、そういう意味ではアイツの方がやばい」
「アイツ?」
「システム。で、たぶん原因はソレ」
「システムのタカトー?」
意外な返答、その2。まさかシステムのタカトーがでてくるとは。
「根源接続ってスキル、祝福として授かってんじゃね?」
「……」
根源接続?
「何それ」
「……まぁ、呼び名は俺が勝手に名付けたっていうか……どっからからの受け売りだが……疑似全知全能的なやつ。世界の中枢にアクセスする権利っていうかね。やろうと思えば何でもできるぜ?」
そう答えるユウキに、俺は複雑な感情を抱く。
正直……
「……わあい、要らねえ」
疑似全知全能なんて碌なスキルじゃねぇ……
「言うと思った。たぶん、自覚してないからコントロールできないだけで……オンオフできるんじゃね?」
「へー……オンオフできない類もあるんだ?」
「あるぞ。勇者の魂とか」
「おん? 勇者?」
いるんだ? 勇者。ほんと、異世界ファンタジーだなぁ……
「いるっていうか……お前」
わい?why?
「あ、気づいてなかったんだな。そらそうか。前世の記憶はあってもなー……そこらへんは気づかんよなー……むふふ」
嫌らしい笑みー。いやらしーんだ。
……というか、ほんと人知を超えた整った顔立ちだ……
俺も、母君と父上の遺伝子を受け継いでいるので、人間にしてはいい顔立ちをしているが……こいつには流石に負けるわ。
「な。なによぅ」
「いや、イケメンだなぁ……って」
「現実逃避かね? 現実逃避だな? まぁ、現実逃避するのは自由だが、ちょうどいいから教えとくわ。いいか?」
真剣な顔でユウキが身を乗り出してきた。
「お前の魂は勇者と魔王、両方の性質をもってる。さらに根源接続者で、たぶん不老不死だ」
「不老不死?」
疑似全知全能なら不老不死もあるか。……なろう展開っぽーい。
転生したらチートスキル持ちですかー。彼女の一人や二人でもできるんですかね?
この世界がウェブ小説なら大人になった俺は勝ち組確定。ハーレムで大金持ちでむふふだろう。……まぁ、これは現実だし、異世界ファンタジーっぽいけど、そこまでおいしい展開はしないだろう。……どの世の中も、言うほど甘くない。
「半分以上人間から乖離している。気をつけな? 俺みたいになるなよ?」
「おん?」
俺みたいに……? ユウキはなにか痛い目にあったのだろうか?
まぁ、長く生きればイタイ記憶も、あるか。
「理解が追い付いてないな? 魔王の性質は、この世界じゃあまり関係ない。お前が司る魔界もないしね。魔王だからって殺しに来るやつもいない。この世界じゃ等しく命だからねぇ。……問題は、お前の家の……アーバインの本家がフェンファーゲンにあることと、勇者の性質の方だ」
「なんか、あるの?」
アーバイン家の本家が問題って……一応分家だが曾爺様と曾婆様の代から亡命してるし、実質の縁はない。それでも問題って……。つか、フェンファーゲンにあることが問題なのか? それに魔王の性質より勇者の性質のほうが厄介?
頭の中をハテナで満たしつつユウキの言を聞く。
混乱したままだが、とりあえず情報が欲しかった。
「フェンファーゲンの元老院は勇者を集めてる。結局は兵器としての運用して考えてないからねえ、アイツら。特に君は人間だしね。フェンファーゲンは、エルフ至上主義だしね。エルフ以外は人間ではない扱いだからな? だからお前んひいばあさんは亡命したんだろうな。つか、お前のひい婆さんマジですげえな。あのエルフ至上主義で人間に恋したんだろ? しかも黒。黒のアーバインは、マジで……まじで……マジでさぁ……アイツらどうにか出来ねえかな……ホント……」
最終的に頭を抱えだすユウキ。
……なんか、うちの本家がスマン……。
と、言っても俺は本家の人間を知らない。
そもそもここはアルヴェリアだし。アーバインの本家とはほんと、交流がないのだ。
ユウキの言動が本当なら、まーじで人間である俺らには興味ないだろうしねー。
あ。でも俺勇者の性質があるから? そこらへんばれるとややこしいのか。
まぁ、知ってるのは俺とユウキだけっぽいし? 気を付けよう。うん。
そういえば、適当なネーミングが思いつかずに、ちょっとよそからパチッってきたんだけど……ユウキが転生した時代にあの作品ってあったのかな……とか調べてたら、ファンによる造語なんですね……いいのかな……アリかな? ユウキは多分いろんな時系列を集約しているので、未来の知識も持ってるから、多少年代ずれても大丈夫……大丈夫だよね? ね? アイツ神様だから多少の整合性の乱れも跳ねのけてくれるさ……




