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#10 そうです。これこそがきゅっきゅちゃん発電所

 事務所前で待っていると、マツヤさんがリヤカーを引っ張ってやってきた。

「いやあ、お待たせしました。では行きますか」

 発電所でリアカーをどう使うんだと思っていたが、どうやらきゅっきゅちゃん運搬用だったらしい。

 牧場の方へ行ってから、リアカーにきゅっきゅちゃんを乗せていく。

 きゅっきゅちゃんも心得たもので、自らリアカーに乗っていく。

「きゅっきゅちゃん!」「きゅっぷー!」「きゅきゅーん!」

 その様子は楽しそうだ。

 100匹前後乗り込んだリアカーをマツヤさんが引っ張っていく。

 まあ、きゅっきゅちゃんは軽いから、100匹乗っても大丈夫なんだろうか。


 リアカーをひいたマツヤさんは倉庫のような場所へ向かっていく。

 今度は何じゃろ? と覗き込むと、銀色のでっかい筒があった。

 直径6メートルほど、高さ5メートルほどの筒。壁は結構ぶ厚そう。

 ゴウンゴウンとかなり大きな音を立てている。

 ぶっちゃけうるさい。


 そんな銀色の筒の前までリアカーを引っ張っていき、筒の前についているバルブを回す。

 隔壁が開いて、中から100前後のきゅっきゅちゃんが飛び出してきた。

 そしてリアカーに乗っていたきゅっきゅちゃんと交代していく。

「きゅきゅー」「きゅっきゅー」「きゅっきゅきゅきゅー」

 鳴きながら、リアカーに乗ってたきゅっきゅちゃんと筒から出てきたきゅっきゅちゃんがハイタッチして場所を交換していく。

 パアン、パアンッと小気味よい音が各所で響く。

 リアカーに乗っていたきゅっきゅちゃんが全員銀色の筒に入ると、マツヤさんが隔壁を閉ざした。

 再びゴウンゴウン轟音を響かせだす。


 あーえー……と?


「とまあ、これがきゅっきゅちゃん発電です」

 宣うマツヤさん。すこしドヤ顔である。

 いや、マツヤさん? あんのー……

「は、はあ」

 戸惑いつつもうなづくしか無い俺。

 あの、説明……これだけ?

「なんも説明してないな?」

 半目で呻くユウキ。完全に呆れている。

「だってユウキ様? こんなとこまでくる人居ませんしねえ。説明、ですか……基本的には魔力発電ですよ。魔力発電、わかる? ぼく?」


 魔力発電って……あれだろ? 魔力を抽出し、そっから電気に変換する発電方法……

 メジャーなのは精霊炉と龍脈炉で、前者は精霊を炉内に集めて魔力を抽出する方法で、後者は地脈から魔力を吸い上げる方法。

 前者は何処でも作れるが、出力は低め。

 後者は大出力だが、地脈の魔力を吸い上げているので地脈が太い場所ではないと設置できないし、環境問題にも直結している。


 なんというかな……地脈も有限だからね……地下水とかと感覚は似ているだろうか? 地脈は生命の育成にとても重要な要素なので、組み上げすぎて地脈を弱らせると作物にダメージがいくし……不作になんかなったら……この-街-が崩壊するしな、うん。


「精霊炉……では、ないんですよね? きゅっきゅちゃん、生体ですし」

「そだねぇ、生体式魔力融合炉、とでもいえばいいかな。この炉の中にきゅっきゅちゃんが入ると、勝手に魔力を放出して増幅させていくんだ」

「勝手に?」

「そう、勝手に。理屈はよくわからないんだけどね……どうやら一定範囲に大量のきゅっきゅちゃんがいると魔力を増幅させていく特性があるらしくてね……こう、魔力を拡散させないように筒に集まってもらってるんだよね……きゅっきゅちゃんは楽しそうにしてるから、苦痛はない、みたいだよ?」

「中は高密度の魔力が液体状に満ちてるみたいでなぁ……今隔壁開けたらこの場一体が魔力障害で土地が死ぬ」

 とんでもないことを言い出すユウキに俺は仰け反った。

 土地が死ぬほどの魔力障害って……恐るべし、きゅっきゅちゃん。すごい子。

「何その……え、龍脈式じゃないよな……?」

 戦々恐々としながら尋ねれば、肩を落としてユウキが呟く。

「出力的にはそれに近いか以上じゃね?」

「うへぇ……」

 キュートなのにデンジャラス。

 俺のきゅっきゅちゃんの印象が少し変わった。

「一定時間経つときゅっきゅちゃんが発電をやめるから、それが交代の合図かな」

 ああ、交代時間もきゅっきゅちゃん任せですか……

 ……。

「まぁ、しばらくは出てこないし、この子達も広場に戻したいから移動しようか」


 マツヤさんが促すので、俺たちは発電所(?)を出ることにした。


「きゅっきゅちゃん達って、何食べてるんですか?」

「基本的に何でも食べるよ。でも、牧場では飼料……ペレットを食べてるね」

「……一応魔物だから、さ。人間が食ってるものも食えるんだけど……正直、金掛かり過ぎるからペットフード食ってもらってる」

 耳元でユウキが囁いた。

 あー……

「もしかして、マツヤさん、きゅっきゅちゃんが何か良く分からずに管理してはる?」

「いえーす。この男……マジでそういうこと興味ねえの」

 こそこそと内緒話する俺ら二人にマツヤさんは気弱そうな笑みを向けて小首を傾げた。

 きっとあれだ。この人、陰キャだな。


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