#1 開幕死んじゃったんですが……?
きゅっきゅちゃんといっしょ! ~転生して最強俺TUEEEスキル網羅されたけど、そんなことより目の前にいる未知の生物を殖やしたい~の書き直し分……っぽい何かです。
かなり魔改造した気がするので、ストーリーは近寄ったり、全然違ったりする……と思います。
自分は幸福である。
……とは、流石に思っていなかったが。
別に不幸だとも思っていなかった。
父がいて、母がいて。兄と妹がいて。
雨風凌げる家があって。
ふかふかの布団に3食の飯。
じいちゃんだって可愛がってくれていた。
じいちゃんは和菓子屋の店主をしていて、じいちゃんの作る和菓子は世界一旨いんだ。
嗚呼、今まで不幸な人生だなんて思ってなかったんだ。
でも、これはない。
ごめん、じいちゃん。
俺は、不孝者だ。
† † †
なんとなく、帰るのが嫌だった。
だから、少し寄り道をした。
コンビニに寄って、今週の週刊誌を立ち読みしていた。
そろそろ帰るかと顔を上げた瞬間、衝撃。
結果を言えば、コンビニに突っ込んできた車に巻き込まれた。
即死、だったんだろう。
死体は車の下に潜り込んでいて判らない。
気づいたら俺は車の傍ら、意識だけで漂っていた。
幽霊……ってやつだろうか。
困った。と、頬を掻く。
まず思ったのは、幽霊って実際あるんだなってこと。
テレビで見る心霊現象特集なんて、創作だって笑ってたけど、俺自身そうなってるんだから、俺みたいなのがいっぱいいるんだろう。きっと。
惜しむらくは……一緒に笑ってたじいちゃんにこの事実を教えることができないことだ。
まぁ、じいちゃんも後10年か20年かくらいにはこっち側である。
別に教えなくてもわかるか。
で、現実問題。
あの世、とかあるんだろうか。
こう、死神? とかお迎えとか来るんだろうか。
それとも自分で何処かへ行かなきゃ行けないんだろうか。
三途の川? それとも死で山?
それらしきものは見当たらない。
ということは、俺は地縛霊になったのか。
70手前のじいちゃんに、ひ孫を見せてやれんかったのは未練といえば未練だが。
うーん? と首を捻っていると視線を感じた。
まあ、どえらい事故である。
コンビニに突っ込んだ乗用車は商品棚をなぎ倒してすっぽりコンビニに収まっている。
運転手は放心して座ったままだった。
高齢者。じいちゃんと似た年齢だろうか。
おおかたブレーキとアクセルを間違えたのだろう。エアバックに埋もれているが、さほど大きな怪我は無さそうだ。
まあ、俺以外に死者はいないらしいので、それは良かった。俺が死んでるから良くないが。
ふと、視線が気になった。
初めは事故現場を野次馬している視線かと思ったが、なんとなく様子がおかしい。
視線を辿っていると奇妙な美女と目があった。
なんといえばいいか。コスプレ?
黒を基調にし、赤をアクセントに散りばめたゴシック調のワンピースにコート。
毛先が赤い、銀髪で。瞳は金色。
美女だ。とっても綺麗な人。
だけど近づきたくないオーラがある。
気圧される以上に、変人そう。
編み上げブーツでツカツカ音を立てて近寄ってくる。
「やー、災難だったねえ」
にこにこと笑う彼女は明らかに俺を見ていた。
やっぱ変な人だ。
「見えるんですか」
尋ねれば、女性の笑みが深くなる。
「うんうん。意外と冷静だね? それとも現実逃避の賜物かにゃ?」
言ってることは煽りそのものだ。おちょくってるのか。
が、まあ。確かにパニックになっても不思議でないはずなのに、妙に冷静な自分がいる。
死んだ実感が無いからか、はたまた逆か。
「どうしたらいいと思います?」
彼女が死神とかお迎えだとかは到底思えないが、尋ねてみた。
彼女はぶぅぶぅと不満をたれた。
「つまんなあい。反応がつまんないよきみぃ」
やっぱ面倒くさい人だなぁ……話しかけなきゃよかった。
後悔がじわじわ背中を浸す。
でも、話しかけれる人は目の前のこの奇妙な女以外いないのだから、しょうがない。
「はあ」
面倒くさいを前面に出した、投げやりな反応をしてみるが、この女には意図が伝わらなかったらしい。むいむい文句を言ってくる。
「君、中学生だるぉー? 多感な時期なのに枯れてないかあ?」
「はあ」
あー……もう無視してどっか行くか。
俺の目が据わってきたことに気づいたのか、違うのか。女性が少々焦りだした。
「まあ、掛け合いを楽しんでる場合じゃないな? そろそろ時間だ。行くぞ少年」
「どこへ」
不機嫌気味に問いつついそいそと歩き出した女性の後を追った。
まあ、あの場所で地縛霊になるのも嫌だしね。
「所謂霊道ってやつだ。異世界への道のりでもある。少年、ファンタジーは好きかい?」
「ネット小説はよく読んでたけど、、、異世界?」
趣味としてネット小説やライトノベルは読み漁ってたし、異世界転生ものは割りと好きなジャンルだが……え? なに。異世界への道のりって何。
薬でもキメてらっしゃる?
困惑しつつ女性の反応を伺えば。ニャハハと笑われた。俺はコイツについて行って良いのダロウカ……
「ま。霊体だしね。向こうについたら赤ん坊だろうけど。どこまで記憶が残るかもしらんがね? 詳しい話はしてあげない。面倒だし」
まくし立てながら女性は道を逸れて獣道を登りだす。
神社の敷地内らしいが、どこへ行く気だ?
道のりは険しいが、思っているほど長い距離ではなかったらしい。
「取り敢えず」
そういって彼女は立ち止まる。
背後には大きな木。この神社のご神木。
そのご神木の前に不自然な洞が見える。
本来ありえないだろう、人一人くらいははいれそうな洞。
それは底がなく、吸い込まれそうなくらい深い。
「約束は果たしたぞぉ? アッ君?」
その言葉を聞いた瞬間、背中に衝撃。
あの奇妙な女が俺の背中にタックルしたのだと気づいた時には俺は洞に身を投げていた。
ーー堕ちる。
暫くは毎日投稿を目指したい……感じです。