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〜第1章〜ヘルトーナメント③

 片や不安がるネーレを裏腹にスナック菓子を頬張りながら楽しそうに試合観戦をするウロス。

そしてあっという間に時は回ってきた。

2回戦は等活地獄からきた者同士の試合であった。

先の戦いで手に入れた剣を用い、見事に圧勝を決めたネーレ。

勝つことはもちろん嬉しかったが、言葉にし難い思いがネーレに積み重なっていた。

そして3回戦。

対戦相手はネーレよりも先に会場入りし、正座して待っていた。

ネーレが着くと、目の前の男は染み渡る低い声で語りかけてきた。

「拙者、柳生と申す

 恥ずかしながら名は忘れたが、この姓だけは誇りある武士の家系故忘れるわけにはいかない」

その言葉の後に試合のゴングがなった。

ラヘルお決まりの選手説明等の言葉は柳生の話に集中していたせいか聞こえなかった。

試合が始まりネーレは剣を構えた。

が、柳生は座ったまま動かず目を閉じて話を続けた。

「拙者は自分の名とこの地獄へ落ちた理由を思い出したい

でなければ、罰を受けることの贖罪にならぬ」

話を聞いてネーレに疑問が浮かんだ。

「ならどうして構えないんだ!どうしてそんなに隙を作って…」

その問いに柳生は心を見透かしたように即答した。

「其方には、迷いがある

 死なないと分かっていても、この緊迫した戦いの中で斬りかかる寸前腕が鈍っている。

 そして、急所を捉え仕留めた後必ず悲しげな顔を浮かべる」

 その言葉にネーレは今までのモヤモヤをぶつけるように反論した。

「しょうがないだろ!記憶はないのに体は自然に動いて……

俺は人殺しなんてそもそもしたくないんだ」

柳生はその言葉に微笑んだ後、ネーレに真っ直ぐな瞳を向け挑発した。

「其方は強い、だがそれ以上に優しすぎる。

 なぜ其方がこの地獄にいるかわからぬが、その迷いあっては拙者には勝てんぞ」

迷い……ネーレ自身には気付いていた。

自分が勝ってろくでもない記憶を思い出すよりも、柳生のような意思あるものが勝った方が良いのではないかと。

今までの対戦相手たちは、少なくとも記憶に対する意志が弱く感じていたが、初めて見る心身ともに強き者に、ネーレはその迷いを隠しきれないのだ。

「俺は…どうすれば…」

迷うネーレにようやく柳生が立ち上がり腰につけていた刀に手をかける。

そのとてつもない気迫は罵声を吐いていた鬼達まで静まり返るほどだった。

独特な構えをした柳生は大きく声を上げネーレに伝える。

「3つ数える。

 後、拙者は其方の命を奪うであろう。

 覚悟がなければ防ぐことはできぬ。」

慌てるネーレを見つめたまま柳生がカウントを始めた。

「参、弍、壱!」

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