〜第1章〜ヘルトーナメント編②
「え?」
カティが立ち止まりこちらを見ていた。
「キキッ!今何しやがった?お前」
ネーレにもわからない。
明らかに攻撃はネーレの目の前まで来ていた。
足元を見ると爪先までは地面が削り取られている。
なによりもっとも疑問だったのは、仮に何かの力で斬撃を消したとしても時間の辻褄が合わないのだ。
「キキッ!ならちゃんと俺が切り刻んでやるよ!」
カティがネーレに向かってまた走り出す。
(逃げなきゃやばい)
急いで立ち上がり走り始めると頭にまたさっきの声が響いてきた。
((相手をよく見ろ、貴様なら勝てるであろう))
威圧的でどこか懐かしいその声にネーレは反抗した。
「闘うってどうやって!
俺は名前以外の記憶がないんだ!
というかそもそも誰なんだお前は!」
期待した返事ではなかったが声はネーレに続けて語りかける。
((全く…これは我からのプレゼントだ))
途端、ネーレの目の前に光の柱が現れ、その中には剣が浮かんでいた。
ネーレはなんの迷いもなくその剣を掴みとると、カティに向かい闘志を構えた。
カティは立ち止まり今までのにやけ顔が曇り始める。
「キッ、こいつ…隙がねぇ…。」
先程の余裕が消え、一呼吸入れた後カティは少し嬉しそうにネーレに再度飛びかかった。
明らかに先の攻撃よりも勢いが早いはずなのに、ネーレの目に映ったカティはまるでスロー再生したかのように遅かった。
カティの攻撃を素早く左に避け、そのまま流れるように剣をカティの腹部に刺した。
自分の身のこなしと躊躇なく相手を刺したことにネーレ本人が1番驚いていた。
「キキッ…つえぇー……」
カティは仰向けに倒れ、笑いながら息絶えた。
「お、おい!しっかりしろよ!
俺何が起きたかわかんなくて
とにかく目を開けてくれよお!!!!!!」
……数秒後カティは目を覚ました。
「キキッ、死なねーよ ここ地獄だろ」
そしてゴングは鳴り、ラヘルが叫んだ。
「勝者ゃ!!!ネーーーーレェェェーー!!」
歓声とともにネーレの元にウロスは駆け寄ってきた。
「さっすがネーレだギィ!ネーレが1回戦なんかでやられるわけないギィ!でも少しヒヤヒヤしたギィヨー」
キャッキャ喜ぶウロスだったが、その頃にはカティの姿はそこには無く会場出口付近まで歩いていた。
その背中には悔しさなどの感情は伺えなかった。
その後すぐ今後ためにウロスと観客席へ行き試合を見学することとなった。
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本日予約投稿し忘れたため13時になってしまいました。
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