細胞
陰語があります。苦手な方は注意してください。
濡れた。
熱い。
柑橘系のガムを食べる女はキライだ。こいつはその分類らしい。しかもざらざらする。体がビリビリする。いちごみるくの飴が好きだった、昔の女はとても心地よくつるつるしていた。とても幸せな気分になれるのだがいちごみるくの女は僕がキライだったそうだ。
僕という塊はぐちゃぐちゃになってくる。僕の内側にいる赤いホースは膨れあがっている。空気が薄い。僕の塊の中心から漏れる白いのと柑橘系の臭いのする粘りけのない液体とホースの中を走る赤いので、僕はひどく濡れて湿ってびしょびしょだ。ざらざらする。少しだけくすぐったい。
柑橘系の臭いが遠ざかる。女がごそごそと動く。主人も女も大きすぎて僕にはよくわからない。しかし夜中に主人がみる本で、僕は人間の全体図を理解している。人間の体というものは複雑でありとても気持ち悪い。女が目の前で静止した。
あ、こんにちは。始めまして。
僕は僕に似た、しかし僕とは違う染色体xxとお見合いをした。
こんにちは。あなたとてもいい香りだわ。
赤い。この女のxxは赤い。いちごみるくの女のxxは黒かった。主人はピンク色のxxが好きだ。でも僕は苦しいから黒いxxのほうが好きだ。しかし目の前のxxは赤い。
素敵な色だね。
あら、私、自分の色は見たことがないわ。どんな色をしてるのか教えて。
赤いよ、綺麗に見える。
ありがとう。でも私、赤は嫌いなの。あなたはピンクだわ。私よりきっと可愛い。
いっぱいいる僕と、いっぱいいるxxはおしゃべりをはじめた。会話が弾む度に距離が縮んでく。
粘膜接触。
主人の脳は喜ぶが僕は少し辛い。
xxと触れる。
xxだらけの密室におしこまれる。
熱い。赤いxxは意外につるつるしていて触り心地は良かったが、狭くて辛い。主人はこれが大好きだ。僕は息苦しいからあまり好きではないけど、終わったときの解放感は好きだ。主人が僕の塊を動かす度にあまりの速さで目がまわる。擦ったせいで僕が少し死ぬ。xxも少し死ぬ。ものすごい数が死ぬ。でも僕の塊の中ではほんのわずかだ。
女の声が聞こえる。xxはまるで空爆の落ちた海だ。僕の内側で赤が激しくマラソンをする。
xxへ僕の先端から白いものが流された。
子宮へ陰茎から精液が流された。
end.
小説の主人公は「陰茎の細胞」です。人間が欲求や美を感じる対象は、他の生物、もしくは自分が自分と思っている思想以外の部分にさえ否定されるものに過ぎない。全てが自己満足。他人から見た自分は自分が思ってる何百倍もグロテスクで理解できないものだ、ということを表したかった。同時にそんな中で他人を好きになったり、何かを素敵だと感じるのは奇跡だ。その奇跡の中だから人は繋がると思う。