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旅先で優しくされると素直に受け入れちゃうよね。

エタらない様に頑張ろう!(飲酒する音)(2缶目に行く音)

「……えーとだな、どっから話そうか……」


先程やや残念気味なトークスキルを披露した赤髪の青年は、バツが悪そうに後頭部をポリポリと掻いている。目を閉じて如何にも言葉に詰まっている様な仕草を見せているが……後ろから先程までキッチンに居たであろう店主らしき人がこっそり近寄っているのには気付いていなそうだった。


ナイスミドルな風貌の店主(?)は私に「しーっ」と言ったジェスチャーとウィンクをすると、赤髪の青年の耳元に


「HOOOOO!!!」


「どわぁぁぁっ!??!?」


……と、スポーツを観戦するファンが上げる声援の様な、あるいは陽気な学生が酔っ払った時に上げる雄叫びの様な甲高い声でドッキリ(?)を仕掛けた。


そこは『軽く息を吹きかける』とか『何か囁く』のが普通でしょう!?


「あっ、今キミ『普通じゃないなこのイケおじ』って思ったでしょ?」


「えっ?あっ、半分?合ってます……?」


「あぁ、イケおじって所は正解だったか」


私があからさまに困惑と不信が半々の表情をとろうとした瞬間、漫画のような驚き方をした赤髪の青年が店主(?)に「頼むから!!!いきなり驚かすにも!!!!限度があるだろって!!!何回目だよ!!!!」と言い寄っていた。


この状況をアイちゃんが見たらどう思うだろうか。


「(……吉〇新喜劇?)」


こいつ……脳内に直接……!?


しかも新〇劇知ってるの!?なん〇グランド花月に見に行ったの!?!?


「……よし、緊張も溶けた訳だし、まずは自己紹介でもしたらどうかね?」


「あー……そうっすね、新入りの為にもそれから行くかぁ」


よしじゃないし、新入りでもないのだが。


何故か勝手に新入り認定をされた上に自己紹介をする流れになっている。早速店主であろうおじさんが話し始めた。


「オジサンの名前は「バンリ・モモカワ」。日本出身、特技は料理。こう見えて元々お弁当屋さんをしてたのさ!」


私は椅子を後ろに倒す勢いでバン!と立ち上がると、ここ数年で一番の興奮を帯びたまま捲し立てた。


「日本んんん!?日本から!?!?来たんですか!?!!?」


「まぁまぁ、話は最後までよく聞くといい。ま、彼の自己紹介に移ろう」


話を詳しく聞きたいのは山々だが、流石に少し失礼だと思ったので黙って従うことにした。


「えー、俺の名前は「セメス・スールヤ」。ネヴィ・ネアト南方の村出身、特技は大工仕事……と、軽く炎の魔法が使えるぐらいだなぁ」


ネヴィ・ネアト……?炎の魔法……??


「ええと、セメスさんは……この世界出身なんですか?」


「いや、俺は『ウィアデニア』っつー世界……まぁ簡単に言ったら異世界ってとこ何だが、そこで仲間を連れてトレジャーハンターの真似っ子をしてたら変な装置に巻き込まれちまってな、気付いたら着の身着のままで近くの森で倒れてたんだ」


凄いぞこの人、1聞いたら勝手に10喋ってくれる人だ。


しかも話を聞く限りだと、どうやら現代日本以外の世界からも転生する人が居る事がわかった。


「……で、キミの自己紹介はまだかね?」


「ああ、私は……」


私には元の世界の名前とこの世界での名前の二つがある。どっちの名前を名乗るか一瞬悩んだが、冒険者証に記されている方の名前を使った方が後々面倒な事が怒らなさそうだと判断した為、こちらの世界で得た新たな名前を名乗る事にした。


「私の名前は「斧樹羅善」。日本出身の大学生です。特技は……特技?」


「パッと思いつかないなら個人的な趣味とかの方でいいよ~」


「あっ、では趣味はノープランな旅行ですね。元々文芸部の学生だったんですけど交通事故にあって……気づけばこの世界に転生しちゃったみたいです」


「おお!キミは大学生だったのか!」


「……ダイガクセイ……って学徒か何かか?」


「ま、それは置いておいてだね。羅善君、キミは転生する直前、平成何年だった?」


「あの……平成ではなく令和……って言う元号の元年でした」


なんか日本でよく読んでた漫画で元号が変わっている事に驚くネタがあった事を思い出したなぁ……


「元号……変わっちゃってるじゃないか!?」


そうそうこの流れだよ!ほぼパクリじゃん!!(某鬼退治漫画)のパクリって言われちゃうよ!Twitterだったら(某鬼退治漫画)のパクリだってプチ炎上しちゃうやつだよ!!


「……で、だ。おじさんはそこそこ前に異世界転生をかましちゃってね、こうしてしがない喫茶店のマスターとして活動しながらセメス君みたいな迷い込んじゃった人を世話してるのだよ」


「はぁ……つまりセメスさんはバンリさんの元で住み込みで働いてるわけですか……しかも転生者の世話をしてるなんて……と言う事は……」


「そう、キミが望むのなら!この店で!!住み込みバイトとして雇ってあげよう!」


後ろにバァーン(リ)!!と言う擬音が見えた気がした。


何もかもよく分からない世界で、転生者を保護する事に慣れていて、オマケに働きながら小銭も稼げる……


「今日からお世話になりますッッッ!!!」


私は綺麗に90°の直角のお辞儀を繰り出した。


「そいじゃ、今日からキミはファミリー同然だ!とりあえず店の奥に空き部屋がある。そこをキミの部屋として使っていいよ~。隣の部屋にはセメス君が居るから何か困った事があれば聞きに行くといい」


「よっし!俺の事は兄貴分として見てくれ!改めて、これからヨロシクなぁ!羅善!!」


すっっっごく手厚い歓迎を受け、私はホクホクと温かい気持ちで新たな自室へと向かっていった。


────これから何が起こるかなんて、この時は考えもしていなかったんだ。


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「……ふーん…………イイじゃん…………♡」


どこかで、月下に佇む『何か』がペロリと舌なめずりをしていた。

(感想とかコメントとか評価が欲しい事を暗に示す音)

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