現実はいつも予想の斜め上を行く。
勢いで書くのは大切だけどプロットが総じて狂いだす
カランカラン、と心地よいベルの音が年季の入った部屋へと響く。キッチンではリズムの良い包丁の音や景気のいい肉が焼ける音が鳴り、アンティークな窓から入ってくる夕日が部屋の中をゆったりと照らす。
「ほ~ん……お洒落な喫茶店だなぁ……」
飯屋へ入ろうと思いひたすらに街をウロウロした私は、日が傾いた頃にやっと日本でも見かけるような喫茶店を見つけ、空腹を満たす為……と共に、この世界についての情報収集をする為にも入店したのだった。
店の中は殆ど人が居ないので、緊張しっぱなしだった体も人目をあまりはばかること無くグーッと伸ばせる。……さて、折角来たのだし早速何か注文してみようかな。ええと、メニューを開いて……と。
『エメラルドストームコーヒー』(甘酸っぱいよ!)
『ディープオーシャンコーヒー』(かなり苦いよ!)
『マスターおすすめブレンドコーヒー』(超美味しいよ!)
『豆乳ココア』(甘いよ!)
『特製エスプレッソ』(ここに豆乳を投入……!)
……中々面白いマスターなのかな?エスプレッソの項目がなんとなく腹立つけど。
まぁ、とりあえず飲み物は豆乳ココアでいいや。疲れた体には甘いのが一番だからね!……そうだ。食べ物系はマスターのオススメなんて聞いてみようかな。
「すいませーん、注文良いですかー?」
キッチンの方へと声をかけた。
「注文?何にするんだ?」
いきなり真後ろから声をかけられた。カッコ悪いけど驚いてわかりやすくビクゥッ!としてしまった。
「驚かせちまったか、悪いね。で、何を注文するんだ?」
振り返ると、『thousand・sparrow』とロゴの入ったエプロンを着た赤い髪の青年が面倒臭そうに立っていたのだ。
「あ、ええと……この[豆乳ココア]と……あとはそうだな。食べ物系でオススメのメニューって何g」
「サーモンのサンドイッチだ。美味いぜ?」
食い気味に言わんでもいいじゃない。
「じ、じゃあそれでお願いします」
店員らしき赤髪の青年はキッチンの方へオーダーを伝えると、カウンターに置いてあった布巾と霧吹きを持っておもむろに窓掃除を始めた。かなり手際が良いな……
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暫くすると先程の青年がお盆に乗ったココアとサンドイッチを持ってきてくれた。日も暮れ、壁に掛けられたランプの灯りがまろやかに光っている。空腹もそろそろ限界だったので、早速実食に移る。
『豆乳ココア』
普通のミルクココアに比べ、豆乳独特のハッキリとしたコクとスッキリした後味がココアにドンピシャで合っており、毎日飲んでも飽きない味に仕上がっている。マシュマロが別添えで置いてあるのも嬉しいところ。
『サーモンのサンドイッチ』
下からトースト、レモンマヨネーズ、レタス、スモークサーモン、カッテージチーズ、ハニーマスタードソース、トーストの順で重ねられたサンドイッチ。焼きたてのトーストの甘みにスモークサーモンの旨みがジューシーに広がり、カッテージチーズとハニーマスタード、レモンマヨネーズが全体を丸い美味しさで纏めている。レタスのシャキシャキ感がアクセントになり非常にクオリティの高い一品になっている。日本で生きていた時には食べられないのでは無いか?と思うぐらいに美味しい。
私がサンドイッチとココアに舌鼓を打っていると、店の奥からマスターであろう中年男性の声が響いてきた。
「どうだい?美味しいだろう、うちのサンドイッチは!」
「とても美味しいです!それこそ今まで食べた事の無いぐらいに!」
「ハッハッハー!嬉しい事言ってくれるねぇ!オジサン嬉しいよ!」
なんて会話を挟みつつ、残りのサンドイッチを平らげココアを飲み干した。腹も膨れ、更に予想よりも遥かに美味しかった為に気分がとても良い。……そういえば、この世界の情報収集をしようとしてたんだっけな。すっかり忘れていた。
「ところであんた、ここらじゃ見ない格好だな。珍しい布を使ってるみたいだ」
……しまった!日本で着ていたジャケットのままウロウロしていたから、服について聞かれた時の言い訳を考えていない!流石に転生してきました~なんて言えないぞ!?
「さてはあんた、俺みたいによそ者だろ?」
赤髪の青年は、他に客が居ないことを確認するとキメ顔で言い放った。
「あんた、俺みたいな『世界線レベルの』よそ者ってやつだろ?」
「は?」
ちょっと何言ってるか分かる気がしたけど分からない。
「…………ええとだな!あんたは!俺みたいに!この世界に転生してきたやつだろ!?」
「なるほど、これならよく分か……え?」
転生者だとバッチリ見抜かれたし、何故かこの店員も転生者だと自分からバラしてきた。
色々気になる事は沢山あるが、この青年は一体何者なのだろうか。まずはそこが気になるばかりだ。
コメントとか評価が来ると食べ物描写が増えます。




