ボーイ・ミーツ・ニャルニャル
やっぱりホラーは書けなかったよ……
「…………」
「…………?」
目の前が 真っ暗に なった!……ところまでは確かに焦った。転生してまだ1日経たずにこの世界のタブーっぽい事に気づいてしまい、そこに意識を向けてしまったのがいけなかったのだろう。
タブーに触れて世界が暗転し、無貌の神と遭遇してしまった---のだが、どう見ても変な仮面を被った少女である。私の目の前に居るのは(倒置法)。
「オマエハ……モウ……モドレナイノダ……!」
しかもなんか邪悪っぽい事言ってるし。畜生、このシーンに挿絵がない事が大変悔やまれるぞ。今私が視認している状況は恐らく刺さる人には刺さる状況ではないか?
「……?オマエハ……モウ……モドレナイノダ……!!」
しまった。よく考えたら無謀の神(?)の事を先程からガン無視してしまっているじゃないか。
怯えるタイミングを完全に逃してしまったので、今更わざとらしく驚くのも申し訳ないし……うーむ、悩み所だ。
「……オイ!キイテイルノカ!」
「どちゃクソ悩みますわ……」
「!??!???」
急に話しかけられたので、ついうっかり考えていた内容がそのまま口から流れ出てしまった。あー、無謀の神(?)がとても動揺してしまったぞ!ぼのぼので例えるなら[っっっっっっ]みたいな汗のエフェクトが大量に付いてる状態だ……!
「オマエ……ナニイッテルノ……??」
「うーん……多分何も考えてないですね……」
「は?何言ってんのこいつ」
「え?」
「あっ」
普通に喋れるんかい。そのカタコトは演技だったんかい!
「……とりあえず…………この状況、何とかなりません?」
「……いいケド」
あっかわいい。……と思った瞬間、さっきまでの暗黒空間がフッと元の世界の様子に戻った。目の前には無謀の神(?)と主人公(?)が居た。そういえば名前何だったかな……このやたら強い主人公枠の人に自分の名前を伝えるシーンだったなぁ。私の名前は……そう、[小野木 世蘭]だ。
「おい、オノギラゼン、お前……どこまで理解してイルノ?」
「英検は準二級までなら理解してるんですけどねぇ……」
「二級から上は難しいからネ……じゃなくてちーがーう!」
怒られた。っていうか英検知ってるのかこいつ。
「お前は!この世界について!どこまで理解したノカ!?」
そんな事聞かれても、何をどう答えれば良いのか正当例が知りたい所なんだけどなぁ……
「うーん、とりあえず……そうだな。私は別の世界で1度死に、この世界に転生してきたんだよ。生前の私の名は小野木世蘭……なんだけど、いつの間にか持っていたこの冒険者証には斧樹羅善って書かれているし……そんで、それに気付いた瞬間にあんたに捕まったって感じなんだけど……」
「ナルホド……そうだナ、これはもう言っても大丈夫そうだし……伝えよウ!」
「なんぞ?」
「ワタシはこの世界とはまた別の所から来タ、[物語]を旅しながら世界のバランスに不具合が無いかを観測してイル、まぁそうだネ……[無貌の神:ニャルラトホテプ]の分体かつ片鱗。パラレルワールドの観測者の[目]。名を[E.Y.E.]と言うノダ!!」
無貌の神の片鱗……の彼女は少々不気味だった仮面を取り、ドヤ顔で名乗りを上げた。見た目10代後半ぐらいの整った顔立ちで、正直かなり美人の分類に入ると思うのだが、何故か左目に眼帯をしており、その上を覆うように、この世にある光を全部吸収してしまうのではないかと錯覚するほどに黒い髪の毛で覆うような髪型になっている。
要するにかわいい。
「そっか……すごい(かわいい)」
「神の前で何を生返事しとるんダ!阿呆!」
こわいい!
「あぁ、すんません。見とれていました!」
「でへへ……許す~!」
「で、だ。えーと……E.Y.E.だと言いにくいからアイちゃんで。そのアイちゃんが何故私の所に急に現れたんですか?もしかしてファンだとか?照れるぜ……」
「真面目な話に移るから、ちょっと今はそのテンションはやめてネ」
「素直にごめん」
「……ああもう!流れが狂ウ!まず、ワタシがお前をこの『外側』に呼び出したのは、下手に『ズレに気づいて』この物語を狂わせない為ダ!」
「ふむふむ……なるほど?」
「世の中にはお前以外にも物語に転生していく人が多く居るのは知っているナ?その中で、転生してから[本来送られるはずだった物語]を悪い方向にぶっ壊してしまう奴が居るンダ」
「悪い方向にぶっ壊すやつ?」
「例えば、転生してから『物語の重要人物』を軒並み殺害した転生者や……お前がしかけたように『転生者である事に気づき、物語の登場人物だと転生先の住民に言いふらしてしまう』転生者が居るのサ……」
「なるなる。それをしてしまうと……所謂『バグ』を起こした世界が増えてしまい、よく分からないけどどこかに不具合が起きてしまう!みたいな事なのかな?」
「なんで……知ってるノ?」
「想像力ぅ……ですかねぇ……?」
「ふーん……?」
つまり、私は転生者としてこの世界の物語……生前の親友の書いている物語を進めてやる必要があるということか。まったく……死んでからもこうして手伝ってやるんだから、有難く思って欲しいものだ。
「それと……もう一つ、お前にしか頼めないコトがあるのだケド……」
おっ!急にモジモジして何か頼み事をしてきたぞ!?
アイちゃんはそう言うと、恥ずかしそうに左目に掛かっていた髪を払い、眼帯を外し……
-----そこ(左眼)にあるはずの物が、空間ごとぽっかり無くなっていたのだ。
「いやー……ウッカリしていたら……その……左眼ごと[無貌の神の権能]を別の邪神に取られちゃってネ……多分この世界のどこかに潜んでる筈なんだけどサ……」
「う、うん……」
「……取り返すの、手伝ってくれナイ?」
片目の彼女はそう言うと、恥ずかしそうに私に頼み込んできた。
実は校正中に気づくまで無貌の神の事を無謀の神と書いていました。
そんなに間違いじゃないかも……




