『人質』
感想とかコメントとか評価とかを待ちながらポケモンの厳選をしています。
冒険者ギルドの救護室で目を覚ました私は、イマイチ何が何だか理解出来ていなかったので一旦外に出てこの世界の街の風景を見る事にした。
…………の、だが。
「オイコラァァ!こいつの命が惜しければさっさとありったけの金を持ってこいやぁぁぁ!」
---転生後、1日経たずに絶賛人質中でございます。
おかしい。私は無一文でも見るだけ見ようとこの街の商店街をウロウロしようとしただけなのだ。面白い事にこの世界はアクセサリーや武器がまるで昔やったRPGの様にステータスや付与効果等が数値として現れているようで、例えば[ロングソード:ATK+18]とか[ラビットタリスマン:毒防止]とか、どこかで見たような見ていないような装備品が色々置いてあった。
そんで、超ウルトラ運の悪いことに……街の中心の広場にある交易所を覗きに行くと、たまたま私のすぐ後に来た奴ら(そこそこにマッチョな、悪役だと一目でわかる風貌の男×5)が早速私の事を人質にしたのだった。
「オォイ!?こいつが死んでも良いのかァァ?」
強盗(?)の腹立つぐらいに筋肉質な左腕で首を絞められ、右手に握られた短剣でこめかみを突かれている。苦しさと怖さが今までの人生を含めて考えた事が無い程に押し寄せてきてしまい、一周まわって逆に冷静になってきた。
回りの人達は何をしてい…………うわぁ面白いぐらいに恐怖で固まってるぞ!
そうだ、冒険者ギルドがあるんだったら戦える人が何人か居るはずだろう!……くそっ!なんか武器を持ってる人が居ないぞ!どうなってんだこの世界は!?秩序守るマンが居ないじゃないか!警察は?警察組織は?あ!遠くの方でチラチラ見てるじゃん!助けろよ!ここに!善良な!!市民が!!!捕まっていまーーーす!!!!!
「オォ~?誰も金を寄越さないんなら……こいつは俺達が奴隷として売っぱらっちまうぜぇ?」
ちょっと……うん。物語としては設定がガバガバではないか?今の時点で私は(自分で言うのも大変心苦しいが敢えて言うなら)人的価値はほぼ0に等しいぞ?もし私がどこかの会社や団体の重要人物とかならわかるが……私は無一文の放浪者だぞ?
「待てッ!!その人を離せッッ!!!」
---『この物語の主人公』が、これみよがしに助けにやってきた。
「チィッ!お前はッ!?」
強盗は何故か私の首を絞める事を辞め、武器を構えて『主人公』の方へとファイティングポーズを取った。
「プハッ……え?何で離したの?」
強盗達は何故か何も答えない。ガン無視はどんな相手からされても胸が苦しいのでやめて頂けるとありがたい。
「俺の前で悪事を働くのは許さない!成敗してくれるッッ!!!」
「私も続いて行きますっ!勇者様!!」
強盗達と対峙する形で戦闘態勢になった『主人公とヒロイン』はそれぞれ武器を構えた。『主人公』の方は緑色の金属で出来た長剣を、女k『ヒロイン』は無骨な分厚い両手剣を構えている。と言うか『ヒロイン』はその一人称を辞めろ、一人称が被る!
……あれ?今頭に何かザーっとノイズが走った様な……?まあいいか。とにかく、今は上からこの広場を見たとすると左に『主人公とヒロイン』、中央に強盗、中央寄りの右に私がいると言う状況だ。
おや、状況の整理をしていたら広場のド真ん中でバトルを始めやがってしまったぞ……?『主人公』は剣から緑色の風の刃(何故か『風』と理解出来た)を出して攻撃しているし、『ヒロイン』の方はと言うと両手剣を器用にクルクルと回しながら、コンパクトかつ派手に強盗を打ちのめしている。多分、これがアニメなら作画が突然良くなるシーンだろう。…………と言うか絶対強盗達は無事ではいられない怪我を負ってそうだが……?
「ええい!俺の仲間をさんざんやりやがって!一歩でも動いてみろ!こいつの首が飛ぶぜ!?」
「うおお、まーた人質になってしまったぞ!」
あまりにも急に人質にされてしまった(2回目数分ぶり)ので、ついうっかり棒読み気味な悲鳴を上げてしまった。
「クッ……どうする!?」
おう『主人公』、そこは困るとこじゃ無いでしょう!あんたついさっき遠距離攻撃してたじゃないか!!
そういえば、冒険者証のSKILLの欄に何か書いてあったな……。もし異世界転生したのなら、もし私が何か攻撃的なSKILLを持っていたのなら自力でこの状況を打開出来るのでは……!?(超絶名推理)
人質になりながらも、首と目をギリギリまで動かす事で胸ポケットに入った冒険者証を確認出来た。
SKILL:ショートブースト。それが私の持つ特殊能力らしい。名前の欄が何故か私の名前をもじった知らない名前なのが気になるが、それを考えるのは後だ。
「ホレホレ~、どうしたァ?動かないのかァ~~?」
『この物語』としては空気を読めていないのだろうけど、悪いが私は少々自分勝手に行かせてもらう事にした。
「人質を取られて『主人公』は不安よな。
-----------『斧樹羅善』、動きます」
そう宣言した瞬間、私以外の時が[減速]した。恐らく私以外からは私が[加速]したように見えるのだろう。
ゆっくりと狼狽える強盗の腹に、素人なりのパンチを叩き込む。体の動きが軽い。1発、1発、また1発と連続したパンチを腹から胸、頭へと中心線に沿って計5発!更に後ろに回って尾骶骨の辺りを狙ってピンポイントにトゥーキックだっ!!
---〆のトゥーキックを放った直後、[ショートブースト]の効果時間が解除された。
人体の弱点を前からも後ろからも高速で攻撃された強盗は、幾ら体格差で優っていた所で……怯まずにはいられない。
その瞬間を狙い、『主人公』は武器を構えながら叫んだ。
『今ここに荒れ狂え!ウィンド・マスター!!』
突然、『主人公』が突き出した長剣から一際大きな風の刃が放たれたかと思うと、瞬きをする間もなく、暴風と共に強盗の胸を大きく切り裂きながら飛んでいった。
被害者の私が言うのもなんだが、強盗の安否が気になる。
なんて考えていたら、『主人公』が私の方への近寄ってきた。……あれ?よく考えたらなんで初対面のこいつを『主人公』だと認知しているんだ……?
「ねえキミ、無事だったか?」
「あっ……はい、一応無事ですね」
馴れ馴れしいなこの『主人公』。……何か違和感が……?
「それにしてもさっきのSKILL、凄かったな!見かけない格好してるけど、キミ、名前はなんて言うの?」
「あぁ、私の名は『斧樹羅善』。そういうあんたは?」
「俺の仲間は『十春 大理』。こうみえて世界を救う『転生勇者』ってやつだ!」
---今、こいつはなんて言った……?転生……者……?
更に…………私は…………私の名は…………小n『斧樹羅善』……
……あれ?つまり私は…………転生した…………私とは…………
瞬間、視界が暗転した。
光が闇に、目の前の景色は影と消え、『主人公』と『ヒロイン』の顔が白塗りの仮面へと変貌した。
闇に包まれた空間の中、いつの間にか目の前には。
いつの間にか、顔のすぐ前には。
何も無いけど確かにそこにある、『無貌の神』が居た。
---物語の一員として、登場人物として、『気づいてはいけないこと』に気づいてしまい、そこに触れてしまったのだ。
…………何故かホラーっぽくなった………………
…………何故だろう………私は勢いで書いていただけなのに…………?




