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人間、下手に死ぬもんじゃ無いぜ?

まだ転生していません。

昼休みも過ぎ、眠気との死闘に敗北してうつらうつらとした午後の講義を受け終わり……帰り道。


「クトゥルフ神話TRPGって知っとる?」


「知らないと思っていたのかいマイフレンド」


「ヒューッ!アレ面白くね?」


「めっちゃ面白いよね……今度初めてネットの友達とセッションしようと思っててさぁ」


夕日で視界がオレンジ色に染まる中、私達は大学の近所にある安アパートへと向かっている。高校の頃からの仲なので同じ大学へ入学し、同じアパートの隣同士の部屋を借りたのだ。


二人で自転車を転がしながら坂道を下っていた。それはもう滅茶苦茶に平和で、いつもの様な日常のワンシーンだった。


「お前の新しい小説、上手いこと審査に受かると良いな!」


「……何が望みだ!」


「下心を透視してはいけない」


前方15メートル先には横断歩道がある。もうすぐ信号が変わりそうだ。


「やっぱハーレム物は憧れるよなぁ~」


「そんなに良いもんか?アレ」


「童貞にはわからないだろうなぁ?この良さは……」


「お前も童貞では?」


「名推理しないで」


信号が赤になっちゃったか、青ならそのまま行けたんだけどなぁ……うん?あの小学生は……オイオイ!


「悪ぃ!ちょいと待ってて!」


私は自転車をフルスロットルで漕ぐ。


車輪が聞いたことの無い音を出す。が、疾風の如き速度で横断歩道へと向かう私にはそんな音は聞こえない。


「おい!待てって!危ない!!車が---」


信号は残酷に紅く光っていた。


ただただ、悲鳴とサイレンが聞こえていた気がした。


---体が重い。


-----それに、眠い。


--------目が霞む。耳も遠い。


「…………!……死…………な……………………!」


何の声だろうか


「オ…………!お前……………が……………………!!」


あ、そういえば……そうだったな


小学生を……助けたんだっけ…………


視界がオレンジ色に霞む。目の前には親友の泣き叫ぶ顔が見える。


「お前…………!!死ぬなっ…………!死ぬなよっ…………!!!こんなに…………いきなり…………っ!!!!」



「へへ…………ゲホッ……悪いね………………ごめんだ……けど………………ちょ…………っと…………先……行くわ…………」


「今!!!救急車を呼んだから!!!……もうちょっとで着くから…………っ!!!耐えろっ…………!持ち堪えろ………………っ!」


手足の感覚が無くなってくる。呼吸も穏やかになってきたし、痛みも消えてきた。


「なぁ…………お前…………の………………物語…………期待してる…………ぜ………………!」



楽しみに待っているぜ。


と、最期にそう言えたのだろうか。




---小野木世蘭、享年20歳。死因:事故死。











-----

----

---

--


で、ここからが問題なのよ。


生きてる時は知る由も無かったのだけれど、死後幽霊となった人は49日間の間は霊体で現世をウロウロ出来るらしく、転生しようと思えば各地の神社で申し込みをすればパラレルワールドや異世界に転生出来るらしいのだ。


天国や地獄は異世界の中の一つであり、大体の人は天国に行こうと神社や教会に並んで手続きをするらしくて。悪人は即地獄へボッシュートされるようで、電気屋でテレビを覗き見していたら海外のテロリストが警察に撃たれた瞬間、黒い腕が地面から伸びてきて犯人の魂を掴んで沈んで行く様子が見れたんよ。正直クッソ怖かった。



それからはなんとなく自分の葬式を眺めたり、話の長い坊主の唱えるネタネタしたお経を聞きながらウトウトしたりして時間を潰していた。


たまには自宅へ帰ろうと思い、生前自分が暮らしていた部屋にスーッと入った。幽霊だから壁抜けが出来るのだよ。


そこはすっかりと片付けられており…………うおおお!!!!やらかした!!!!死ぬんじゃなかった!!!!!!!秘蔵の!!!!!!!!!エロ本を隠していた戸棚が!!!!!!綺麗に掃除された!!!!!!!多分!!!いやバッチリ両親に見られた!!!!!



ふう。過ぎたことはしょうが無い……そうだ、アイツの部屋を見に行こう。


壁を抜け、隣の部屋へと入る。薄暗くヒンヤリとしたそこは前に遊びに入った時よりも心なしか散らかった様に見え、リビングには、丸机の上に原稿用紙に書き殴った物語のプロットや設定等が転がっていた。


手に取って読んでみよう。折角だし、遺言が「お前の書く新しい小説楽しみだわ」って感じだったし。


ほーん、どれどれ……「異世界転生」……「ウィンドマスター」……「ハーレム」……あんだけお約束がどうとか言っておいてそこそこ見覚えのある要素が多いな?


なんとなくその設定集を流し読みし終わり、机の上に広げてある原稿用紙も眺めようとした。


その時、原稿用紙に吸い込まれる様な気がした。


否、原稿用紙に、『この物語に』吸い込まれたのだった。








次で異世界転生します。


やったね!

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