残念美人は今日も平常運転
俺とレイチェルは、羊番のキャンプ地にて一晩中愛し合った。
スタミナを使い果たした俺は、レイチェルと抱き合ったまま泥のような眠りに落ちた。
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「朝ですよ、起きてくださいよ〜」
俺が薄目をあけると、レイチェルが俺の顔を伺っていた。
「おはようレイチェル、もう少し寝かせてくれ」
「はぁ? 寝ぼけてるんすか~」
レイチェルその口調はやめろ。あの残念美人を思い出すからな。
俺は彼女をじっくり見つめた。藤原だった。
「おおおお前、藤原か!」
「そっすよ〜」
ここは職場か、うぎゃーーーー。
「すすすスマン。さっき俺は何と言った?」
「もう少し寝かせろ、って言ったっす」
「それだけか?」
「そっす」
ふうー、セーフだ。助かった。
藤原顔のNPCとセックスする夢を見て、起きたら目の前に藤原がいる状況で、ヤバイことを口走らなくて本当によかった。
社会的な死は回避できたようだ。もう会社での寝落ちは絶対にやめよう。
だが、その反省は手遅れだった。
藤原はスンスンと鼻を嗅ぎ、ニヤッと笑った。邪悪な微笑みだ。
「なんかイカ臭くないすか? レイチェルって誰っすか?」
はい死んだーー、俺、社会的に死んだ。
「徹夜のストレス解消のため、職場で外人AV鑑賞して抜くとは勇者っすね」
「ち、違うぞ藤原、そんなんじゃ無いんだ!」
マジ違うから。レイチェルは外人AV女優なんかじゃない。単なる性欲の捌け口ではなく、人格を持った愛しい存在だ。夢の中のNPCとはいえ侮辱するのは許さん、発言を撤回しろ藤原。
そもそも、レイチェルの顔はお前と同じなんだぞ。つまり俺は藤原で抜いたことに……
待て、それがバレる方がマズイな。外人AV女優でお願いします。
「秘密にするから安心してくださいよ〜わたし尊敬するっす
_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> おれたちにできない事を平然とやってのけるッ!そこに痺れる!憧れるゥ! <
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……って感じっす」
社内変人四天王筆頭の藤原から、自分を超える上級者と認定される日が来ようとは思わなかった。俺は社内変人大魔王か。あーもう明日、世界が滅びればいいのに。
「もう、ホント勘弁してくれ。いや、勘弁してください」
「そっすね〜、1つ貸しでどうっすか?」
こいつに借りとか激ヤバで悪寒が走るが、仕方ないか。
「スケジュール遅延は認めない。それ以外なら1つ借りで承知した」
「その条件でいいっす。何を要求しよっかな~」
ぐうぅ、凹むなぁ。
「まあまあ、そんな凹まなくても
わたし潔癖女子じゃないし、腐女子だし~
男の生理現象には理解あるつもりっす
そうだ、BL同人の参考資料にするので~オナるところを見せて欲しいっす」
とんでもないことを要求してきたぞ、この残念美人は。
「ちょ、お前、本気で言ってるのか!」
「あはは、じょ~だんっすよ。じょ~だん。何これ〜超楽しい~」
藤原、お前は鬼だ、悪魔だ。いつか復讐してやる。
敗北感に打ちひしがれて俺は席を立ち、替え下着を買い出しにコンビニへ向かった。
この歳で夢精とか、まいっちゃうな。
ジョジョネタの台詞囲みがズレるのは気にしないでください。