寝ても覚めても
2020年最初の投稿です。今回は短めです。
「ヨシヒコ、ヨシヒコ!目を覚まして」
激しく揺すられて目を開くと暗闇の中。肌に女の体温を感じる。
「はぁ、俺はもう勃たないって。俺の負けでいいから、少し休ませてくれ」
「何を言ってるの、しっかりして」
「勘弁してくれ、藤原」
「寝惚けてるのヨシヒコ。私よ、レイチェルよ、わかる?」
これは例の夢の中か。暗くて顔も見えないが、この肌触りはレイチェルのものだ。
「ああ、レイチェル。まだ夜明け前じゃないか、いったいどうしたんだい」
「ヨシヒコ、あなた、すごくうなされていたのよ。フジワル、フジワルってうわ言を繰り返して」
「ん、ああ、悪夢を見ていたんだ。もう大丈夫だよ」
夢の中で現実にうなされるとは……出来の悪い冗談だ。
しかし『フジワル』か、たしかにあれは『藤悪』だな、性悪な女だ。
「怖い夢だったのね。ヨシヒコが眠るまで私が見ていてあげる。安心して寝て」
「ありがとう、レイチェル。君は俺の天使だ」
「おやすみ、ヨシヒコ」
レイチェルはやさしく俺を抱きしめてくれた。ああ、心地よい。
彼女の腕の中で俺は再び眠りにおちた。
☆
☆
☆
頬を叩かれた痛みで、意識が現実世界に浮上する。
軋むベッドの上で俺に跨り腰を振る全裸の女が叱咤していた。
「皇さん起きて〜、こら起きろ!私とシてる途中で寝落ちするなんて許さないっすよ」
勘弁してくれ、藤原。
俺は激務で疲れているんだ、快楽より安らぎが欲しいんだよ。