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佐栗山探偵事務所譚(仮称)  作者: 茶太郎
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序章 目覚めの悪夢

初投稿させていただきます。

お目汚しとなるやもしれませんが、

お時間のおありの方は評価を下していただけますと、

作品の糧になりますので、非常に嬉しく思います。

失礼致しました。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「やめて!芽瑠ちゃんお願い信じて!ワタシ、犯人なんかじゃないの!」

「……残念だけど、あたしには沙織にしかこの犯行は出来なかったと思ってるの。」

「そんな……!ワタシそんなことしてない!信じて!」

「ごめんね沙織。でも、あたしはあなたのことを犯人であると告発するわ。」

「どうして?……どうしてそんなことするの?一体なんで?芽瑠ちゃんはワタシが犯人じゃないって信じてくれると思ったのに!」

「沙織。沙織だったら知ってるよね?あたしが<あの一家>の孫娘だってこと。」

「それは……。でも、そんな……。嫌だよ……、芽瑠ちゃん……。」

「ごめんね、沙織。事件の真相から、あたしは目を背けることは出来ないの。」

「そんなに、……名前が大切なの?芽瑠ちゃん……。」

「……高田沙織、あなたを!当該窃盗事件の真犯人として告発します!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」




「はっ!?」

十二月の特別寒い日、暖房で部屋中の窓ガラス全部に霜が降りていたそんな日に、あたしは弾かれるようして飛び起きた。

じんわりと汗ばむ額を腕で拭いながら、ふと部屋の角の古時計に目を向けてみる。

「朝の6時……。」

予定より早すぎる目覚めだった、間違いなくあの悪夢のせいだ。

たまにあの悪夢を見せられて、あたしは目を覚ます、あの日から数年たった今でさえ。

もはや二度寝をするような気分ではなくなったあたしは、ぐずぐずとイモムシのようにベッドから這い出でて、思考を覚醒させるべく、一階の洗面所に向かうことにした。

まだ早朝ということもあって、家中がとても静まり返っていた。そのあまりの静けさにあたしは、世界にひとり取り残されてしまったのではないのかと少し不安を覚えるほどだった。

一階の洗面所へは、自室を出てすぐの階段を降りていかなければならない。あたしは薄暗闇の中、手摺の感覚を頼りに、一歩また一歩と、階段を踏みしめるように降りていった。足を踏み出す度に鳴る木の軋む音

が、静まり返った家に響く。

目を開けずとも辿り着けるほど行きなれたはずの通路がとても長く感じた。

目を覚ましたばかりのせいかまだ瞼が重かったあたしは、壁に手を付きながら歩みを進め、やっと洗面所に辿り着いた。

暗がりの中、寝ぼけ眼をこすりつつ照明の電源をつけ、赤色の蛇口を捻ってしばらく流したままにする、

こうしないと朝イチから冷水の洗礼を浴びることになってしまうからだ。

いくら目を覚ますためとはいえ、十二月の寒い日にキンキンに冷えた水で顔を洗いたいとは思わなかった。

そういえば、つい昨日のテレビで見たが、今年の12月は例年よりも3℃程暖かいらしく、色んなメディアが異常気象だと騒いでいたことを思い出した。

実際のところ、そう指摘されたところで例年との温度差が体感できるような程の温暖差ではないので、大して興味はなかった。

そうこう考えているうちに、ようやく蛇口からお湯が出始めたことを確認すると、

あたしはお湯をすくい上げ、おしとやかさなど微塵とも感じさせないバシャバシャバシャと粗野な音を立て、顔を洗った。

目を閉じたまま普段使いのタオル置き場に手を伸ばし、上に乗っている適当なタオルを掴んで拭きあげる。

目を見開いてみると、正面の鏡に映っている実に締りのない顔に吹き出しそうになった。

我ながらゆるゆるな顔をしているなぁ、なんて自虐していると、

鏡の横にある小窓から早朝の小鳥たちのさえずりと、

十二月のしんと冷える風が入ってきた。

「さむっ!な、なんで開いてんの?」

咄嗟に襲われた寒さに身を抱えながら、もうこれ以上寒い思いはしたくないあたしは、さっさと小窓を閉めることにした。

「これでよし」

しかし、不幸中の幸いか。寒い思いをしたおかげであたしのゆるゆるの表情は、少し引き締まったようにみえた。

そのことに少しだけ気を良くしたあたしは、自室に戻って支度をする事にした。

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